
目次
大学入試改革の影響もあり、作文や小論文の対策に力を入れる学校や塾が増えています。
一方で、指導の現場からは
「何をテーマに書かせればよいのか」
「生徒がなかなか意見を書けない」
「小論文指導の時間がとれない」
といった悩みもよく聞かれます。
そこでおすすめしたいのが、時事問題をテーマにした「100字コラム」です。
ニュースについて短い文章で意見を書くことで、
・社会問題への関心が高まる
・自分の考えをまとめる力が身につく
・作文・小論文の基礎となる記述力が伸びる
といった効果が期待できます。
この記事では、2025年に実施された第28回ジュニア・ジャーナリスト大賞「100字コラムコンクール」の入賞作品を例にしながら、心に届く文章のポイントと授業で実践できる100字コラム指導の方法を紹介します。教室での作文・小論文指導の実践にぜひご活用ください。
時事問題×100字コラムが作文・小論文指導に有効なわけ
なぜ時事問題をテーマにするとよいのか
入試対策で作文や小論文を指導する際、時事問題は有効なテーマになります。その理由は大きく3つあります。
第一に、社会問題への関心を高めることができる点です。ニュースをきっかけに社会で起きている出来事を知ることで、生徒は社会問題を自分自身の生活と結びつけて考えるようになります。日常生活から遠いと思いがちな政治、環境、経済などの問題について考える機会を作ることができます。
第二に、自分の意見を書く練習になる点です。時事問題に対する意見は正解があるわけではありません。生徒は「自分はどう思うのか」「なぜそう考えるのか」を考え、そしてそれを自分の言葉で表現します。この経験は、作文や小論文を書く力を育てるうえで重要です。
第三に、大学入試の小論文テーマと重なる点です。大学入試の小論文では、少子高齢化、AIの発展、環境問題、ジェンダーなど、現在進行形の社会課題が多く扱われます。日頃からニュースに触れ、社会問題について考える習慣を持つことで、こうしたテーマに柔軟に対応できるようになります。
なぜ「100字コラム」が効果的なのか
小論文指導というと、長い文章を書かせるイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、生徒にとっていきなり長文を書くことは大きな負担になることがあります。特に書くことに慣れていない生徒の場合、「何を書けばよいかわからない」という状態に陥りがちです。
そこで有効なのが、100字程度の短いコラムです。
文字数が限られているため、生徒は気軽に書き始めることができます。一方で、短い文章だからこそ
・何を一番伝えたいのか
・どの言葉を使えばよいのか
を考える必要があり、要点を整理する力が自然と身につきます。
入賞コラムから学ぶ「心に届く文章」
入試では、短い文章で自分の考えをわかりやすくまとめ、採点者に伝える必要があります。論理的で読みやすい文章を書くためのテクニックも重要ですが、その前に、採点者の心を打ち最後まで興味を持って読んでもらう文章であることが求められます。
実際の生徒のコラムを見ると、読み手の心に届く文章にはいくつかの共通点があります。ここでは入賞作品を例にしながら、文章づくりのポイントを3つ紹介します。
①自分らしい切り口を持つ
ニュースをそのまま受け止めるのではなく自分なりの切り口で考えることが、読み手に新しい気づきを与える文章につながります。
【大賞】「違和感」
女性初の総理誕生を機に男女平等の意味を再確認すべきだ。新総理の誕生が本質を見誤ったいたずらな男女平等社会の到来を示すのではなく、能力が正当に評価される時代の象徴として後世に語られるよう、優れた政権運営を期待したい。(高校1年)
女性初の総理誕生というニュースに対して、多くの人は「歴史的な出来事」「男女平等の前進」といった視点でとらえます。しかし、このコラムは「それは本当に男女平等なのか」という独自の視点からニュースをとらえ直しています。男女にかかわらずその人の能力が正当に評価されることこそが男女平等なのだと。はっとさせられるコラムです。
【優秀賞】「頭の頭」
国と国同士の立派に見える問題も見方を変えると子供同士の言い合いに通づる部分がある。言い分がコロコロと変わったり、それにふりまわされたり、対策をしなかったり、幼いころから教えられてきた「会話」や「交渉」においての礼儀がなっていない国の頭とは?(中学1年)
国と国の関係を子ども同士の関係に置き換えるという独自の視点が光っています。子どもでも知っているような人間関係の基本ができない国のトップを批判するコラムを書いたのが子どもであるということがおもしろく、説得力を発揮するところでもあります。
②問題提起と答えを明確にする
ニュースについて問題意識を持ち、それに対する自分の考えを持っていること、それを読み手にわかりやすく発信することが大切です。
【大賞】「生成AIと私たちの思考」
生成AIは、社会を大きく変えつつある。しかし、私たちの思考までも預けてしまっても良いのだろうか。効率が求められる今だからこそ、迷い、考え、確かめる力を守りたい。私の未来は、私の言葉で選び続けていきたい。(高校3年)
「AIに思考まで任せてよいのか」という問題提起が示されています。そしてその問いに対して、「自分で考える力を守りたい」という答えがはっきりと述べられています。このように、短い文章であっても問いと答えの構造があることで、読み手に強く伝わる文章になります。 短い文章であることで余計な表現がすべて削ぎ落とされ、伝えたいことがかえってストレートに読み手に伝わってきます。「私の未来」「私の言葉」と「私」を強調することで、生成AIという実体のないものとは対照的に人間である生身の「私」が力強く浮かび上がってきます。
【優秀賞】「尊いもの」
正直いつまで続くのだろうと思う。なぜ、人間には言葉というすてきなものがあるのに力で解決するのだろう。きっと、戦争は得する人よりも、犠牲者のほうが多いと思う。1人1人の命は世界で1つしかない尊いものだ。そんな命を大切にしていきたい。(中学1年)
このコラムも、問題提起をしたうえでそれに対する自分の主張を明確に述べる構成がしっかりとできています。「命は世界で1つしかない」、「命を大切にしていきたい」。主張は決して特別な、珍しいものである必要はないのです。
③実体験を取り入れる
実体験をもとに書かれたコラムは情景が想像しやすく、読み手の印象に残ります。
【優秀賞】「AIに問う民主主義」
「国民の意志」を実現するのは政治の役割だと習った。ならば、AIの便利さに流され、フェイクに惑わされ、民衆が自分の意思を失えば、社会は誰に支配されるのだろう。AI時代だからこそ、私たちは「なぜ?」を大切にする必要がある。(高校1年)
学校で学んだ体験をもとに、生成AIに頼りすぎる社会に問題提起をすることができています。社会問題について考える際には、「そのテーマが自分の生活とどのように関わっているか」を振り返って考えることが大切です。自分自身の体験や身近な出来事を文章に取り入れることで、説得力のあるコラムになります。
【入賞】「溢れるAI生成」
AIイラスト然り、AI短歌然り、AIの創造的分野での発展が目覚ましい。すぐに生成できるAIもいいが、私は創造者の努力と工夫の結晶が見たい。そんなことを考えつつ開いたSNSに綺麗なイラストを見つける。プロフィールを確認。AIだった。(高校2年)
SNSでの体験が文章の中に取り入れられています。自分の考えを先に示したうえで、それを真っ向から否定するような体験を印象的に取り入れ、オチを作って風刺を効かせることによって、読み手にも生成AIに対する問題意識を持たせようとする意図を感じます。
授業でできる「100字コラム指導」
100字コラムは短時間で取り組むことができるため、授業の中にも取り入れやすい活動です。無理なく継続することにより、
・時事問題の知識が広がる
・時事問題に関する自分の考えが蓄積され、さまざまな小論文テーマへの対応力が上がる
・短い時間で自分の考えをまとめる力が身につく
・書くことに慣れ、スピードが上がる
といったメリットがあります。
基本的な流れは次の4つのステップです。
「100字コラム指導」授業の流れ
ステップ1 時事問題を取り上げる
まずは、ニュース記事などをもとに社会で話題になっている時事問題を取り上げます。テーマは環境問題、AI、国際情勢など、さまざまな分野から選ぶとよいでしょう。
まなびチップスでは月に1回、時事に関する記事が更新されます。テーマ選びに活用してはいかがでしょうか。
🔵時事に関する記事はこちらからご覧いただけます。
▶️まなびチップス 「最新時事」に関する記事一覧
ステップ2 意見を共有する
取り上げた時事問題について、グループやクラスで簡単な意見交換を行います。その際、
・その時事問題について知っていることは?
・自分の生活にどのように関わっているか?
・賛否の分かれるテーマの場合、どちらの立場?
といった点について話し合ってみましょう。話し合いを通して知識を深めたり他者の視点に触れたりすることができ、自分の考えを整理することにもつながります。
ステップ3 100字コラムを書く
コラムを100字程度でまとめます。100字という字数制限を厳密に守る必要はありませんが、できれば字数を把握しやすいマス目のある用紙を使いましょう。このように、日頃のトレーニングから字数を意識して書くことにより、「100字あればこのくらいの内容が書ける」という感覚を身につけておくと、入試に役立ちます。
ステップ4 共有する
最後に、書いたコラムをクラスで共有します。共有し互いに認め認められることで、生徒の意欲が高まります。共有の方法には大きく次の2つがあります。
①何名か代表を選び、発表させる
発表が終わったら拍手し、表現や面白い視点を取り上げてほめます。生徒の何人かに感想を求めてもよいでしょう。
②グループに分け、グループ内でコラムを交換して読み合う
コラムを読んだら付箋紙に感想を書き、貼って戻します。感想を直接伝えるよりも、付箋紙に書いたほうが素直にほめることができる効果があります。
15分でできるミニ授業モデル
授業時間が限られている場合でも、短時間で次のような活動を行うことができます。
①時事問題を取り上げる(5分)
②100字コラムを書く(5分)
③共有する(5分)
このような短い活動を継続することで、生徒は少しずつ書くことに慣れ、自分の意見を表現する力を伸ばしていきます。
生徒に教えたい「コラムの型」
いきなり書き出すことが難しい生徒には、次のような型を示すのも効果的です。
① ニュースの要点
② 問題提起
③ 自分の意見
この3つを意識するだけでコラムに入れるべき要素を押さえることができ、文章はぐっと読みやすくなります。コラムは元来自由なものですが、自由な表現を楽しみながら自分の考えを相手に伝えることには高度な技術や経験を要します。まずは型に沿って書く練習を重ねることで、論理的な文章の基礎が身についていきます。
生徒のコラムにどうフィードバックするか
コラムを書きっぱなしでは、効果は半減してしまいます。適切にフィードバックし、次につなげる指導をしましょう。とはいえ、指導にそこまで時間をかけられないのが現状です。 そこで、「心に届く文章」の3つのポイントを観点とし、効果的にフィードバックしましょう。
| 観点 | フィードバックのしかた(コメント例) | |
| ◎満たしている | △満たしていない | |
| □自分らしい切り口があるか | ・自分らしい切り口がある ・新しい気づきを与えている | ・時事問題の解説に終始せず、あなたの考えを示そう ・一般的に言われていることをそのまま書いてもあなたのコラムにならない ・あなたの考えとしてあなたの言葉で書こう |
| □問題提起と答えが明確であるか | ・テーマについて問題提起できている ・問いに対して、答えを明確に示している | ・問題提起だけで終わらないようにしよう ・提起した問題と答えがつながっていない ・この問いに対してあなたはどう考えるのか、どう行動したいのか具体的に示そう |
| □実体験を効果的に取り入れているか | ・実体験があり力強い ・体験が意見としっかりつながり説得力がある | ・テーマが自分の生活とどのように関係するか考えよう ・意見につながるような体験を選ぼう ・体験を書くときは、いつ・どこで・だれが・何を・どうしたを明確にしよう |
フィードバックは「点数」をつけることが目的ではありません。
・生徒に次も書いてみたいと思わせること
・次にどのように書けば良いのか気づきを与えること
これらの目的のもと、観点を絞って建設的なフィードバックを心がけましょう。
日頃から時事問題に触れる重要性
ニュースに触れる習慣をつくる
100字コラムの授業導入をスムーズにするためにも、生徒が日頃からニュースに触れる習慣を積極的につくることが重要です。新聞記事や教育向けのニュース解説サイトなどを活用しながら、社会の出来事について考える機会をつくっていきましょう。
ニュースをきっかけに「自分はどう思うか」を考える経験を積み重ねることが、作文や小論文の力を伸ばす土台になります。
日常の会話に時事ネタを取り入れる
何気ない生徒との会話の中にも、時事問題に関する内容を取り入れていきましょう。時事問題を「遠いどこかの問題」ではなく、「自分の生活に直結している身近な問題」として認識させることが主体的な意見につながります。
2025年のジュニア・ジャーナリスト大賞で取り上げられたニュースの15項目は以下の通りです。「まなびチップス」で過去に取り上げた時事問題も多くあります。この機会に2025年の時事問題についておさらいをしてみてはいかがでしょうか。
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年に一度の力試し|ジュニア・ジャーナリスト大賞
時事問題をテーマにした100字コラムに挑戦できる機会として、「ジュニア・ジャーナリスト大賞」があります。
この企画では、「子どもが選ぶ重大ニュース」の調査と「100字コラムコンクール」が実施され、全国の小学生から高校生までが参加します。子どもたちが社会のニュースに関心を持ち、自分の意見を言葉で表現する力を育てることを目的とした取り組みです。 日頃の学びを実践する場として応募してみてはどうでしょうか。優秀作品は表彰されますので、目標を持って意欲的に日頃の活動に取り組むきっかけにもなるでしょう。
🔵ジュニア・ジャーナリスト大賞について、くわしくはこちらからご覧ください。
▶️ジュニア・ジャーナリスト(J・J)大賞
※執筆:NPO現代用語検定協会
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