反転授業とは主体的な深い学びの実現を目的とし、生徒が事前に予習をしてから授業に臨む授業形式のことです。この記事では反転授業の概要や、反転授業に必要な準備などについて解説していきます!
反転授業とは?
一般的な授業形態では、学校や塾の授業で単元の学習を行い、生徒が授業後や宿題で復習を行う流れになっていました。それに対して反転授業とは、生徒が授業前にあらかじめ予習をしておき、授業ではさらに深い学びを実践することを目的とした授業形態です。
反転授業は生徒が事前に自宅で授業動画などを用いてインプットを行い、授業では学んだ内容の確認やそれを踏まえたディスカッション、問題解決学習などのアウトプットを行います。対面授業とオンライン授業をかけあわせたハイブリッド型授業のうちのひとつとも言えます。
どんな効果があるのか?
反転授業では、生徒に対して以下の効果を期待できます。
- 学習意欲の向上
- 学習成果の向上
以下でより具体的に解説します。
学習意欲の向上
反転授業では、生徒が学習の基礎を理解した状態で授業に臨むため、生徒の学習意欲を高めやすくなります。
授業に知識ゼロの状態で参加するよりも、ある程度予習した状態で参加したほうが、先生の質問や問題に答えるハードルが下がりますよね。質問や問題に答えられた成功体験を積むことで自信を持って授業に参加することができ、より積極的に学習に取り組む姿勢作りに繋がります。
学習成果の向上
反転授業を取り入れると、授業内で学習の基礎的な内容を教える時間を短縮することができるため、より発展的な内容に重きを置くことができるようになります。発展的な内容をより多く取り扱うことができれば、それだけ生徒の学習成果も向上します。
授業内で基礎的な内容を教えることに時間を取られてしまうと、発展的な内容は宿題や家庭学習で挑戦することになってしまいます。そのため、本来は先生の補助や解説を必要とするような難しい問題を自力で解かざるを得ない状況が生まれてしまいます。
反転授業によって、授業内で発展的な問題を解説する時間を確保することができるため、クラス内の学力格差が生まれづらくなり、学習レベルの底上げも期待できるのではないでしょうか。
反転授業が注目されている背景
反転授業が注目される背景には、大きく分けて2つの事情があります。
アクティブラーニングの普及
反転授業が注目される背景の1つ目は、アクティブラーニングの普及です。アクティブラーニングを取り入れた授業は、以下のような活動が授業に組み込まれています。
- ディベート
- 話し合い
- インタビュー
アクティブラーニングはインプット中心になりがちな従来の授業展開とは違い、生徒が主体となってアウトプットすることを目的としているため、反転授業を手法の一つとして取り入れることは効果的と言えます。
ICT環境の整備
反転授業が注目されている背景のもう1つに、教育現場のICT環境の整備があげられます。 ICTを活用することで反転授業の実施が容易になり、その普及が後押しされたからです。
反転授業は、生徒に動画を使って予習をさせるのが一般的な方法です。 したがって生徒側には、動画を視聴する端末が必要で、指導側にも動画を提供するICT環境が欠かせません。
学習効果が高まったという欧米での事例を受けて、日本でも2012年ごろから反転授業は実践されてきています が、当時の教育現場はICT環境が整っておらず、状況的に今ほど教育手法として一般化されていませんでした。
しかし現在は、GIGAスクール構想の掲げる「1人1台端末の整備」がほぼ実現され、 反転授業の実施が当時よりも容易になっています。教育現場のICT環境の発展が後押しとなり、反転授業が一段と注目されるようになったと言えるでしょう。
反転授業のメリット
反転授業を実践することで得られるメリットを、先生側と生徒側の両面から具体的に見ていきましょう。
メリット | |
---|---|
先生 | ・生徒の理解度を把握しやすい |
生徒 | ・自分のレベルに合った学習を受けられる ・より深い学びに繋がる |
表に記載してあるメリットについて、詳しく見ていきましょう。
先生のメリット:生徒の理解度を把握しやすい
従来の授業スタイルでは、先生がより丁寧に単元の説明をしようとすればするほど、生徒に質問や問題を解かせてアウトプットする時間を確保するのが難しくなってしまいます。生徒の理解度を図るために、小テストや単元確認テストを行ったり、宿題の提出状況を見たりしようとしても、忙しい業務の中で時間を確保するのは難しいでしょう。
反転授業では、授業中は生徒からのアウトプットがメインになります。授業中に質問をしたり、生徒同士でディスカッションする時間を設けることで、各生徒の理解度を把握しやすい状況が作れます。理解度を把握することで、よりきめ細やかな指導ができる点がメリットといえます。
生徒のメリット:自分のレベルに合った学習を受けられる
反転授業では、生徒は家庭学習を中心とした自習で勉強するため、それぞれのペースで進めていくことができます。勉強が苦手な生徒は動画を繰り返し視聴することで理解度が高まりますし、理解の早い生徒は予習動画を一度見ただけでポイントがつかめるので、高い学習効率が期待できるでしょう。
生徒のメリット:より深い学びに繋がる
あらかじめ動画やデジタル教材で学習を行う中で、生徒はわからないことを自ら考えたり調べたりします。そのような問題解決に向けた取り組みを繰り返し行うことで、自然と「考える力」「調べる力」が身につきます。
さらに、自分で調べて得た知識を教室内でのグループワークやディベートで活かすことで、成功体験を積み、より多くのことを調べたり考えたりすることに繋がります。
反転授業のデメリット・課題とその対策
反転授業にはデメリットや課題も存在します。これについては、先生側と生徒・保護者側に分けて解説していきます。同時に対策もお伝えするので、実施を検討する先生方はぜひチェックしてください。
デメリット | |
---|---|
先生 | ・授業運営の負担が増える ・予習の習慣化が難しいケースもある |
生徒・保護者 | ・授業の日程にあわせて予習時間の確保が必要 ・保護者のサポートが必要なことがある |
先生のデメリット:授業運営の負担が増える
反転授業を導入すると日々の業務をこなしながら、生徒の予習状況をチェックして発展的な授業の内容を検討する必要があるため、授業準備の負担が増加します。
さらに導入初期には、予習用の動画やデジタル教材を準備する必要があります。
<対策>
宿題を管理するシステムやデジタル教材サービスを利用して、できるだけ各先生方の負担を減らしましょう。
先生のデメリット:予習の習慣化が難しいケースも
反転授業を行う場合には、生徒が予習で単元内容を学習して授業に臨むことが必須になります。従来の授業の受け方が定着している生徒に予習を習慣化してもらうには、多くの配慮がいります。
令和4年度の「全国学力・学習状況調査」によると、家庭学習が「30分未満」または「全くしない」と答えた小学6年生は全体の約15%、中学3年生では約13%いました。この現状を1クラスに反映すると、少なくとも5〜6名の生徒が授業についていけない計算になります。学力格差を生まないためにも、運営には工夫が不可欠です。
【調査内の質問内容】
学校の授業時間以外に、普段(月曜日から金曜日)、1日当たりどれくらいの時間、勉強をしますか(学習塾で勉強している時間や家庭教師の先生に教わっている時間、インターネットを活用して学ぶ時間も含みます)。
時間 | 小学6年生 | 中学3年生 |
---|---|---|
3時間以上 | 11.6% | 10.0% |
2〜3時間 | 13.9% | 25.3% |
1〜2時間 | 34.1% | 34.3% |
30分〜1時間 | 25.6% | 17.0% |
30分未満 | 10.4% | 8.5% |
全くしない | 4.2% | 4.9% |
<対策>
本格的な運営開始までに、予習を徐々に増やして生徒が慣れるまでの期間を設けてください。科目を限定して試験的に運用して、生徒の状況を見ることも有効でしょう。家庭学習の習慣のない生徒は、保護者と連絡を取り合ったり予習の時間を決めて約束をしたりなど、個別の対応も必要です。
生徒・保護者のデメリット:授業の日程にあわせて予習時間の確保が必要
反転授業の予習は、各教科の授業日程により変化するうえ、日々の量も違うためスケジュールの調整や時間の確保が必要です。塾や習い事、部活動で自宅学習の時間が限られているなかで、予習時間を確保することは決して容易ではありません。
<対策>
あらかじめ予習にかかる時間を生徒に提示して、生徒が時間を確保しやすくなるよう工夫しましょう。また科目間で連携して予習が適量になるように調整し、負担が大きくなり過ぎないよう配慮することも大切です。
生徒・保護者のデメリット:保護者のサポートが必要なことも
反転授業で使われる予習教材は動画などのデジタル教材がほとんどです。電子機器やオンライン教材の扱いに慣れるまでは保護者のサポートが必要となる場合があります。電子機器の取り扱いに慣れていないことから、小学校低学年では反転授業の導入が難しいと言われています。
<対策>
一度に全ての教科で導入するのではなく、徐々に導入を進めることが、最も現実的な解決策です。初期の負担を減らすためには、以下のようにイベント的に実施し、回数を制限して慣れさせるのがベストでしょう。
- 授業参観の日に、親子で一緒に実施する
- 特に理解しやすい単元と紐づけて実施する
試験的に実施してみて、電子機器や教材の取り扱いがどの程度負担になるか確認しましょう。
近年は幼いころから電子機器を取り扱う生徒も増えているため、低学年でも慣れればデジタル教材は使えます。初めは「いかに慣れさせるか」を重視して、ゆっくり実施しましょう。
取り入れるために必要な準備
ここからは、実際に反転授業を取り入れるための準備について説明していきます。
予習用の端末やインターネット回線の設備
反転授業はICTツールを用いて「自宅で予習する」ことが基本のため、各家庭でインターネット回線やデジタル端末の準備が必要になります。学習塾や学校現場では、必要な対応が若干異なるため、それぞれのケースごとに説明していきます。
学習塾のケース
学習塾で反転授業を行う際は、端末を「塾から貸し出す」か「各家庭のものを利用してもらう」かのいずれかで対応する必要があります。そのためにまず、各家庭のインターネット回線と端末の確認を行いましょう。
使用するシステムや教材によっては利用可能な端末が限られる場合があるので、端末の世代やバージョンにも留意してください。インターネットを利用できる環境がない家庭では、動画のストリーミング再生が難しいので、必要な動画や教材データがダウンロードされた端末を貸し出す必要もあるでしょう。
学校のケース
GIGAスクール構想で1人1台端末が整備されましたが、端末は学校で保管しているケースも多く、自宅で学習するためには持ち帰らせるか、自宅用の別の端末が必要になるケースもあります。学校側は生徒の実態に合わせて、端末の持ち帰りを指示するなどの対応が必要です。
小・中学生の各家庭のインターネット回線については、すでに文部科学省の通達により、状況が把握されています。インターネット回線のないご家庭には、ルーターの貸し出しを行いましょう。
予習用の動画(デジタル教材)
反転授業の効果を高めるためには、質の高いデジタル教材の準備が必要です。動画の内容や質が良いものであることはもちろん、何年も使用するような場合は最新の学習指導要領の内容から外れていないか留意しましょう。
教材を導入するときは、初期コストと長期的なメリットを比べて判断しましょう。動画教材は予習だけでなく復習や補習にも使えたり、生徒の学習成果を高めることに貢献するシーンも多くあります。
現場の先生が動画を準備するのは現実的ではないですよね…。授業の準備に集中するためにも、既にあるデジタル教材の導入や外部への委託も検討しましょう。
配信や学習を管理するシステムの整備
反転授業は予習を前提として展開されるため、「予習をしてこない生徒への対応」が必要になります。
そこで役に立つのが、塾や学校からの配信や学習を管理するシステムです。動画をアーカイブ化したり、何度も視聴できるようにお気に入り化できたりするシステムを構築できると便利でしょう。また予習動画の視聴状況を把握したり、テストの受験状況や結果を確認できる先生側のシステム整備も重要です。
取り入れたときに失敗しないためのポイント
これから反転授業を取り入れることを検討する方に、これまで述べてきたメリットやデメリットを踏まえて、失敗しないためのポイントをいくつか紹介します。
使用する動画教材を選ぶ
反転授業を成功させるために、使いやすい動画教材を選ぶことが大切な要素になります。
たとえば予習で視聴した動画と、授業で進める内容に差があると、生徒は混乱してしまう可能性もあります。動画を選ぶ際には、授業で使用するテキストやプリントと連動しているほうが望ましいでしょう。その他にも、以下の観点で教材を選ぶことを推奨します。
- 1本あたりの動画が長すぎないか
- さまざまな端末で視聴ができるか
- 再生速度が変えられるか
- 英単語の発音が実際に聞けるか
- 理解を促す図やアニメーションはあるか
生徒にとってわかりやすく、飽きずに取り組める動画教材が反転授業の成功のカギとなります。
生徒や保護者に予習の大切さを理解してもらう
反転授業の効果や予習の重要さを、生徒だけでなく保護者にも周知することも、授業を成功に導く大切なポイントです。反転授業は「予習動画を見ていない」「動画や資料をざっと眺めるだけ」では効果を期待できません。
予習では、新単元の内容をまずは自力で理解することに努め、分からない部分はチェックして自分で調べることになるので、生徒自身が能動的に取り組むことが重要になります。保護者フォローも大切なので、生徒以上に予習の大切さへの理解を深めてもらう必要があります。
生徒のモチベーションを維持する設計にする
反転授業では生徒が能動的に学習に参加することが大切なので、生徒のモチベーションを維持することが必須になります。
モチベーションを維持するために、授業の最初に基礎的な数問の確認テストを実施することも有効です。きちんと予習してきた生徒なら満点を獲れるような難易度に設定することで、生徒は予習の頑張りが報われたように感じるでしょう。
また生徒やグループを指名して、学んだことを説明させる機会を作れば、予習の成果を発揮することができ、予習することに意義を持たせることができるでしょう。
モチベーションを維持するためには「予習してきたことに価値を感じる授業づくり」が重要です。これは先生の腕の見せどころですよ。
予習状況を先生が管理する
反転授業の実施にあたって、生徒や保護者に予習の重要性を伝えることはもちろん、その後の家庭学習の管理も重要です。
オンラインで予習動画を視聴するシステムを採用すれば、ログイン状況や受講状況などの記録で予習をきちんと進められているかを確認できます。授業前に確認して、予習ができていない生徒には、個別に声がけをすることも可能です。
まとめ
オンライン授業の普及に伴い、塾や学校のICT環境や、動画などのオンライン教材は整ってきています。
反転授業を本格的に実施する場合は、記事で説明した導入までの準備をぜひ参考にしてください。あらためて必要な準備物3つを、以下に記載します。
- 予習用のデジタル端末やインターネット回線の設備
- 予習用の動画(オンライン教材)
- 配信や学習を管理するシステムの整備
教材の選び方や管理のポイントを踏まえて準備を進めれば、あとは授業展開の本質的な部分に取りかかれます。反転授業の最大のメリットである「アウトプットに重点を置いた授業」を実現し、生徒の学習効果を最大限に発揮できるように準備をしましょう。
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