この記事では、「日経平均株価が史上最高値を更新」の時事解説を小学校高学年~中学生にわかりやすく説明します。授業の合間に話すネタ、関連事項を解説する際の資料などとしてご活用ください。
日経平均株価が史上最高値を更新!
2024年の年初から日経平均株価が上昇してきました。2月22日には終値で3万9098円68銭をつけ、1989年12月29日に記録した史上最高値を34年2カ月ぶりに更新。3月4日には終値で4万109円23銭をつけて、史上初めて終値が4万円を突破しました。どうして株価はこれほど上昇したのでしょうか。また、株価が上昇すると日本経済や暮らしにどのような影響があるのでしょうか。
日経平均株価とは
日経平均株価とは日本を代表する株価指数で、日本経済新聞社が東京証券取引所のプライム市場に上場している企業の株価をもとに算出・公表しています。東京証券取引所の最上位の市場であるプライム市場には約1650社が上場していますが、日経平均株価はその中から選ばれた225銘柄(企業)の株価をもとに算出されるため、「日経225」とも呼ばれています。
銘柄は年2回、4月と10月に入れ替えられますが、市場流動性の高さ(売買しやすく活発に取引されていること)や業種のバランスなどを考えて選ばれます。日経平均株価が上がっていれば、多くの企業の株価が値上がりしていると考えられ、株式市場全体のだいたいの値動きをつかむことができます。
そのほかの代表的な株価指数としては、東京証券取引所のグループ会社が算出する「TOPIX(トピックス:東証株価指数)」があります。TOPIXは、東京証券取引所に上場している銘柄の半数以上を対象に、1968年1月4日の時価総額(各銘柄の「株価×発行済み株式数」の合計)を100(基準指数)として算出します。日経平均株価の単位は「円」ですが、TOPIXは「ポイント」で示されます。TOPIXも上昇していますが、1989年12月18日につけた史上最高値(2884.80ポイント)は更新していません。
どうして史上最高値を記録したのか
日経平均株価が史上最高値を記録したのには、さまざまな背景があります。
まず、あげられるのが、アメリカの株高です。世界の株式市場は連動しており、その中でも特にアメリカの株式市場は他の国の株価に大きな影響を与えます。ニューヨーク株式市場の株価指数であるダウ平均株価が史上最高値を更新したことが、日本の株価にも影響を与えています。
次に日本企業の業績が好調なことです。その業績に影響を与えているのが「円安」です。円安は輸出を中心とする企業にとっては有利に働きます。円安によって企業の収益が上がることへの期待や、海外の投資家から見ると日本企業の株は割安になっていることから、日本企業の株が買われる動きになっているのです。
また、東京証券取引所が日本の企業に対して株価を意識した経営をするように働きかけたことで、企業が株価を上げる努力をしていることへの期待もあります。
そのほかにも、日銀が金融緩和政策を続けるとしてきたこと、中国の株価が下落傾向にあるため海外からの資金が日本に流れていること、2024年1月に新NISAが始まったことで「投資」にお金が回っていることなども背景とされています。
日本の株価が上昇している主な理由
- アメリカの株価の上昇
- 企業の業績が好調なこと
- 円安の影響⇒輸出企業に追い風、日本株に割安感
- 企業による株価を意識した経営の努力
- 日銀の金融緩和政策
- 中国株でなく、日本株を買う人が増加
- 新NISAによって投資を行う人が増加
株価はどうして上下する?
株価が上下する理由は単純で、需要と供給のバランスで決まります。基本的に、人々が買いたい株の数(需要)が、売りたい株の数(供給)より多ければ株価は上がり、少なければ株価は下がります。買いたい株の数が増える理由には、日経平均株価が史上最高値を更新した背景で説明したように、それぞれの企業の業績や将来性のほか、社会情勢、金利などの金融政策、円高や円安といった外国為替の変化など、さまざまな要因が関係してきます。
これまでの株価の推移
以前の日経平均株価の史上最高値が記録されたのは1989年12月で、今回の史上最高値更新までに34年以上たっていますが、なぜそれほど長い間、更新されなかったのでしょうか。それを理解するには、日本と世界の経済がたどってきた道のりを見る必要があります。
日本では1980年代後半からの「バブル経済」のとき、企業や個人が積極的に株や土地を購入したことで、それらの値段が大幅に上がりました。実際の経済成長を超えるペースで資産価値がふくらんだことから、「泡(バブル)」にたとえられてこのように呼ばれています。以前の史上最高値はこの時期につけられています。
しかし、これは経済の実体とはかけ離れていました。政府や日銀が投資を制限するための引き締め政策を実行したことで、企業や個人は銀行からお金を借りることが難しくなり、株や土地の価格が急激に下がって、1990年代初めにバブル経済は終わりました。企業の倒産や個人の自己破産が増え、お金を貸していた銀行などの経営も悪化。日本全体の景気が悪くなり、物価が下がって企業の収益は減少しました。将来性を期待されたインターネット関連企業の株価が上昇したITバブルと呼ばれる時期もありましたが、日本の経済は長い期間、停滞することになります。
2008年9月にはアメリカの大手証券会社リーマン・ブラザーズが経営破綻したことをきっかけに、世界中に金融・経済危機が広がりました。経済の不安から株安が進んで、日経平均株価は2009年3月にバブル後最安値の7054円98銭 をつけました。
その後も2011年3月の東日本大震災発生など日本経済は厳しい状況が続いていきますが、安倍政権時代の日銀の大規模な金融緩和政策によって、2015年4月に15年ぶりに2万円台まで回復しました。2020年2月以降の新型コロナウイルスの感染拡大により再び株価は世界的に下落しましたが、各国の金融政策や、コロナ後に経済が回復する中で前述したような理由から日本の株を買う人が増えたことによって、今回の史上最高値の更新につながりました。
株価が上がるとどうなるの
では、株価が上がることは私たちの暮らしとどのように関係してくるでしょうか。
株は企業が多くの人からお金を集めるために発行します。企業はお金を集めることで、行っている事業をもっと拡大したり、新しい事業を始めたりすることができるようになります。
株価が上がるということは、その企業の「価値が上がる」ということです。企業の価値が上がると社会的な信用度も上がり、優秀な人が集まる、さらにお金を集めやすくなる、経営が安定する、事業を拡大していけるといった繰り返しから、その企業の業績はよくなります。業績がよくなると本来は、そこで働く人に多くの賃金(給料)が支払われ、働く人はお金がたくさん使えるようになり、モノがたくさん売れて景気はよくなっていきます。
実際には株価と企業の業績は完全には一致しません。また、株価が上がっても働く人の給料が上がらない、景気がよくならないという状況が続いてきました。2023年には平均の賃上げ率が1994年以来の3%台になるなど、給料を上げる動きは少しずつ進んできましたが、物価も高くなっているために、暮らしがよくなっているという実感は大手企業につとめる人など一部にとどまってきました。
ポイントを確認しよう
多くの企業では毎年春に、経営者と従業員の間で賃金の引き上げ交渉が行われます(春闘)。2024年の春闘ではすでに多くの企業で前年を上回る賃上げ要求にこたえる回答が出ており、賃上げが中小企業まで広がるかが注目されています。バブル期の株価上昇とは異なり、日本の経済成長に見合った株価上昇によって、景気と暮らしの向上につながることが期待されています。
執筆:NPO現代用語検定協会
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