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通知表を見て「これはどういう意味?」「評定をつける仕組みはどうなっているのだろう?」と悩んだことはありませんか?
この記事では、中学校の通知表の見方を詳しく解説します。成績評価の仕組みから、評価・評定アップをサポートする方法までわかりやすくお伝えするので、ぜひ最後までご覧ください。
中学校の通知表の見方
中学校の通知表は、生徒の学習成果や生活態度の評価を記載した文書です。ここでは、通知表の各項目の見方について説明していきます。
教科ごとの評価と評定
中学校の教科ごとの評価と評定は、以下の方法で行われます。
▼5段階評定
通知表では、各教科の学習成果が5段階で評価されます。5が最高評価で、1が最低評価です。評定は、各教科の「観点別評価」の合計から算出されます。
▼観点別評価
各教科には「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点があります。それぞれの観点について、通常AからCの3段階で評価され、Aが最高評価となります。これらの観点別評価を総合して、5段階評定が決定される仕組みです。
※「絶対評価」と「相対評価」とは?
「絶対評価」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
評価・評定を見る際に気をつけたいのは、現在の通知表は「絶対評価」を採用している点です。2002年に指導要領が改訂されるまでの公立中学校では、「相対評価」で成績がつけられていました。相対評価とは、集団の中で児童・生徒を比較して評定をつける方法です。
生徒を成績順に並べて、各評定に振り分けていました。
評定5:生徒数の7%につける
評定4:生徒数の24%につける
評定3:生徒数の38%につける
評定2:生徒数の24%につける
評定1:生徒数の7%につける
そのため、どれだけいい点数を取っても、上位の生徒がいる場合は「5」はつかないことがあり得たわけです。
これに対し「絶対評価」とは、事前に設定された到達目標に対して生徒の達成度を評価する方式です。生徒全員が基準以上の成果を上げれば全員が5を取る可能性もあり、「3」が必ずしも集団の中の真ん中の評価であるとは限りません。集団の中での位置ではなく、生徒個々の学習の達成度が重視されているのです。
出欠の記録
通知表には、出欠の記録が記載されます。
▼欠席、遅刻、早退の日数
生徒が欠席、遅刻、早退した日数が正確に記録されます。
▼病欠や公欠などの理由
欠席や遅刻、早退の理由も明記されます。
例:
- 病欠3日(インフルエンザによる欠席)
- 公欠1日(地区大会参加による欠席)
行動の記録
学習以外の生徒の学校生活における行動も記載されます。記載の対象になるのは、たとえば以下のような内容です。
例:
- 授業態度
- 提出物の状況
- 係活動
- 生徒会活動やボランティア活動への参加状況
- 学校外でのボランティア活動
総合所見
通知表の最後には、「総合所見」として担任の先生からのコメントが書かれます。生徒ががんばったポイントや変化、担任の先生からのメッセージや激励の言葉が記載される部分です。長さや内容は先生によって異なりますが、以下のような内容が書かれていることがあります。
▼生徒の学習面での成長
例:数学の問題解決能力が向上しました。
▼生活面での変化
例:友人関係が広がり、協調性を身につけられました。
▼担任からのメッセージ:
例:〇〇さんは、今学期、数学の授業で積極的に発言するようになりました。今後は、その姿勢を他の教科にも広げ、さらなる成長を期待しています。
通知表に書かれている内容を知れば、どこに注目すればいいかもわかるね!
中学校の成績評価の仕組みは?
では、中学校の成績はどのようにつけられるのでしょうか?
ここでは成績評価が使われる「内申」の仕組みを解説しつつ、成績評価の仕組みをまとめていきます。
内申点の仕組みを知ろう
まず、成績評価が重要視される理由でもある「内申点」について解説します。
内申点は、中学校での学習成果や活動の記録を総合的に評価したものです。中学校での取り組みを総合的に示す資料として、多くの高校入試で内申点を合否判定に使っています。
つまり「成績評価」でいい点数を取ることがそのまま内申対策になり、受験対策にも直結する仕組みになっているのです。
▼内申点の算出方法
内申点は、通知表の評価評定をもとに算出されます。ただし学年ごと・教科ごとに評価の重みを変えるなど、各自治体や学校によっても異なる場合もあるため注意が必要です。
ここでは例として、東京都の内申点の算出方法をご紹介します。
東京都の場合、中学校3年生の成績のみが内申点の対象です。
「主要5教科(国語、数学、社会、理科、英語)の評定の合計」と「実技4教科(音楽、美術、保健体育、技術・家庭)の評定を合計し、2倍」したものの合計、65点が内申の満点となります。
例:
- 国語 4
- 数学 3
- 社会 4
- 理科 5
- 英語 3
- 音楽 2
- 美術 4
- 保健体育 3
- 技術・家庭 5
この場合は主要5科目の合計は「19」、実技科目の合計は14×2で「28」。内申点は「47」となります。
評定について知ろう
内申点に大きく影響してくる5教科評定。どのような仕組みで算出されているのか見ていきましょう。通知表では、各教科それぞれ1~5の5段階評定がついています。1~5の達成内容としては、以下の通りです。
5:十分満足できると判断されるもののうち、とくに程度が高いもの
4:十分満足できると判断されるもの
3:おおむね満足できると判断されるもの
2:努力を要すると判断されるもの
1:いっそう努力を要すると判断されるもの
つい評定の数字に目が行きがちですが、観点別評価(A~C)の結果によって評定が決まります。評定を上げるためには、観点別評価に注目して対策することが大切です。
観点別評価について知ろう
観点別評価では「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」3つの観点で成績をつけています。各観点の達成率の合計で評定がつくため、どれかに偏るのではなく、3観点それぞれでバランスの取れた高評価を目指すことが重要です。効率的に対策できるよう、各観点の評価基準を確認しておきましょう。
知識・技能
学習の基礎となる知識や技能の習得状況をもとに成績をつけています。
▼評価ポイント
- 基本的な概念や原理原則の理解度
- 学んだ知識の実際の活用能力
- 教科特有のスキル(例:英語のリーディング力、理科の実験技能)
▼評価方法の例
- 定期テストの知識問題
- 実技テスト
- 小テストや課題の完成度
思考・判断・表現
身につけた知識・技能を活用した問題解決力、アウトプットの内容を見ています。
▼評価ポイント
- 新しい問題への知識・技能の応用力
- 論理的な説明能力
- 他者の意見の理解と解釈能力
▼評価方法の例
- レポートや論述問題
- 定期テストの記述問題
- グループディスカッションでの発言
- プレゼンテーション
主体的に学習に取り組む態度
学習に対する姿勢や意欲。その中でも、生徒自身が考えて課題を見つけること、PDCAサイクルを回して試行錯誤している姿勢が評価されます。
▼評価ポイント
- 授業への積極的参加(発言、質問など)
- 家庭学習の取り組み状況
- 学習のPDCAサイクルの自律的実践
▼評価方法の例
- 授業中の観察記録
- 提出物の状況(提出率、内容の充実度)
- 学習計画の作成と実行状況
評価の仕方は学校や先生によってばらつきがある
ここで注意したいのは、評価の仕方は学校や先生、科目などによってばらつきがあるという点です。評価基準は同じでも、実際の評価には差異が生じる可能性があります。その要因としては、以下のようなものがあります。
- テストの難易度の違い
- 学年全体のレベルの違い
- 教員の評価スタイルの違い
これにより、同じ評定でも学校によって実際の学力レベルが違う可能性があります。たとえば難易度の高い中学校の「3」と比較的簡単な中学校での「3」では、全国偏差値で見たときに差が生じることがあります。
評価・評定、内申点は1つの指標にすぎません。学校内のテストや評定が高いからといって安心しすぎず、外部のテストを受けるなど、他の集団の中で実力を知る機会を作りましょう。
観点別評価・5段階評定を上げることが、今からできる受験対策にもなります!
勉強面での評価のつけ方
中学校の成績評価は、定期テストの点数に加え日々の授業態度、提出物の質、そして学習への取り組み方など多角的な観点から評価が行われています。ここでは、生徒に効果的に指導するためのポイントを詳しく解説します。
定期テストの点数
定期テストの点数は、成績評価の中でも大きな割合を占めます。教科評定を上げたいと思ったら、まずは定期テストの点数を上げられないかを検討してみましょう。すぐにできる方法としては「効果的な学習計画を立てる」「テスト対策を見直す」といったものがあります。
▼効果的な学習計画の立て方
- テスト2週間前から計画を立てる
- 各科目の学習時間をバランスよく配分する
- 苦手科目には多めに時間を割り当てる
- 1日の学習スケジュールを詳細に立てる
- 科目ごとの学習時間を決める
- 休憩時間も適切に取る
- 復習と予習のバランスを取る
- 既習内容の復習を優先的に行う
- 時間に余裕があれば、次の単元の予習も行う
▼テスト対策の見直し方
- 過去問の活用
- 過去問が手に入る場合、実際に問題を解いてみる
- 時間を計って解き、本番の雰囲気に慣れる
- 間違えた問題の徹底復習
- なぜ間違えたのかを分析する
- 正解までの思考プロセスを書き出す
- 弱点の強化
- 苦手な単元を特定し、重点的に学習する
- 参考書や問題集を活用し、理解を深める
ただし注意したいのは「定期テストの点数が上がっただけでは、評価が上がらない」という点です。日々の授業態度、提出物の質、そして主体的な学習姿勢など、総合的な取り組みが評価につながります。
毎回の小テストや提出物
日々の授業で行われる小テストや提出物は「知識・技能」の観点で評価される重要な要素です。日々の学校生活で、以下のことを徹底してみてください。
- 授業中の小テストで高得点を目指す
- ワークシートにしっかり書き込みをする
- 宿題や提出物を期限内に提出する
小テストは、その日の学習内容をすぐにチェックできるチャンスでもあります。手を抜かずに日々の取り組みを積み重ねることで、評定アップも狙いつつ、学力も定着させられるでしょう。
自分の考えをもち、表現できるか
授業中の発言や議論に積極的に参加し、自分の考えを表現する場面は「思考・判断・表現」の評価に直結します。前に出て発言するのが苦手な場合も、以下のような場面で考えを伝えられれば問題ありません。
- レポートや作文などで、課題に対する自分の考えを示す
- 学んだ知識を実生活や他の学習場面に応用し、問題解決に取り組む
学んだことを生かし表現する場があったときには、意欲的に取り組むことが大切です。
自分から学習に取り組んでいるか
授業に集中して取り組む、疑問点を質問するなど、能動的に学習に取り組んでいるかが評価されます。これは「主体的に学習に取り組む態度」として成績に入ります。
- 自主的に予習・復習を行い、学習内容を身につけようとする
- 学習計画を立て、計画的に学習を進めていく
- 目標を達成するために、自己調整ができる
意欲・関心があるかだけでなく「自分から取り組んでいるか」「試行錯誤して挑戦しているか」も評価の対象になります。自主的に学ぶ姿勢をアピールできるよう、意識するといいでしょう。
定期テストだけでなく、日頃からの学習習慣、授業態度が大切です。
勉強面以外での評価を上げるコツ
評価アップのためには勉強だけでなく、学校生活全般での取り組みが重要です。ここでは、勉強面以外で評価を上げるコツを詳しくご紹介します。
基本的な生活習慣を整える
まず、生活習慣の改善から始めさせましょう。毎日の生活リズムが整っていることが、集中して学習する基礎になります。
規則正しい睡眠リズムを作る
毎日同じ時間に起きて、同じ時間に寝る習慣をつけさせましょう。十分な睡眠を取ることで集中力がアップするほか、遅刻・早退・欠席を減らすことにもつながります。
朝食をしっかり取る
朝食はなるべく取るように指導しましょう。脳にエネルギーを供給することで、午前中の授業にも集中できます。
身だしなみを整える
制服の着こなしや髪型など、清潔感のある身だしなみを心がけさせましょう。校則を守った服装をすることで、先生の印象アップにつながります。
基本的な生活習慣が整うことで、学校からの印象もよくなり、内申点にもプラスになるでしょう。
学校内での活動に力を入れる
学校生活に積極的に取り組む姿勢は、通知表にも記載されます。
委員会活動に熱心に取り組む
生徒会役員、学級委員や図書委員など、クラスや学校の代表を担うような活動に積極的に参加させましょう。担当分野におけるリーダーシップを発揮する機会にもなるでしょう。
掃除や給食当番などの係活動を真剣に行う
自分が担当になった係活動については、最後まで責任をもって取り組ませましょう。当たり前のことを当たり前にこなす姿勢が、先生の目に留まります。
部活動に熱心に取り組む
部活に取り組むことで、技術が向上するだけでなく、チームワークや忍耐力、継続力も身につきます。受験の際には、1つのことに継続して取り組める点を評価する高校もあります。
学校行事に積極的に参加する
文化祭や運動会などの行事には、積極的に参加させましょう。実施委員会に参加して企画や運営に携わる、合唱コンクールで伴奏や指揮に立候補するなど、強みを生かせる場面があるときにはアピールしてみるとよいでしょう。人前に立つ経験値を積めるほか、評価アップにもつながります。
生徒会活動などは内申点にプラスになるものもあるので、できそうなものがあった場合は挑戦するよう指導してみてください。
課外活動に参加する
学校外での活動も、総合的な評価を上げるポイントになります。
ボランティア活動に参加しよう
地域清掃や高齢者施設での活動などのボランティア活動に参加した場合は、先生に伝えて通知表に記載してもらいましょう。社会貢献は自分の経験になるだけでなく、内申における大きな評価ポイントにもなります。
資格取得にチャレンジしよう
英検や漢検など、取得した資格を記載してもらうこともできます。学校の勉強以外のものに自主的に学習に取り組む姿勢、目標に向けて計画的に学べる能力を評価してもらえるでしょう。
大切なのはこれらの活動を「評価のため」だけでなく、自分自身の成長のために行うという意識です。責任をもって取り組むことで、自然と先生や周囲の評価も上がっていくでしょう。
学習以外の項目も内申に影響するので、積極的に取り組むよう指導しましょう!
中学校の通知表を知り、生徒をサポートしよう
この記事では、通知表の見方から成績評価の仕組み、そして評価向上のための具体的な方法を詳しく解説しました。主なポイントは以下の3つです。
- 通知表は教科ごとの評価・評定、出欠記録、行動の記録、総合所見からなる
- 5段階評定は観点別評価(知識・技能、思考・判断・表現、主体的に学習に取り組む態度)によって算出される
- 定期テスト、日々の小テストや提出物への取り組みだけでなく、学校活動への参加なども通知表に反映される
5段階評定や観点別評価の意味を知るだけでなく、日々の学習態度や学校生活全般での取り組みも評価にかかわると知っておくことが大切です。この記事を参考に、生徒へのわかりやすい指導を目指してみてください!
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