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「部活で疲れて勉強まで手が回らない」
「部活も勉強も頑張りたいのに、うまく続かない」
そんなふうに日々の忙しさや疲れに悩んでいる生徒の姿を見て、どうにかしてあげたいと思っている先生も多いのではないでしょうか。
近年、部活動の地域移行が進み、外部指導者が関わるケースも増えてきました。活動スタイルやスケジュールが変化するなかで、勉強との両立に戸惑っている生徒もいるでしょう。
そこでこの記事では、部活と勉強の両立に悩む中学生のために、塾講師としてできる具体的なサポート方法や声かけのコツをご紹介します。生徒の努力が実を結ぶよう、前向きに応援していきましょう。
中学生が部活と勉強の両立に悩む理由とは?
生徒は「部活も勉強も頑張りたい」という気持ちを持ちながらも、どちらもうまく進まないもどかしさを抱えています。
なぜ部活と勉強の両立が難しくなってしまうのでしょうか。ここでは、よくある原因を3つ解説します。
時間のやりくりが難しい
近年は働き方改革の影響もあり、部活動の顧問による学校の先生の負担を減らすなどの目的で、中学校の部活動の時間は短縮傾向にあります。しかし、それでも生徒が帰宅するのは夕方以降になるのが一般的です。
そこに習い事や家庭の事情などが加わると、生徒が自由に使える時間は限られてしまいます。結果として、宿題や予習復習にあてる時間がとれず「勉強したいけれど時間がない」という状況に陥ってしまうのです。
「時間の管理ができない」と、自分の努力不足を感じて落ち込んでしまう生徒もいます。時間のやりくりが難しい状況を理解し、努力していることを励ます声かけを心がけましょう。
身体の疲れがたまっている
部活と勉強の両立のために、睡眠時間を削って勉強の時間を確保しようとする生徒もいます。しかし十分な休息がとれなければ、疲れはたまっていく一方です。
疲れがたまると、集中力が落ちて勉強がはかどらず、部活でも思うように動けなくなってしまいます。結果として、どちらもうまくいかないという悪循環に陥ってしまうのです。
「疲れているからできない=やる気がない」ではないことを理解し、無理をしている子に、睡眠や休息の大切さを伝えることが大切です。生徒自身にも、スランプの背景にある身体的な負担に目を向けさせましょう。
精神的に疲れている
中学生は、成績や部活での活躍、人間関係など、さまざまな場面でプレッシャーを感じながら生活しています。「失敗したくない」「期待に応えなければ」という思いから頑張りすぎてしまう子や、思うようにできない自分を追い詰めてしまう子もいるでしょう。
また、周囲の友だちと自分を比べて落ち込んだり、自信をなくしたりすることも少なくありません。
こうした状況が続くと、気づかないうちに精神的な疲れがたまり、勉強や部活で思うように力が発揮できなくなってしまうのです。
見えにくい「心の疲れ」に気づけるのは、日頃から身近にいる先生だからこそ。小さなサインを見逃さず、生徒の緊張や不安が和らぐような声かけをしていくことが大切です。
部活と勉強、どちらも頑張るメリットとは?
こうした時間的な制約や心身の疲れから、「部活か勉強、どちらかをあきらめた方がいいのかな」と感じてしまう生徒もいるかもしれません。
しかし、部活と勉強の両方に挑戦することは、生徒にとって大きな意味があります。ここでは、部活と勉強を両立することで得られるメリットを見ていきましょう。
時間管理能力や集中力が向上する
部活と勉強の両立をはかることで、時間管理能力や集中力が自然と育ちます。限られた時間の中で成果につながる勉強を続けるために、短い時間をどう効果的に使うかを、つねに考えて取り組むからです。
うまく時間を使うためには、自分に合った工夫を積み重ねていくことが必要です。こうした日々の生活の中で、時間の使い方にメリハリが生まれ、自分の行動を意識的に選ぶ習慣が身についていくのです。
また、短時間でも集中して取り組む力が鍛えられるため、テストや受験はもちろん、将来の仕事や生活にも活かせる力になっていくでしょう。
部活での達成感が、勉強を支える土台になる
部活で味わう達成感は、生徒が前向きに勉強に取り組む気持ちを後押しする力になります。「できるようになった」「チームで困難を乗り越えられた」といった達成感が、生徒の自信になり、勉強にも良い影響を与えるのです。
たとえば「部活で毎日練習を続けたら上達した」という体験があると、「勉強も毎日続ければ伸びる」と思えるようになります。テスト勉強や受験などで壁にぶつかったときも、部活での積み重ねで得た成功体験が、生徒を支える粘り強さの土台となってくれるでしょう。
両立させた成功体験は将来の自信につながる
「部活と勉強を両立できた」という経験は、生徒にとって大きな成功体験となります。「忙しくても工夫すればできた」「どちらもあきらめずに続けられた」といった実感は、これから先の人生で困難に向き合うときの自信と支えになるはずです。
さらに、「両立している」という努力を、先生や保護者といった身近な大人に認めてもらうことで、「自分は頑張れる」という前向きな自己肯定感も生まれます。
部活と勉強を両立した経験で育まれる力は、将来に活きる力になります。両方とも頑張ることをあきらめたくない生徒の思いを、後押ししていきましょう。
部活と勉強を両立するための4つの工夫
部活と勉強、どちらも続けていくには、ちょっとした工夫の積み重ねが大切です。
ここでは、塾講師から生徒に提案できる、具体的で取り入れやすい4つの工夫を紹介します。
塾の授業で完璧に理解する
塾の授業では、「その場で完璧に理解すること」を生徒自身が意識できるように働きかけていきましょう。家庭での学習時間が十分に確保できない生徒にとって、塾での授業はとても貴重な学びの場です。そのため、授業中に「理解する」「覚える」「納得する」ことを意識し、できるだけその場で内容を完璧に理解できるようにすることがポイントです。
先生は、要点を絞った説明や理解度を確認する声かけを行うことが、授業の密度を高めることにつながります。また生徒には、「授業を聞くだけ」で終わらせず、要点を整理しながらメモする、大事な部分に印をつけるなど、意欲的に理解を深めていけるよう促しましょう。
塾での授業で理解が深まれば、家庭での復習や宿題の時間は定着度の確認にもなり、取り組みやすくなります。こうして、限られた時間の中でも学びのサイクルが回りやすくなるのです。
すきま時間を活かして学習を積み重ねる
毎日、長時間勉強するのが難しい生徒には、すきま時間をうまく使うことを提案してみましょう。部活や課外活動などで忙しくても、通学中やお風呂の時間などを利用して、少しずつでも学習を積み重ねることは十分可能です。「たった5分」でも、毎日継続すれば確かな力になっていきます。
以下のようなすきま時間でもできる具体的な方法も、先生からの提案としておすすめです。「短い時間でも、続ければ効果があるよ」と声をかけてあげましょう。
- 英単語をアプリで学習する
- 社会の語句を音声で聞く
- その日の授業のノートを見返す
「勉強には、そのための特別な時間と場所が必要」と考えず、日常のちょっとしたすきま時間を活用する工夫を、生徒と一緒に考えていきましょう。それが両立を成功させるカギとなります。

家庭での勉強をルーティン化する
「勉強しなきゃ」と思っていても、疲れていると後回しにしてしまう生徒は少なくありません。そんなときは、勉強を生活習慣の一部として組み込む工夫が大切です。
- 夕食後に10分だけ計算問題を解く
- お風呂に入る前に、参考書を1ページ読む
というように、決まった時間と行動パターンで学習してみましょう。生活の一部に組み込んでしまえば、やる気に左右されずに続けやすくなるのでおすすめです。
「何を・いつ・どのくらい」するのかは、生徒と一緒に考えて、無理のないルーティンづくりをサポートしていきましょう。家庭学習が習慣の一つとして身につくことで、学びを継続する自信にもつながっていくはずです。
小さな目標を立てて達成感を得やすくする
部活と勉強の両立に取り組む中で、「どちらも中途半端になっている気がする」と不安を感じる生徒もいます。そんなときは、達成しやすい小さな目標を立てて、達成することで「できた!」という実感を積み重ねることが大切です。
- 1日1ページ、問題集を確実に進める
- 1週間で新しい英単語を必ず10個覚える
といった小さな目標なら、無理なく続けることができるでしょう。
先生が生徒と一緒に小さな目標を設定し、クリアするたびに「よく頑張ったね」と努力を褒めてあげることで、生徒の達成感はより強くなります。こうした日々の小さな成功体験の積み重ねが、「自分にもできる」という自信につながり、両立を持続できる力になっていくのです。
「毎日ほんの少しずつでも」をキーワードに、無理なく続けられる学習法が、生徒の両立を支える大きなカギになります。
塾の先生だからこそできる効果的なサポート
部活と勉強の両立に悩みながらも一生懸命取り組んでいる生徒にとって、塾の先生との関わりは大きな支えです。
ここでは、塾の先生だからこそできる具体的なサポートや、生徒の励みとなる関わり方の工夫を紹介していきます。
親身な個人面談で生徒のやる気を引き出す
個人面談は、生徒の気持ちにじっくり向き合える貴重な機会です。生徒が両立に悩んでいることが分かったら、まずは「部活も勉強も頑張っていて、えらいね」と、努力を認めていることが伝わる声かけを意識しましょう。
いきなり勉強法のアドバイスに入るのではなく、今の頑張りを肯定することが、生徒のやる気を引き出す第一歩になります。
そのうえで、「どんなときに、うまくいっている?」「今のやり方で困っていることはある?」など、生徒自身が工夫や課題に気づけるような対話を心がけると効果的です。先生と一緒に考えてみることで、「自分にもできるかもしれない」という前向きな気持ちが育ちます。
授業内で知識の定着を図る工夫をする
部活と勉強の両立が難しい生徒にとって、塾での授業は、限られた「学習に集中できるチャンス」です。だからこそ、授業内で「理解・定着・自信」が得られるような工夫を意識することが大切です。
- 要点を明確に示す
- 内容を何度か繰り返す
- 確認テストやミニクイズを活用する
など、授業内で知識を定着させるための工夫をしましょう。塾の授業で、学習内容を深く理解できた実感を得られれば、「家ではあまり勉強時間が取れないけれど、塾ではしっかり取り組めている」という安心感にもつながります。
また「この前の内容、しっかり覚えていたね」「今日は集中できていたね」といった前向きなフィードバックも、生徒の自己肯定感を育てるうえで効果的です。
保護者との連携を高めて、生徒の頑張りを支える
部活と勉強の両立を頑張っていても、その努力が周囲に伝わっていないと、生徒のモチベーションが下がってしまうこともあります。だからこそ、塾と保護者が密に連携し、生徒の日々の頑張りを共有していくことが大切です。
- 部活動で忙しい時期なのに、とても授業に集中できていた
- 積極的にノートをとりながら授業を受けていた
- すきま時間をうまく活用している
といったふうに、具体的に塾での様子を保護者に伝えることは、生徒にとって大きな励みになります。保護者にとっても、子どもの頑張る様子が見えることで、安心感や子どもを信じる気持ちが生まれ、家庭での声かけも自然と前向きなものに変わっていくでしょう。
また、塾での保護者面談や連絡帳、オンラインツールなどを活用して、双方向の情報共有を意識することもポイントです。塾と家庭が同じ方向を見て関わることで、生徒は「自分をちゃんと見てくれている人たちがいる」と感じ、より前向きに両立に取り組めるようになるでしょう。
塾の先生ならではのサポートは、部活と勉強の両立に頑張る生徒だけでなく、子どもを見守る保護者の支えにもなります。
部活と勉強、どちらも頑張る生徒を応援しよう
部活と勉強を両立したいと願いながらも、思うようにいかず悩んでいる生徒は少なくありません。時間がない、部活だけで疲れてしまう、計画通りにうまく続かない。そんな壁にぶつかりながらも、「どちらも頑張りたい」と強く思っているのです。
このような生徒の「頑張りたい」という気持ちを理解し、寄り添いながら、ポジティブな声かけをしていきましょう。そして、学習法や授業への取り組み方の工夫をアドバイスするなど、成功のための効果的で負担にならない方法を一緒に見つけていくことは、塾の先生だからこそできる大切な関わりです。
たとえ小さな一歩でも、その努力を認めて見守り続けることで、生徒の「両立できる力」は少しずつ育っていきます。生徒の「やってみよう」「自分ならできる」という前向きな気持ちと自信を引き出し、部活と勉強の両立に頑張る生徒を、温かく応援していきましょう。
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