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トップページ教え方豆知識>特別な用具や才能は必要なし!対話や協働的な学びが「ひらめき」を生むカギ
公開日:2023年11月24日  
更新日:2023年12月20日

特別な用具や才能は必要なし!対話や協働的な学びが「ひらめき」を生むカギ

グローバル化が進むなか、目で見ているもの、聞いたことをありのままに受けとめるのではなく、柔軟にとらえられる力が必要になってきています。「ひらめき」は、他者との関わりで生まれ、柔軟な対応が養われる学習です。学習の場をもっと自由に、もっと楽しく。さあ、ひらめきを体験してみましょう!

監修者:奥村高明先生
日本体育大学教授 博士

小中学校教諭、美術館学芸員の後、文部科学省教科調査官として学習指導要領の作成に携わる。『コミュニティ・オブ・クリエイティビティ ひらめきの生まれるところ』(日本文教出版)の編著者(共著 有元典文 阿部慶賀)。

ひらめきは因果より縁起?

筆算や漢字を勉強したら、おのずと計算や作文ができるようになるのは「因果」で、道具や身近にある材料、時間や場所(空間)、出会いなどさまざまな「縁」がつながり起きるのが「縁起」です。「ひらめき」という縁起を生むには、ただ資源や条件を揃えれば良いということではなく、臨機応変に材料を提案したり、学習の流れを変更したりするなど、縁を変化し続けることが大切です。

心理的安全性のある環境づくりがひらめきを創出

「ひらめき」というのは、いつもと違う思考で思いついた今までにやったことがないことを指し、ひらめいたことをやってみることが「学習」です。また、学習の場は、皆で支えあってやったことがないことに取り組む「協働的な学び」の練習の場です。しかし「やらない参加」も許容すべきことで、多様性を組み上げる一つになります。例えば、やっている子を見る、うなずく、笑う、拍手するというだけでも十分に参加していて、共同の意思はあるのです。やったことがないことをやるのは、誰もが不安でドキドキするもの。だからこそ「無知、無能、ネガティブ、邪魔だと思われる可能性のある行動をしても、このチームなら大丈夫」と思える環境がひらめきの創出には必要です。

あなたは「ひらめき」やすい人?

ここで問題です。下記を読み、2人の関係性を答えてください。

父親が1人息子を連れてドライブに出かけた。ところがその途中で父親がハンドル操作を誤り、電柱に衝突する交通事故を起こした。父親は即死、助手席の息子は意識不明の重体になり、すぐに救急車で運ばれた。外科医が手術室に入り、手術台に寝かされた子どもを見るなり「この子は私の息子だ」と言って驚いた。

答えは「外科医が女性で母親」でした。近年は、女性外科医が活躍するドラマやメディアに出演している姿を見る機会があり、「外科医は男性」という思い込みや偏見が弱まってきているようですが、このような固定観念から脱することで「ひらめき」やすい人になります。

実践エクササイズ“ひらめきストレッチ”をやってみよう

EXERCISE 1 カウントアップ

皆で数えて、皆を感じましょう。

【遊び方】
①合図(スタート)をしたら、誰かが数のカウントを始め、カウントを続けていきます。数字を答えるのは1人だけです。
②2人以上の声がかぶったら、はじめからやり直します。
③成功するまで繰り返します。

時間:3分程度
人数:5人程度

【ねらい】
● 個人の成功ではなく、全員の息が合って初めて上手くいく、ということを皆で感じる。
● 誰も声を出さなければ進まず、皆が声を出しまくっても終わらない。私「I」が上手くいくのではなく私たち「We」で上手くやるという主客未分の体験を味わう。

【POINT】
無理に声を出す必要はありません。大事なことは感じることです。

EXERCISE 2ラウンド・ダイアローグ

役割を交換しながら、ひらめき対話を続けてみましょう。

4つの役割
・推進役 対話の原動力。積極的に発言し、対話を前に進める。
・補佐役 推進役のサポーター。推進役の意見の補強・補完をする。
・反対役 意見に反対したり、不同意したりして対話を活性化する。
・傍観役 他者の発言にうなずいたり、感じたことを表情に表したりするが、発言はしない。

【遊び方】
①4つの役割を理解し、準備が整ったら役割に沿って話し合います。テーマは「美術鑑賞」「社会的な課題」「教育問題」など。
②2〜3分経ったら、役割を交代(ラウンド)します。
③交代した役割で、同じテーマについて話し合いを続けます。役割が一周したら終了。 

時間:2〜3分で交代
人数:4人(4人以上の場合は傍観役を増やすとよい)
準備物:役割カード(なくてもOK)

【ねらい】
●「ひらめき」は共同的に生まれ、周りの人々が必要であることに気づく。
● 一つの物事を多角的・協働的に見ることでひらめいたり、問題をより深くとらえたりすることができることを感じる。

【POINT】
傍観役は欠かせません。社会では多数派なので、議論の決定に最も重要な役割を果たすポジションです。

EXERCISE 3 これが「私」

身の回りの物と対話を使って、ひらめいてみましょう。

【遊び方】
①「私」だと思える「何か」を部屋から探し出します(自分の持ち物でも可)。
②それが、どのような理由で「私」なのかを説明します。
③参加者は、より「私」を理解するために質問をします。

時間:10分程度(各3分ずつ)
人数:2人以上

【ねらい】
●「ひらめき」は環境や活動の中から生まれることに気づく。
●「ひらめき」は「ひらめき」を認めてくれる温かな眼差しが必要であることを感じる。

【POINT】
「私」については、プライバシーに考慮しつつ、興味や性格、経験などいろいろな視点から説明できるようにしましょう。

誰もが誰かの「ひらめき」のきっかけになっている

ひらめきは、誰かが世界と十全に「つながった瞬間を表す言葉」といえます。

“私”がいて、友だちや講師など“他の誰か”がいて、お互いに認め合う場(コミュニティ)があってこそ生まれるものです。

構成、文・住吉佳子 イラスト・キタ大介
※この記事は2022年12月に掲載されたものを転載しています

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