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公開日:2024年03月22日  
更新日:2024年03月19日

算数・数学の世界 「素数の話」

素数がいくつ存在するかご存知ですか?答えは「無限に存在する」です。しかし、人類が知っている具体的な素数には限りがあり、また、数が大きくなるほど発見するのが難しくなるため、今現在も人類が発見した最大の素数が更新され続けています。そのような未確定要素を含んでいるにもかかわらず、素数を使った定理や証明は、中・高校範囲でも数多く紹介されます。
この記事は、中学3年生や高校生を教える先生方に向けて、素数にまつわる問題や話題をいくつか紹介しています。授業の導入などにお使いください。

素数とは?

数は、自分自身以下の整数の積で表すことができます。

例えば36という数は……

\(36 = 6 \times 6\)
\(36 = 12 \times 3\)
\(36 = 18 \times 2\)

などのように、いろいろと形を変えることができます。

これらをさらに細かく、

\(36 = 6 \times 6\ = (2 \times 3) \times (2 \times 3)\)
\(36 = 12 \times 3\ = (2 \times 2 \times 3) \times 3\)
\(36 = 18 \times 2\ = (2 \times 3 \times 3) \times 2\)

のように、これ以上分解できなくなるまで細かく分けていくと、最後にはすべて、

\(36 = 2 \times 2 \times 3 \times 3\)

という形になります(1はいくつかけても変わらないので、この場合は考えません)。

このように、すべての数は、これ以上分解できないかけ算の形1通りに表すことができ、このとき現れる「これ以上分解できない数」のことを「素数」、数を素数の積で表すことを「素因数分解する」といいます。素数とは、1と自分自身以外には約数を持たない数のことです(1は素数とはしません)。すべての物質が原子という基本要素からなるように、すべての数は素数という数の要素で構成されているのです。

素数はどれくらいあるか?

結論から先にいうと、素数は自然数と同じように、無限にあるのです。「1と自分自身以外に約数がない」という、ある意味とても限定された条件を満たす数が、無限にあるというのは、ちょっと信じがたい気もします。しかし、これは今から2300年も昔のギリシャ時代、すでにユークリッドが「原論」という本の中で証明しています。興味のある方はご覧になってください。

素数が無限にあることの証明

素数が有限個しかないと仮定する。
その場合、最大の素数が存在することになり、その数を\(P\)とする。
次に、\(2\)から\(P\)までのすべての素数の積に\(1\)を加えた数\(Q\)を考える。

\(Q = 2\times 3\times 5 \times 7 × …… \times P+1\)

このとき、

  1. \(Q\)がもし素数であるとすると……
    \(Q\)は\(P\)より大きい数なので、\(P\)が最大の素数であるということに矛盾。
    よって、\(Q\)は素数ではいけないので、
  2. \(Q\)がもし素数でないとすると……
    \(Q\)は\(P\)以下のいずれかの素数で割り切れるはずだが、\(Q\)の第\(1\)項 \((2×3×5×7×……×P)\)は\(2\)から\(P\)までのどの素数でも割り切れて、それに\(1\)を加えているので、\(Q\)は、\(2\)から\(P\)までのどの素数で割っても余りが\(1\)となる。よって、\(Q\)は\(2\)から\(P\)までのすべての素数で割り切れないので矛盾。

12のいずれにしても矛盾。
これにより、「素数が有限個しかない」という最初の仮定をすると、必ず矛盾が生じるので、この仮定自体があやまりであったことがわかる。
よって、素数は無限にある。

未解決問題

「歴史上最高の数学者」ともいわれるガウス(1777~1855)はかつてこう言いました。

「数学は科学の女王であり、整数論は数学の女王である」

数学の一分野である「整数論」には、問題の意味は小学生にも理解できるが、いまだ誰にも解けていない「未解決問題」がたくさんあります。1995年には、300年以上にわたり数学の未解決問題として君臨した「フェルマーの定理」が証明されて話題になりました。

素数に関係する有名な未解決問題には、「双子素数の問題」や、「ゴルドバッハの予想」などがあります。現在、これらはかなり大きな数までは実際に解かれて正しいことがわかっていますが、数学的にはいまだ未解決なのです。

双子素数の問題

(3,5)、(11,13)のように、差が2でどちらも素数である数のペアのことを、「双子素数」といいます。

100以下の双子素数は以下の8ペアです。

\((3,5) (5,7) (11,13)\)
\((17,19) (29,31) (41,43)\)
\((59,61) (71,73)\)

このような「双子素数」は無限に存在するとほとんどの数学者は信じていますが、いまだ証明されていません。

ゴルドバッハの予想

\(4=2+2、6=3+3、8=3+5、\)
\(10=3+7、12=5+7、…\)

のように、

「4以上のすべての偶数は2つの素数の和で表される」

という説を「ゴルドバッハの予想」といいます。これもほとんどの数学者が正しいと信じていますが、未解決です。

もっと考えてみよう

ある数が素数かどうかを判定するには、その数より小さいすべての素数で割ってみれば判定できます。しかし、その数がとても大きい場合、この方法を用いると計算時間が膨大になってしまい、素数かどうかを知ることは簡単ではありません。

そのため、米・電子フロンティア財団(EFF)は、巨大な素数の発見に対して懸賞金をかけていて、1億桁を超える素数の発見に対して15万ドル、10億桁を超える素数の発見に対して25万ドルの懸賞金を提示しています。実際、1999年に100万桁を、2008年に1000万桁を超える素数がはじめて発見されたときには、電子フロンティア財団から発見者たちに懸賞金が支払われました。これらの素数は、どちらもメルセンヌ数を利用して巨大素数を探しているGIMPS(Great Internet Mersenne Prime Search)という集団が発見しました。メルセンヌ数とは、\(2^{ n }-1\)(\(n\)は自然数)の形で表される自然数のことをいい、\(2^{ n }-1\)が素数ならば\(n\)も素数であることが知られています。

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