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「チーム学校」という言葉を聞いたことがあっても、
「具体的には、どんな内容なの?」
「自分の業務と、どんな関係があるのだろう?」
と、いまひとつピンとこない先生も多いのではないでしょうか。
学校現場での課題が複雑化・多様化している現在、教員一人ひとりが抱える負担は年々大きくなっています。そのような状況で注目されているのが、「多職種が連携して子どもを支える」という「チームとしての学校」の仕組みです。
そこで、この記事では若手の先生の視点に立って、「チーム学校」の定義やメリット、関わる人の役割、そして先生自身に何ができるのかを、わかりやすく解説します。
「チーム学校」の一員として、前向きに学校の業務に関わっていくためのヒントを、一緒に見つけていきましょう。
チーム学校とは?若手の先生向けにわかりやすく解説
「チーム学校(チームとしての学校)」とは、教員だけでなく、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、事務職員など、さまざまな専門家が、チーム体制で子どもたちを支える学校のあり方です。
文部科学省は、多様な専門性を持つスタッフが協働しながら教育活動を進めていく体制を提唱しており、この方針に沿った学校現場の改善策として、「チーム学校」が広まっています。
「チーム学校」の背景にあるのは、教育現場が直面する多様化・複雑化への対応と、教職員の働き方の見直しという、避けて通れない課題です。変化の激しい社会で生きていく子どもたちに必要な教育水準はますます上がっており、それにともない指導者側にはより高い専門性が求められます。
さらに、いじめ、不登校、家庭環境の問題など、子どもを取り巻く状況は非常に複雑化・困難化しており、教員や学校に求められる役割は拡大しています。また、世界的に見ても明らかな日本の教員の長時間労働への対応も急がれます。
それらの課題に対し、教員一人ひとりが本来の専門性を発揮しやすい環境の整備と、「共に子どもの成長を支えていく体制」づくりが求められているのです。
「チーム学校」の目的は、新しい時代に求められる資質・能力を育む教育過程を実現し、教育現場に山積する課題を解決するため、教員の専門性を活かした指導の充実や、より効果的な子どもとの向き合い方を可能にする、体制整備にあります。つまり、子どもたち一人ひとりへの支援を、よりきめ細かく行えるようにするための仕組みなのです。
学校内外の人材の専門性を活かした連携で、子どもたちを支えるのが「チーム学校」の仕組みです。
「チーム学校」によるメリットと学校現場の変化
「チーム学校」の実現には、どんなメリットがあり、どのような変化を学校現場にもたらすのでしょうか。その具体的な改善点を確認していきましょう。
教員の業務負担が軽減される
前述のとおり、日本の教員は、他の国と比べても勤務時間が長く、一人ひとりが抱える仕事量も多いことが明らかになっています。日々の授業や学級経営はもちろん、学校行事の準備、事務的な書類作成、保護者対応、会議、研修、そして児童・生徒の生活指導や部活動の指導にいたるまで、教員の業務内容は多岐にわたります。
「チーム学校」の体制が整うと、教員以外のスタッフが事務作業などを担い、先生たちが本来の業務に集中しやすくなる環境が生まれます。業務負担だけでなく心理的なストレスの軽減にもつながるので、「教員一人一人が力を発揮できる環境」が整い、子どもたちへの指導の充実が期待されます。
子どもへの支援が多角的に届くようになる
子どもを取り巻く社会環境の変化から、子どもたちが抱える悩みや課題は、年々多様化・複雑化しています。いじめや不登校、発達の特性から生じる学習上の困難、家庭環境の問題など、担任だけでは対応が難しい場面も増えているのが実情です。
そんな場面で心強い存在となるのが、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門職です。心理や福祉等の専門スタッフの配置を充実させることで、教員だけでは行き届かないところまで、専門的な視点から児童・生徒を支援していくことができます。
また、部活動の指導に学外の人材を活用する動きも広がっています。外部指導員が加わることで、子どもたちが専門的な技術指導を受けられるだけでなく、教員にとっても、放課後などの時間を活用できるようになるメリットがあるのです。
このように、多様な専門スタッフたちと連携しながら子どもに合った支援を届けられるのが、「チーム学校」の大きな魅力です。
先生同士が支え合える雰囲気の学校に変わる
「チーム学校」の体制が整ってくると、教員同士だけでなく、養護教諭やスクールカウンセラーなどの専門職、事務職員、そして地域の方々や保護者など、さまざまな立場の人との情報共有や連携が日常化していきます。一緒に問題に向き合いながらも、役割分担により効率的・効果的に学校業務を進める場面が増えていくのです。
このようなやり取りの積み重ねは、お互いの役割への信頼を深め、先生が孤立せずに、いつでも相談し合える雰囲気につながっていきます。先生が一人で問題を抱え込むのではなく、チームとしての支え合いで対応・解決をはかる環境が整うと、教員にとっての安心感や業務効率につながるだけでなく、結果的に子どもたちにとっても、指導や支援の質の高さを保障するものとなるでしょう。
チーム学校としての専門性にもとづく役割分担は、先生一人ひとりの業務全体の負担を軽くし、子どもたちへの指導・支援の向上にもつながります。
チーム学校を支える人と役割
「チーム学校」は、教員だけでなく、さまざまな立場の人が関わって支え合う体制です。では、どんな人が関わり、それぞれにどんな役割があるのでしょうか。
ここではチームの一員として関わる人たちと、その具体的な役割を見ていきましょう。
校長が教育ビジョンを示してリーダーシップをとる
「チーム学校」が機能するうえで、軸となる役割を担っているのが校長(および副校長)です。校長には、どんな学校を目指すのかという教育ビジョンを教職員に伝え、チーム全体が共通の目標に向かって動けるようにする、教育的リーダーシップとマネジメント能力が求められています。ビジョンの共有は、教職員同士の協働や専門スタッフとの連携を促進し、より効果的なチーム体制づくりにつながります。
そして、校長をサポートし、チーム体制を支えるのが教頭の役割です。教職員と専門スタッフ等との連携がうまくいくよう日々の調整役を担い、人材育成や、事務職員との連携でチーム体制を整えることに努めます。
このようにして、校長がリーダーシップをとり、教頭がそれを補佐しながら「チーム学校」の体制を整えていくのです。
若手の先生にとっては、まず校長や教頭の言葉に耳を傾け、教育ビジョンを理解し、自分の勤務している学校がどのような学校を目指し、どのような人材がチームに関わっているのかを知ることが、チームの一員として動き出す第一歩になります。
専門職と連携して子どもを支援する
「チーム学校」では、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、養護教諭などの専門職も、教員とともに子どもを支えるチームの一員として関わっています。
たとえば、子どもの様子に何か気になる変化があったときには、スクールカウンセラーに相談します。そして、必要に応じてスクールソーシャルワーカーを通じて家庭とつながるというように、専門職と連携しながら支援を進めることができます。
また、子どもの安全や健康を守るために、警察や児童相談所などと連携して取り組むケースもあります。教員だけでは対応が難しい場面に対しても、学校が組織的に支援できる仕組みが整えられてきているのです。
このように、それぞれの立場や専門性を活かして役割分担をすることで、子どもにとっても、先生にとっても、よりスムーズで適切な支援につながっていきます。教員自身が「この対応でよいのだろうか?」と迷ったときに、第三者の視点から、専門スキルにもとづく的確なアドバイスや支援を受けられるのは、専門スタッフや関係機関との連携体制の大きな利点であり、教員にとって大きな安心材料といえます。
地域の人と連携して学校教育を支える
「チーム学校」では、教職員や専門スタッフだけでなく、家庭や地域の人たちとの連携・協働によって、共に子どもを育てていく体制づくりを進めることも重視されています。
たとえば、地域の方が外部講師として教室に来てくれたり、学校行事などへの協力や子どもたちの見守りを行ってくれたりするなど、学校の内外が一体となった学習支援も増えてきました。
この背景には、文部科学省が推進する、新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方があります。どのような子供たちを育て、何を実現していくのかという、学校と地域住民との目標・ビジョンの共有や、信頼関係の基礎を構築したうえで学校運営に地域の人々が参画し、協働していくことが推進されているのです。
こうした地域の人たちとの連携の基盤があることで、学校や教員は教育活動に専念しやすくなります。そして子どもたちにとっては、より豊かな学びの機会と、安心して学習に取り組める環境が提供されていくのです。
学校によって「チーム学校」に関わる人材は異なります。自分の学校では、どんな人が「チーム学校」に関わっているのか、確認してみましょう。
若手の先生はどう関わる?|チーム学校での役割とできること
このように「チーム学校」では、さまざまな立場の人たちが、専門性による役割分担で力を合わせ、子どもたちを支えていることがわかりました。
では、若手の先生は、どのような立場や役割で学校教育に関わっていけばよいのでしょうか。
若手の先生がチーム学校の一員として意識したいことは、「わからないことは素直に聞いてみる」「困ったときは誰かと一緒に進めてみる」といった、周りとのつながりを大切にする姿勢です。
たとえば、校務や学校行事の準備など、経験のある先生と協力しながら取り組む場面も多くあるでしょう。そんなとき、「こんなこと聞いてもいいのかな」と遠慮せず、相談や共有を重ねていくことが、チームの力を引き出す第一歩になります。
また、若手の先生ならではの「フレッシュな視点」も、大切な役割のひとつです。ベテランの先生には当たり前に感じられる学校の習慣や対応の仕方について、「これって本当にベストなのかな?」と感じた小さな違和感が、チーム学校をより良くしていくヒントになることもあります。
ちょっとした気づきを学年の先生や養護教諭などに共有する、困ったときは、専門スタッフに相談して力を借りる、といった日頃のやりとりの積み重ねが、「チーム」としての動きを生み出すのです。
若手の先生の視点から生じる疑問や違和感は、チーム学校の改善や活性化のために必要です。「つながる」意識を持って、積極的に関わっていきましょう。
チーム学校の一員として一歩ずつ関わっていこう
「チーム学校」では、ベテランの先生や専門スタッフだけでなく、若手の先生も大切な一員です。
- 子どもについての気づきを共有する
- わからないことは素直に相談しながら、一緒に取り組んでいく
このような積極的な行動が、「チーム学校」がより良く機能するための力になっていきます。何より大切なのは、ひとりで抱え込まず「つながり」を意識していくことなのです。
どんな小さなことでも、つながる意識を持ち続けて行動することが、学校というチームの中で、安心して自分らしく働くための信頼関係を作っていきます。
周りに心を開き、日々の情報共有や、ちょっとした相談の機会を大事にすることからでいいのです。「チーム学校」の一員として、あなたらしい関わり方を見つけていきましょう。
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