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公開日:2024年04月26日  
更新日:2024年04月23日

作文、意見文、小論文の違いと指導ポイント|特徴がわかれば指導方法もわかる

大学入試改革が進行するなか、作文や小論文が課される傾向が強まっています。
今回は、それぞれの文章の種類について特徴を明らかにしながら、伸ばすべき力や指導のポイント、実践例について解説します。作文・小論文指導において児童・生徒をどのように導いていけばよいか、ヒントとしてご活用ください。

「作文」と区別して指導したい「意見文」

入試の設問で「作文」と表記されていても、その大半は「意見文」であることが多いでしょう。「作文」の定義は広いため、意見文も含んで「作文」ということがありますが、区別すると、意見文とは「自分の考えを、根拠を明らかにして筋道を立てて述べた文章」のこと。入試において、受験者の論理的思考力や文章力を見るのに適しています。

ここでは、広い意味での「作文」を、狭い意味での「作文」と「意見文」に分けて述べていきます。

入試のためには「意見文」と「小論文」だけ学べばいいの?

入試のことだけを考えて、「意見文」と「小論文」の特徴がわかればよいのでしょうか。たしかに、現状の力を短期間であと数点上げるためならば、それでもよいかもしれません。

しかし、児童・生徒の文章力や表現力を本当の意味で伸ばし定着させていくためには、作文から意見文、小論文へと、順にステップを積み重ねていくことをおすすめします。小論文は、一朝一夕には書けるようになりません。作文で培った土台の力が意見文に活かされ、意見文で身につけたルールや考え方が小論文につながっていくのです。

作文・意見文・小論文の違い

早速、3つの文章の違いを確認していきましょう。それぞれの特徴について理解を深めることにより、伸ばすべき力や指導のポイントが明確になります。また、指導の実践例についても紹介していきます。

実例で比べる「作文」・「意見文」・「小論文」

まずは、それぞれの文章の例を比べてみてください。同じテーマの文章を比べることで、違いが明確になります。

作文の例

 ミーンミーンミーン、ジジジジジジ……。
「あぁ、暑い!」
 何度言っても涼しくはならないのに、つい、また叫んでしまう。今年の夏は異常な暑さだ。たっぷりと氷が入った麦茶のグラスも、私と同じくらい汗をかいている。氷を見ていたら、お母さんの話を思い出した。北極の氷が溶けて、ホッキョクグマが住む場所をなくしているって。
「最近、電気代が高いんだからね!」
と、お母さんがエアコンの設定温度をうんと高くしたせいで、私は汗だくだ。でも、電気代の節約だけでなくホッキョクグマのためにもなっているのかもしれないと考えたら、この暑さもちょっとがまんできる気がした。

意見文の例

 私は地球温暖化を食い止めるために、家での節電に取り組みたいです。
 節電の方法として、1つ目にエアコンの設定温度を夏は高く、冬は低くしようと考えます。服装で調節するだけでなく、夏にはベランダに打ち水をすると家の中に入ってくる空気の温度を下げることができます。打ち水は朝と夕方に、日陰にするとよいと祖母に教えてもらいました。昔から祖母が実践している、生活の知恵です。そうすると、ゆっくりと水を蒸発させることができるため気温を下げる効果が高くなるそうです。
 (中略)
 このように、私は地球温暖化を食い止めるために、家での節電に取り組みたいです。

小論文の例

 2021年のIPCCによる調査では、地球温暖化の原因が人間の活動にあることは「疑う余地がない」と初めて断定された。私は地球温暖化防止のために、家庭での節電と地産地消に取り組みたい。
 1点目は、家庭での節電に取り組みたい。たとえば、電化製品の電源をこまめに切ること、照明をLEDに切り替えること、エアコンの設定温度を夏場は高く、冬場は低くすることなどを実践したい。これらの取り組みにより、発電の際に排出される二酸化炭素を削減できる。資源エネルギー庁の資料によると、2021年の日本の電力構成は、石炭・石油・天然ガスといった化石燃料をエネルギー源とする割合が約76%を占めている。IPCCの報告書では、気候変動の主な原因が化石燃料であるとされており、家庭での節電がその削減につながると私は考える。
 (中略)
 以上のように、私は地球温暖化防止のために、家庭での節電と地産地消に取り組みたい。

3つの文章に共通するテーマは「地球温暖化」です。ただし、意見文と小論文には必ず「問い」が必要であるため、「地球温暖化防止のためにあなたに何ができるか」という問いを立てました。テーマが同じでも、その内容は大きく異なることが見てとれます。意見文と小論文では、あえて考え(主張)は「家庭での節電」という同じものにしましたが、導入や根拠の説明に大きな違いが出ます。

一目でわかる「作文」・「意見文」・「小論文」

違いについてまとめてみましょう。

  作文 意見文 小論文
目的 テーマに沿って自分が感じたことを表現すること 問いに対し書き手の考え(意見)を根拠や理由とともに示すこと 問いに対し主張を論理的に説明すること
主観・
客観性
主観的であってよい 主観的であってよい 客観性が必須
内容 自身の体験や経験、感想 意見と理由(主観的であってもよい。自身の体験をもとにすることもある) 主張と客観的根拠
表現
技法
効果的であれば使用してよい 使用できない 使用できない
構成 定型はない 双括型(結論・本論・結論) 序論・本論・結論

※「書き手の考え(意見)」と「主張」はほぼ同義ですが、指導対象の学年をふまえて表現を変えています。細かく言葉の意味をとらえると、「主張」には「自分の意見・説を認めてもらえるように強く言うこと」という意味が含まれます。

文章の特徴から見る伸ばすべき力と指導のポイント、実践例

それぞれの文章の特徴がわかれば、伸ばすべき力や指導のポイントが明確になります。作文から意見文、意見文から小論文へのつながりについても見ていきましょう。

作文指導(指導目安学年:小学校低学年〜中学生)

ここでの「作文」は、日記や感想文などの文章にあたります。作文の目的は「自分を表現すること」です。表現の仕方も、構成も、すべて自由。与えられたテーマについて、とにかく自由に、表現力豊かに書くことが大切です。指導者にも柔軟性が求められます。

作文指導で伸ばすべき力

文章表現力を身につけるための第一歩として、「書くことが好きになる」ことが重要です。言葉で表現し、それをだれかに伝える楽しさを知ることが、作文指導の到達目標です。さらに、意見文につなげることも踏まえ、体験して考えたり感じたりすることを言語化する力も伸ばせるとよいでしょう。

作文指導のポイント

「書くことが好きになる」ためには、とにかく自由に書かせること。書いてはいけないことは何もありません(ただし、自分や他者を傷つける内容はNG)。児童・生徒の表現を最大限尊重し、添削する箇所は文法や漢字の間違いなど、最低限にとどめましょう。そして、よい部分をとにかくほめます。

作文指導の実践例

長い文章を書く必要はありません。とにかく楽しく文章を書いて、それが認められる経験を積み重ねることが大切です。楽しく文章を書くためには、本人が書きたいことを書くのが必須条件。「書かされている」という意識を持ってしまうと、途端に作文が面倒なものになってしまいます。

そこで、毎回の授業に短時間で一言日記を取り入れるなどしてはいかがでしょうか。「日記」という言葉にも抵抗感を持ってしまう子どももいるため、「今日のひとこと!」などとタイトルを工夫してもよいでしょう。

また、子どもが書きたいと思えるようなテーマを設けることもおすすめします。「ぷんぷん!」「やったー!」「わくわく♪」「がーん!」など一つの感情にテーマを絞り、最近のできごとについて書かせます。子どもに馴染みのある感情表現から連想させるため、書きたいことが出てきやすくなります。特に子どもたちに人気のあるテーマが「ぷんぷん!」です。「こんなこと書いてもいいの?」と言いながら、書きたいことがどんどんわき上がってきます。

指導者は、その子らしい表現ができたところに花丸をつけて返します。「その子らしい」とは、本人でなければわからない体験、心情が具体的に表されていることです。それが作文、ひいては意見文の説得力につながります。また、体験や心情の言語化を促すために、以下のような質問を加えてみましょう。

「いつ?」「どこで?」「だれが?」「そのときどんな気持ちだった?」「どう思った?」。

これらの取り組みは、意見文の指導と並行しても効果があります。

意見文指導(指導目安学年:小学校高学年〜中学生)

いきいきと五感を働かせて自由に書く作文から一変して、意見文は文章の質が大きく異なります。最も大きな違いは、意見文には「問い」があることです。問いに対する答えを、理由とともに書く必要があります。その理由は主観的であってもよく、多くの意見文で「自身の体験をもとに書くこと」が求められます。ここで活かされるのが、作文で培った力です。日々の生活のなかで体験して考えたり感じたりしたことを自由に表現してきた経験が、ここで活かされます。

意見文指導で伸ばすべき力

理由を説明する力。自身の体験を振り返り、テーマと結びつけて考える力。論理的な構成力(小論文の準備段階として)。

意見文指導のポイント

作文と打って変わって、児童・生徒にとっては自由度のない単調な練習になります。苦手意識を植えつけないためにも、特に初めは難しいテーマを選ばないほうがよいでしょう。日記などを通して作文を書く練習も並行して行うと効果的です。身の回りに起こったできごとや見聞きしたことなどを振り返り言語化する経験を積むと、意見文に活かせる体験の引き出しが増えていきます。

意見文指導の実践例

理由を説明する力を鍛えるために、身近なテーマを設定して理由を書く練習が有効です。「パンとごはん、どちらが好き?」「クリスマスとお正月、どちらが好き?」。このような2択問題から答えを選ばせ、理由を3つ書かせることがトレーニングになります。理由を書くときには、「なぜなら、…からです。」の呼応を徹底させるようにしましょう。

また、構成力を身につけさせるため、初めに基本となる段落構成の型を伝えます。段落構成については、書いていくうちに身につけさせるよりも、初めに知識として伝えたほうが効率的です。何度もその構成で書く経験を通して定着させていくことができます。「問いへの答え」→「理由の説明」→「問いへの答え」の構成で、3段落で書く練習をさせましょう。児童・生徒にとって親しみやすいように、答えと答えで説明をはさむ「サンドイッチ型」と伝えてはいかがでしょうか。

小論文指導(指導目安学年:中学生〜)

意見文と小論文には、共通点が多くあります。問いに対する答えが求められていること、表現技法は使用しないこと、構成の型が決まっていることなどです。唯一にして最大の違いが、客観性です。意見文ではあくまでも「個人的な」意見として伝えるのに対し、小論文では主張を客観的な根拠とともに示す必要があります。客観的根拠とはだれの目から見ても明らかな事実であり、具体的には調査・研究された事実や統計データなどのことです。

小論文指導で伸ばすべき力

論理的な構成力。問いについて考えるための必要な情報を正しく選び取り、読み取り、自分の主張につなげる力。

小論文指導のポイント

意見文で練習してきた型を土台として、小論文に特有の序論の構成を指導しましょう。意見文では初めと終わりの段落に結論を配置しましたが、小論文では初めの段落(序論)に導入を加えます。また、客観的な根拠に基づいて主張を示すために、客観的であるとはどういうことか、情報はどのように調べればよいのかなどを、実践を通して具体的に教えましょう。情報を引用する際には情報源を明記することも習慣づけさせましょう。

小論文指導の実践例

小論文における文章の型の基本は意見文で十分に習得できますので、ここで改めて練習する必要はないでしょう。意見文から小論文への大きなステップは、客観的な根拠をもとに主張を説明する力を身につけることです。また、小論文のテーマは時事問題から出されることが多いため、さまざまな時事問題について常に情報のアンテナを張り、情報を収集して自分なりの考えを持つ練習を普段から積んでおくことが非常に重要です。

最近では、インターネットを利用して情報を調べることがほとんどでしょう。具体的な時事問題について話題に取り上げ、情報端末の正しい使い方や、信頼できる情報とはどのようなものかについて、実践を通して伝えていきましょう。話題作りには、ぜひ「最新時事から考えてみよう!」の記事もご活用ください。

まとめ

ここまで、3つの種類の文章について特徴と指導方法を紹介してきました。それぞれの文章で伸ばすべき力を意識しながら指導することによって、最大限の効果を上げることができます。また、その順番も大切です。小論文への入り口として意見文の練習が有効なことは言うまでもありませんが、その前段階としての作文の練習も大いに役に立ちます。それぞれの特徴を意識しながら、日々の指導にポイントを取り入れてみてはいかがでしょうか。

執筆:NPO現代用語検定協会

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