
目次
「短歌の作り方は、どう教えたらいいんだろう」
「教えるときのコツはあるのだろうか」
小学校で短歌づくりの授業を控え、このような不安をお持ちではありませんか。
短歌は31音という限られた音数の中で、自分の気持ちや情景を表現する伝統的な詩歌の形です。国語の学習活動の中でも短歌づくりが取り入れられているため、授業を通じて児童に短歌の作り方や、表現の仕方を知ってほしいと考える先生も多いでしょう。
この記事では、短歌の基本的なルールや作り方から、教えるときのコツまでまとめています。小学生が短歌にしやすいテーマ例もまとめているので、テーマに迷う児童へのサポートにも活用できるでしょう。小学校の短歌の授業で短歌の作り方をわかりやすく教えて、児童の表現力を育てたいと考える先生は、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも短歌とは?
短歌は、五・七・五・七・七の31音で気持ちや情景を表す、日本の伝統的な定型詩です。俳句(五・七・五)よりも少し長く、気持ちをゆっくり表せるのが特徴となります。
短歌は自分の気持ちを表現する一つの方法であり、それが「作品」となるのが魅力です。リズムがあるので楽しく作ることができ、それぞれが作ったものを心のままに味わえます。
俳句・川柳との違いは?
短歌は、俳句や川柳と同じ定型詩ですが、「音数」や「内容の方向性」に違いがあります。
短歌:31音(五・七・五・七・七)で、気持ちや情景を深く表す
【例】雨の日に かさの中だけ あたたかい ひとりの世界 少しすきだな
俳句:17音(五・七・五)で、季語を入れて「情景」を切り取る
【例】春雨や みずたまりにも 空うつる
川柳:17音(五・七・五)で、人間の気持ちや日常をユーモラスに表す
【例】雨の日は かさを忘れて 走り出す
学習指導要領での位置づけ
小学校国語科での短歌の位置づけは、「言葉の響きやリズムに親しむ」活動、「感じたことや想像したことを書く」活動として扱われています。
学習指導要領解説(国語編)では、第3学年及び第4学年の内容の中に「易しい文語調の短歌や俳句を音読したり暗唱したりするなどして、言葉の響きやリズムに親しむこと」と示されています。また、第5学年及び第6学年では、「書くこと」の事項を指導するための言語活動として「短歌や俳句を作るなど、感じたことや想像したことを書く活動」が紹介されています。
そのため、短歌を深く分析したり、技術を身につけたりするよりも、言葉のリズムに親しみながら音読したり、感じたことをもとに五・七・五・七・七の形に近づけながら作ってみたりして、楽しめるようにすることが大切です。
学習指導要領では、「国語の美しい響きを感じ取りながら音読したり暗唱したり」することが大切だと書かれています。授業で扱うときには、内容や形式にとらわれすぎず、繰り返し読むことで短歌のもつ響きの良さを感じられるようにしましょう。
短歌の作り方の基本的なステップ
短歌づくりのステップはいくつかのパターンがありますが、ここでは「短歌にしたいテーマを見つける→言葉を選ぶ→五・七・五・七・七に整える→声に出して読む」という流れを紹介します。それぞれのステップについて、詳しくまとめていきます。
短歌にしたいテーマを見つける
短歌は、心が動いた瞬間を切り取って、言葉にしたものです。そのため、まずは心が動いた瞬間を日常の中から思い出し、短歌にしたいテーマを見つけましょう。
たとえば、以下のような瞬間があります。
・嬉しかったこと
・びっくりしたこと
・きれいだと思った景色
・友達との出来事
・季節の変化で感じたこと
これらの瞬間をカードにまとめて掲示しておくと、児童が思い出しやすくなるでしょう。
短歌に入れたい言葉を選ぶ
前のステップで決めた短歌にしたいテーマをもとに、そのときの情景や気持ちを言葉にして書き出していきます。これが短歌の材料となります。五感で感じたものをもとに、マインドマップのように書き出していくと思考が広がりやすくなるでしょう。
その後、書き出した言葉の中から、短歌に入れたい言葉を選び、組み合わせていきます。
【例】「雨」→「かさ・しずく・しめっぽいにおい・帰り道」「ざあざあ・ひんやり・さみしい」
「見たこと」「感じたこと」「におい」など五感につながる言葉や連想した言葉を、板書したりワークシートに書いておいたりすることで、児童は書き出しやすくなるでしょう。
五・七・五・七・七に整える
書き出した言葉の中から短歌に入れたい言葉を選び、組み合わせて短歌の五・七・五・七・七のリズムに近づけていきます。一つひとつの言葉を言い換えたり、短くしたり、長くしたりして調整していくのがポイントです。
音を揃えるための基本として、押さえたいことは以下のようなものがあります。
・長音(おばあさんの「あ」など)は1音
・促音(小さい「つ」)は1音
・拗音(きゃ・しゅ・ちょ)は1音
【例】「きょうのそら」→きょ・う・の・そ・ら(5音)
また、「五・七・五・七・七」が基本の型であることを押さえた上で、音が多くなる「字余り」や、音が少なくなる「字足らず」も表現の工夫としてあることも伝えておきましょう。
声に出して読む
リズムが整ったら、もともとの短歌のテーマに立ち返り、自分が一番伝えたい気持ちが短歌の中心になっているかを確認します。
伝えたいことの中心が整ったら、改めて読み返して音の流れを整えていきます。ここで声に出して読んでみることが効果的です。作った短歌を声に出すことで、つっかえるところはないか、似た言葉が続いていないかなどが気付きやすくなります。
短歌づくりの際には、児童の「この瞬間を伝えたい」という気持ちが大切になります。必要に応じて先生や友達とテーマについて対話する時間をとると、どのように言葉を選んだら伝わるかが明確になり、言語化しやすくなるでしょう。
小学生に短歌の作り方を教える4つのコツ
小学生の中には短歌になじみのない児童もいるでしょう。そんな中で誰でも楽しんで短歌を作れるようにするには、いくつかのコツがあります。小学生が楽しんでのびのびと短歌が作れるようにするための教え方のコツを4つまとめていきます。
短歌の「型」を体験でつかませる
短歌になじみがない小学生にとっては、短歌の定型は制限のように感じ、作文を書くときよりもかえって難しさを感じてしまう場合があります。そのため、まずは短歌の「五・七・五・七・七」という定型のリズムを身体で感じ、言葉遊びのように楽しむことで、短歌への抵抗感を緩和させると良いでしょう。
短歌の定型を体験的につかむためには、以下のような方法があります。
・手拍子、足踏みで五・七・五・七・七を刻む
・既存の短歌を声に出して読む
・五音、七音の言葉カードを並べ替える
・五音の言葉だけでしりとり
・五音、七音の言葉探しゲーム
短歌づくりに入る前にまずは「五・七・五・七・七」のリズム感を楽しめるようにしましょう。
心が動く短歌のテーマを見つけやすくする
小学生が短歌にしたい内容を自分で考えるのは、難しいこともあるでしょう。そのため、短歌のテーマとなる心が動いた瞬間を思い出せるように手立てを行うことが重要です。
まずは、心が動いた瞬間を思い出すきっかけを増やしていきましょう。たとえば、「今日の中で『おっ』と思ったことは?」「朝・昼・放課後の中で印象に残ったことは?」などの問いかけをする方法や、「うれしい」「びっくり」などの感情カードから選ぶ方法、風景の写真から思い出す方法などがあります。
短歌にしたいテーマが決まったら、そこから五感で情景を立ち上げていきます。マインドマップや五感メモを使ってより具体的に言語化していきましょう。
【五感メモの例】「雨」
見えたもの→傘の音ではねるしずく
聞こえた音→ぽつぽつ
におい→じめっとしたにおい
触った感覚→傘の持ち手が滑る
心の動き→傘の中が自分だけの世界みたい
また、言葉を増やすために、連想して言葉をつなげていったり、視点を変えて新しい言葉を出す方法も効果的です。
【視点の例】
・自分の視点
・友達の視点
・物の視点
・上から/下から/近くから/遠くから
このようにさまざまなアプローチで、短歌の材料となる言葉をたくさん出していくことが次のステップにつながります。
短歌の形に組み立てるときの工夫を教える
短歌を五音や七音にまとめるためには、言葉を言い換えたり、長さを変えたりするなどの工夫が必要になる場合があります。そのため、児童の実態に合わせて、先生が言葉を選ぶためのさまざまな方法を提示し、児童が工夫しながら短歌の形にまとめられるようにすると良いでしょう。
短歌の形にまとめるための工夫としては、以下のようなものがあります。
・言葉を短くする工夫
【例】「~している」→「~してる」、「~のようだ」→「~みたい」
・言葉を膨らませる工夫
【例】「雨」→「雨の日」、「風」→「風の中」
・助詞を付け足す
【例】「雨 におい」→「雨のにおい」、「空 青い」→「空が青い」
・語順を変える
【例】「青い空を見上げた」→「見上げれば 青い空」
また、出来上がった短歌も、改めて声に出すと不自然な部分に気付くことがあります。不自然な点を直し、より伝わりやすい表現に変えられるよう工夫できると良いでしょう。
児童が安心して作れる環境を整える
短歌は、自分の気持ちを言葉にする活動です。安心して短歌を作れる環境を整えることで、児童がより自由に表現できることがあります。短歌には正解がないため、自分なりの表現で書くことが大切であることを最初に伝えることで、児童の心理的ハードルが下がり、取り組みやすくなります。
また、小学生の場合は「五・七・五・七・七」の型にとらわれすぎず、まずは自由に短歌づくりを楽しむことから始めましょう。そのため、「型に当てはまらなくてもOK」ということを伝え、先生は出来上がった作品に対して「いいね!」と前向きな声かけをすることが大切です。その上で「こんな方法もあるよ」と提案していくと良いでしょう。
小学生の短歌づくりの際には、楽しんで活動できるよう先生や友達から「それいいね」「面白いね」と伝えあえる場を作ることが大切です。そのために、交流の時間を設けたり、先生が児童の短歌を紹介したりするなどの時間があると良いでしょう。
小学生が作りやすい短歌のテーマまとめ
小学生が短歌で表しやすいテーマとしては、「日常の中で心が動きやすい場面」を中心にすると良いでしょう。ここでは、ジャンルごとに短歌づくりに使えるテーマをまとめていきます。短歌のテーマがなかなか決まらないという児童には、ここでまとめる言葉をカードにして、そこから選ぶ形をとると、書き始めがスムーズになります。
自然
・雨(かさ、しずく、におい、音)
・風(強さ、音、木のゆれ)
・空(夕焼け、夜空、色、雲の形)
・植物(花、緑、落ち葉)
・動物(鳥、虫、野生動物)
季節
・春(桜、入学式、新学期、春のにおい、雨上がりの道)
・夏(ひまわり、セミの声、プール、夏休み、花火、夕立、かき氷)
・秋(落ち葉、夕焼け、運動会、どんぐり、秋の風、月)
・冬(雪、霜、こたつ、冬の空、クリスマス、お正月、朝の寒さ)
学校生活
・休み時間(遊び、会話)
・授業中(わかった瞬間、緊張する瞬間)
・給食(におい、味、献立)
・掃除(ほこり、達成感)
・行事(運動会、発表会、遠足)
・帰り道(ほっとする気持ち、夕方の空)
家庭生活
・朝の支度(あわてる、眠い、におい)
・家族との会話(嬉しくなった言葉、ちょっとしたケンカ)
・食卓(湯気、におい、わくわく感)
・ペット(動き、鳴き声、触った感触)
・休日(のんびり、わくわく)
気持ち
・嬉しい(ほめられた、できた)
・びっくり(予想外)
・さみしい(雨の日、帰り道)
・ドキドキ(発表、挑戦)
・ほっとする(家に帰ったとき、友達の言葉)
遊び・趣味
・スポーツ(走る音、汗、風)
・ゲーム(集中、満足感)
・読書(静けさ、物語の世界)
・音楽(リズム、歌声)
スムーズに短歌が作れない児童に対しては、先生が試しに一緒に作ってみるという方法があります。短歌づくりのステップを一緒に確認したり、考え方のポイントを確認しながら作ることで、児童は安心して短歌づくりに取り組むことができるでしょう。
言葉のリズムを味わい、児童が短歌づくりを楽しめるようにしよう
小学生に短歌の作り方を教える時は、まずは短歌の音のリズム感を楽しんだり、短歌から伝わってくる情景を味わったりして慣れ親しむことが大切です。その上で、自分が短歌にしたいテーマから、五感で感じたことをもとに言葉の材料をたくさん書き出していきます。
型や表現技術にこだわりすぎず、先生が前向きな言葉をかけていくことが、児童が安心して表現を楽しめるようにするためのコツです。この記事を参考に、児童の楽しい短歌づくりをサポートしてみてください。
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