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この記事では、「核のごみ」の時事解説を小学校高学年~中学生にわかりやすく説明します。授業の合間に話すネタ、関連事項を解説する際の資料などとしてご活用ください。
最終処分場に向けた文献調査が南鳥島で始まる!
「核のごみ」とも呼ばれる放射性廃棄物をどのように処分するかは、原子力発電所を抱える世界の国々の大きな課題です。特に「高レベル放射性廃棄物」の処分については、地下深くに埋める方法が現時点で最も安全で実現可能とされている方法です。しかし、どこに埋めてもよいわけではありません。日本ではまだ、「高レベル放射性廃棄物」を埋める場所=「最終処分場」をどこにするかを調査している段階です。2026年4月には最終処分場をめぐり国からの申し入れを受けていた東京都小笠原村が、南鳥島の文献調査の受け入れを表明し、5月から調査が始まりました。「核のごみ」とはどのようなものか、最終処分場が建設されるまでにはどのような過程を経るのか。調べていきましょう。
「核のごみ」って何?
「核のごみ」には「低レベル放射性廃棄物」と「高レベル放射性廃棄物」があります。
「低レベル放射性廃棄物」とは、原子力発電所(原発)の運転などで発生する放射性物質の割合が低い廃棄物です。たとえば、原発施設を壊したときに出るコンクリートや金属、原発の運転に使われるフィルターなど消耗品、廃炉で出る制御棒や原子炉内構造物などがあてはまります。これらは、放射能レベルによって浅い地下(70m未満)から中深度(70m以上)の地下に埋められます。低レベル放射性廃棄物の中でも比較的、放射能レベルが高い制御棒、原子炉内構造物などの廃棄物はトンネルやサイロ型の施設をつくって中深度に埋められます。
一方、「高レベル放射性廃棄物」とは、原発で使われた燃料(使用済燃料)のうち、再利用できずに残ったものです。使用済燃料は再処理によって再び燃料として利用されますが、再利用できない廃液も残ります。このような廃液はガラス原料ととかし合わせてガラス固化体の形で保管されています。
2024年3月末時点でガラス固化体になっている高レベル放射性廃棄物は約2500本あり、さらに使用済燃料をすべて再処理してガラス固化体にすると、合計で約2万7000本になるとされています。
ガラス固化体は現在、青森県六ケ所村にある日本原燃株式会社の高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターと、茨城県東海村にある日本原子力研究開発機構の東海研究開発センターで管理されていますが、最終的には低レベル放射性廃棄物よりもさらに深い地下300m以上の深さの安定した岩盤に埋められることとなっています。なお、低レベル放射性廃棄物の中でも、半減期(最初にあった放射能の量が半分になるまでの時間)が長い放射性物質が含まれるものは、高レベル放射性廃棄物と同様に深い地下に処分する必要があるとされています。

高レベル放射性廃棄物はなぜ長期間管理しなければならないの?
放射性廃棄物から発生する放射能は、時間がたつにつれて弱まり、周囲に及ぼす影響が減っていきます。しかし、それには長い年月がかかります。
高レベル放射性廃棄物をふくむガラス固化体のつくられた直後の表面の放射線量は、1時間当たり約1500シーベルト(Sv)で、1000年がたった後も1時間当たり約20ミリシーベルトと予測されています。
シーベルトとは放射性物質が人体に及ぼす単位です。私たちは宇宙、空気など自然や食べ物などから平均で年間約2.1ミリシーベルトの放射線量を受けているとされています。それ以外に、たとえばエックス線検査など医療的に放射線を受けることもありますが、胸のエックス線で1回に受ける放射線量は0.1ミリシーベルト程度です。2011年におきた福島第一原発事故によって放射線が大気に放出されましたが、一般の人々が健康を守るための基準として規定された追加被ばく放射線の限度は年間1ミリシーベルトです。これは1時間に換算すると0.23マイクロシーベルトとなります。
これと比較するとガラス固化体の放射線量がいかに高いかがわかるでしょう。
ガラス固化体の放射能が天然ウラン並みの有害度になるまでは約8000年、ウラン鉱石の放射能と同じレベルにまで減るのは数万年かかるとされています。自然界や人間の生活環境に影響を及ぼさないようになるまで、それを安全な環境で隔離し続けなければならないのです。
「核のごみ」の処分問題
「核のごみ」の中でも高レベル放射性廃棄物が自然界や人に影響を及ぼさないようになるにはきわめて長い期間がかかりますが、それを人間が直接管理し続けるのは、とても大変です。そのために現在、計画されているのが、地下深くに埋めるという方法です。そして、埋める場所は慎重に選んでいかなければなりません。
地下に埋める処分方法と課題
なぜ高レベル放射性廃棄物を地下に埋める方法が適切と考えられているのでしょうか。
前述したとおり、ガラス固化体の形で保管されている高レベル放射性廃棄物の表面からは長期間高い放射線が発せられ続けているため、外部から隔離し続ける必要があります。
仮に地上で管理するとしたら、そのための施設を数万年単位で維持・管理していく必要があります。その間、自然災害やテロなど社会情勢の変化などによるリスクにさらされるおそれもあるでしょう。安全性を保ちながら果てしない年月にわたって管理していくのは困難なことから、「人の手の届かない」場所に最終処分することが現実的であると言えます。
かつて高レベル放射性廃棄物の最終処分をめぐっては、核のごみを抱える国々や国際機関でさまざまな方法が検討されてきました。たとえば、宇宙にロケットで打ち上げる宇宙処分や海の底に廃棄する海洋投棄、南極の氷の下に廃棄する氷床処分なども検討されてきました。しかし、確実性やコスト、国際条約との兼ね合いなどからどれも方法として不可能であるとの結論になりました。
そして、人による継続的な管理が不要で生活環境に影響を与えない地下深くに埋めるのが、最も適切な方法であるという認識が世界各国でもたれるようになりました。
地下深くに埋める理由としては、酸素が少なくものが変化しにくい(腐食などしにくい)ことや、ものの動きが非常に遅い(放射性物質が仮にもれてもほとんどが地下にとどまり続ける)という地下の特性もあります。
現在、世界の国々で地下に埋める方法で最終処分場の選定や建設が進められています。最も先行しているフィンランドでは2024年8月から試験運転が始まり、スウェーデンでも2030年代の後半の操業が予定されています。スイスやカナダ、フランスでも最終処分場の場所が選定済みです。
最終処分場について、日本の取り組みはどうなっているの?
日本では現在、最終処分場は全国で1か所、安全な地盤の地下300m以上の深さに6~10平方km程度の規模で建設される計画があります。その場所は文献調査、概要調査、精密調査の3段階の調査を行ったうえで決定するとされています。
場所の選定には地下の科学的な特性が重要です。火山や活断層に近い、地盤の隆起する速度が速い、地下の温度が高すぎる、地下に鉱物資源があり将来掘削される可能性がある、などの場所は適切ではありません。資源エネルギー庁では、2017年に地域の科学的特性を既存データに基づき整理してまとめた「科学的特性マップ」を公表しています。この地図では「好ましくない特性があると推定される地域」と「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」が色分けされています。
この「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」の中から文献調査を受け入れた自治体に対して、調査を行っていきます。文献調査では火山活動や断層活動などによる著しい変動がないことや鉱物資源の有無、強度の弱い地層がないことなどが確認されます。その後、調査の結果によって、概要調査、精密調査と進んでいきますが、一連の調査で約20年かかるとされています。
最終処分場の場所が決まったら、処分施設の建設を進めながら、随時、金属の入れ物や緩衝材で覆われたガラス固化体の搬入を進め、埋め戻しが行われていくことになります。最終的に掘り返した場所はすべて埋め戻して閉鎖されますが、調査から閉鎖されるまでは100年以上という長期にわたります。
最終処分場決定までの3段階の調査
| ①文献調査 | 2年程度 | 火山や活断層などの過去の状態について、文献・データを使って調べる |
| ②概要調査 | 4年程度 | 地下に実際に穴を掘るボーリング調査などで地下の状況について調べる |
| ③精密調査 | 14年程度 | 地下に施設(トンネル)を建設して、岩盤や地下水の特性などに関する詳細な調査・試験を行う |
これらの3段階の調査では、次の調査段階に進むには地元自治体の意見を聴き、十分に尊重することも定められており、自治体が反対している場合は次の段階に進むことはありません。
これまで候補地として北海道寿都町と神恵内村、佐賀県玄海町が文献調査を受け入れてきました。しかし、両道県とも知事が反対の方針を示しており、概要調査に進むめどが立っていません。候補地を決めていくためにより多くの自治体で文献調査を行えるように、2026年1月には経済産業省が全国の都道府県知事に自治体での文献調査の受け入れに理解を求める文書を送っていました。 そして、2026年3月、国は東京都小笠原村の南鳥島に個別に文献調査を申し入れました。4月に小笠原村は調査の受け入れを表明し、5月に全国で4例目の文献調査が開始されました。南鳥島に申し入れが行われたのは一般の住民がおらず、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い地域」であり、国有地ということなどが理由とされています。
ポイントを確認しよう
原発は「トイレのないマンション」と言われることがよくあります。廃棄物が出るのに処分方法があいまいなまま建設されたということです。埋めるしかない、それが現実的な対処方法となってしまっている現在、どこかに最終処分場を建設せざるを得ないことは事実です。まだ文献調査が始められたばかりで、最終処分場にすべてのガラス固化体が埋められる頃には私たちの多くはこの世にはいません。しかし、それは地下深くに存在し続けていきます。私たちは原発で発電された電力の恩恵を受けています。電力を使うのは一瞬ですが、それによって生み出された放射性廃棄物の処理には長い年月がかかります。候補地として挙がっている一部の地域のことととらえず、私たち一人ひとりがこの問題に関心を払っていく必要があるのではないでしょうか。
※執筆:NPO現代用語検定協会
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