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「ポートフォリオって、どうやって授業に取り入れたらいいんだろう?」
そんなふうに感じている先生も、多いのではないでしょうか。
ポートフォリオは、子どもたちの学びの過程を見取り、評価につなげる方法として注目されています。
この記事では、ポートフォリオの基本的な意味から、授業での活用例、導入のステップ、観点別評価とのつなげ方まで、実践的な視点でわかりやすく整理し、解説していきます。
ぜひ、ポートフォリオを取り入れる際の参考にしてください。
ポートフォリオとは?学校教育における導入の目的
教育における「ポートフォリオ」とは、子どもが学びの過程で取り組んだ課題や作品、振り返りの内容など、学習の成果がわかる物を集積・整理しまとめた記録を指します。いわば「学びの足あと」を可視化したものです。
教育におけるポートフォリオには、次のようなものがあります。
- 単元ごとの課題プリントやレポート
- 授業後の振り返りや自己評価の記録
- 教員からのコメント
- 発表や探究活動の記録 など
こうした記録を残すことで、テストの点数だけでは見えにくい、子ども一人ひとりの学びのプロセスや成長の様子が見えるようになります。子どもの思考力や判断力、表現力、主体的に学びに向かおうとする力は、こうしたプロセスの中でこそ育まれるため、ポートフォリオは評価の材料としても活用されています。
また、ポートフォリオは子どもにとって、できるようになったことや、自分の考えの変化などに気づくきっかけになります。自分の成長が実感できるので、自信をもって学びに向かえるようになるでしょう。
日々の授業の中で、子どもたちの学びを丁寧に見取り、支えていくための手立てとして、ポートフォリオは大きな役割を果たしてくれます。
ポートフォリオ導入のポイント
ポートフォリオを授業に取り入れるときは、「なぜ記録するのか」「どのように取り組むのか」をあらかじめ明確にしておくことが大切です。
ここでは、ポートフォリオをスムーズに導入するためのポイントを解説します。
ポートフォリオ導入の目的を明確にする
まずは、ポートフォリオを導入する目的をはっきりさせましょう。目的によって、記録する内容や指導の視点は変わってくるからです。
たとえば、次のような目的が考えられます。
- 子どもの学びの過程を記録して、評価につなげたい
- 子どもたちに、自己評価や振り返りを習慣づけさせたい
さらに、「子どものどんな姿を見取りたいか」「どんな力を育てたいか」を意識しておくことも大切です。それを意識することで、ポートフォリオがただの記録ではなく、教師にも子どもにも意味のあるものになっていきます。
記録する内容と形式を事前に決めておく
目的に応じて「何を、どのように記録していくか」を決めておくことも、大事なポイントです。
たとえば、学びの過程を記録する場合は、
- 課題のワークシートをノートに貼る
- 制作物をファイルにまとめる
振り返りを習慣化する場合は、
- 振り返り用のワークシートを用意し、目標と振り返りを毎時間書く
- Googleスプレッドシートに目標と振り返りを入力していく
などの方法が考えられます。
学校や子どもの実態に合わせて、紙のワークシートを使うのか、ICTを活用するのかを選びましょう。Google Classroomなどの学習支援ツールを活用すれば、写真・音声・動画も交えた多面的な記録が可能になり、ポートフォリオが充実したものになります。
無理のないスモールスタートを意識する
最初から「毎時間、必ず記録しよう」と気負いすぎず、まずは範囲を絞って始めてみることもおすすめします。
たとえば、探究活動や作文指導、単元のまとめなどの場面に限定してポートフォリオを導入すると、無理なく続けられるでしょう。また、記録する内容を「単元の最後に学習を通しての振り返りを書く」「子どもの作品に一言コメントを添える」といったポイントだけに絞って始めるのも、習慣化しやすい方法です。
子どもたちに「何を書くのか」「どう記録するのか」を具体的に示して始めることが、スムーズに取り組むためのコツです。
ポートフォリオから読み取れる力と、評価への活かし方
振り返りカードや作品、子どもの考えを書きためていくワークシートといったポートフォリオは、評価の材料として活かすことができます。
ここでは、ポートフォリオから読み取れる力や、評価材料としての活かし方について見ていきましょう。
ポートフォリオから読み取れる力
ポートフォリオに残された記録からは、学習指導要領で定められた3つの観点別評価のうち、2つの力を見取ることができます。
- 主体的に学習に取り組む態度:学習への意欲や目的意識、振り返りを通して自分の学びを調整しようとする姿勢
- 思考・判断・表現:自分の考えを筋道立てて組み立て、相手に伝えようとする力
振り返りやレポートを通して「どんな気持ちで学びに向かっていたか」「どう考えを深めていったか」といった過程を読み取ることで、日々の評価の手がかりとして活用できます。
評価材料としての活かし方
では、実際にどのように評価に活かしていけばよいのでしょうか。ここでは、いくつかの具体的な記録例と、それに対応する評価の視点を紹介します。
- 振り返りカードや自己評価のコメント欄
例:「もっと○○できるようになりたい」「前より○○がうまくできた」「○○が課題。次は○○を意識して取り組む」
→ 自分の学びを客観的に見ようとする姿勢から、主体性や自己調整力を見取ることができます。(主体的に学習に取り組む態度) - レポートやワークシートの記述
→ 課題に対する考え方や、その根拠をどのように書いているかを見ることで、思考の深まりや表現力を評価する手がかりになります。(思考・判断・表現) - 教師のメモやチェックリスト
→ 活動中の発言や話し合いの様子を観察記録として残すことで、積極性や探究の姿勢といった「主体的に学習に取り組む態度」の裏付けになります。
そして、評価では「成果物の完成度」だけを見るのではなく、
- どのように考えて取り組んでいたか
- 自分の学びや成長を、どのように認識していたか
- 学習課題をどう受け止め、次にどう活かそうとしているか
といった、学びの過程や学習を通した変化にしっかりと目を向けましょう。
成果物だけでなく、そこに至るまでの思考や振り返りも、評価の大切な手がかりになります。
評価材料のためにポートフォリオを作成するときは、「どんな視点で、どのように書けばいいのか」を子どもに分かりやすく伝えましょう。そうすることで、評価もしやすくなります。
ポートフォリオの授業への導入例
ポートフォリオの活用は、日々の授業の中で、子どもたちの学びを記録し振り返る場面をつくることで、無理なく取り入れることができます。
ここでは、実際に授業でどのように取り入れることができるのか、教科別の具体的な活用例を紹介していきます。
国語の単元での読解内容の整理
たとえば、物語文の読解で、ポートフォリオとして、登場人物の気持ちの変化を時間の流れに沿ってまとめることができます。
子どもたちが登場人物の気持ちを整理したり、自分の考えをノートに書いたりしたものを残しておくと、あとから見返すときに、自分なりの読みが深まってきたことに気づけるようになります。
総合的な学習の時間での探究活動
探究活動では、テーマの決定から情報収集、まとめ、発表までの流れをポートフォリオとして記録する、という活用の仕方ができます。
探究の進め方や子どもたちの思考のプロセスを記録していくことで、考えの変化が見えるようになるでしょう。この記録を振り返ることで、「どんなふうに考えていたか」「どんな力が育ったのか」といった姿が見えてきます。
図工や家庭科などの実技教科での作品記録
実技教科では、制作物や調理の様子を写真で残したり、ワークシートに自分の工夫や作品に込めた思いをワークシートに書いたりすることで、ポートフォリオになります。
「こうやって工夫した」「ここを頑張った」といった振り返りを通して、子ども自身が自分の成長に気づくきっかけにもなるでしょう。
ポートフォリオは、特別な取り組みではなく「ちょっとした積み重ね」です。日々の授業の中に、習慣的に自然なかたちで取り入れることができます。
ポートフォリオを活用して、子どもの学びを深めよう
ポートフォリオは、子どもたちの学びのプロセスを記録し、成長を振り返るための有効な手段です。取り入れる目的を明確にし、記録の内容と方法を整理することで、無理なく授業に組み込んでいけるでしょう。
そして、日々の学習記録や振り返りを積み重ねることで、子どもたちの「主体的に学習に取り組む態度」や「思考・判断・表現」といった、観点別評価の材料として活用していくことができます。また、子ども自身が「できるようになったこと」に気づき、自信や主体性を育んでいくきっかけにもなります。
小さな記録の積み重ねが、子どもたちの日々の学びを「見える形」に変えていきます。ポートフォリオを少しずつ取り入れて、子どもが学びを深めていく後押しをしていきましょう。
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