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「授業では理解していたのに、テストでは忘れている」
「復習しているはずなのに、なかなか定着しない」
そんな生徒の姿に、もどかしさを感じることはありませんか。
学習した内容を定着させるには、一度にまとめて覚えるよりも、時間をあけて同じ内容を繰り返すほうが効果的な場合があります。この学習法は「分散学習」と呼ばれ、心理学や教育学の研究でもその効果が確認されています。
この記事では、
- 分散学習とはどんな勉強法なのか
- なぜ記憶が定着しやすくなるのか
- 授業や宿題に、どのように取り入れられるのか
を解説します。
生徒の効果的な学習内容の定着と、自信アップにつながる指導のヒントにしてください。
「分散学習」とは?「集中学習」との違いを押さえよう
「分散学習」という言葉は聞いたことがあっても、具体的にどのような学習法なのか、授業や宿題の設計にどう活かせるのか、イメージがしにくいという先生も多いのではないでしょうか。
まずは、「集中学習」との違いを整理しながら、分散学習の基本の考え方を見ていきましょう。
分散学習とは、時間をあけて同じ内容の学習を繰り返す方法
分散学習とは、学習の時間をひとまとめにするのではなく、間隔をあけて同じ範囲(内容)を繰り返すことで、記憶の定着を促す学習法です。
人は、学んだ内容をそのまま放っておくと、時間の経過とともに少しずつ忘れてしまいます。そこで、忘れてしまう前に「思い出すタイミング」を意識的につくるのが、分散学習の基本の考え方です。
この考え方の背景にあるのが、19世紀のドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが示した「忘却曲線」です。忘却曲線は、意味のない音節を用いた限定的な条件下で行われた研究で、記憶が時間とともに薄れていくことや、復習によって再び強化されることを示しています。
実際の学習場面では、こうした記憶の仕組みに加えて、学習内容への興味や関心、意味づけの有無も、記憶の定着に影響すると考えられています。生徒自身が「面白い」「理解したい」と感じている内容ほど、記憶しやすくなることが期待できます。
たとえば、実際の学習サイクルで考えてみると、
- 授業で新しい内容を学ぶ
- 翌日の宿題で、同じ学習範囲を解き直す
- 1週間後の小テストで、もう一度同じ内容を確認する
というように、同じ内容を段階的に振り返る流れをつくることも、分散学習の一例です。
このように、分散学習は「思い出す機会」を複数回つくり、短期記憶を長期記憶へと移行させることを意図した学習方法と言えます。
なぜ分散学習は効果的なのか? 記憶が定着する仕組み
分散学習が効果を発揮するのは、脳の記憶の仕組みに沿った学習法だからです。
人間の脳は、一度覚えた情報を思い出すたびに記憶を強化する、という性質があるといわれています。この「思い出す」という行為を繰り返すことで、情報が整理され、長期記憶として安定していくのです。
また、授業で新しい内容を覚えても、1回きりでそのままにしておけば、数日後には学習した内容の多くを忘れてしまいます。しかし、時間をあけて再びその内容を復習する機会をつくると、何度も登場する内容なので、脳が「この情報は重要だ」と判断して、記憶を強く定着させるのです。
さらに、復習する間隔を少しずつ広げていくことで、情報を知識として“使える状態”のまま、長期間維持しやすくなることも分かっています。
このように、分散学習は、学んだことを「一度覚えて終わり」にするのではなく、必要なときに取り出せる力を育てる学習方法だとも言えます。授業にこの考え方を取り入れると、生徒の「やったのに忘れた」という場面を減らし、自信をもって学習に取り組むためのサポートにつながるでしょう。
集中学習との違いと、効果的な組み合わせ方
分散学習とよく比較される学習方法に、「集中学習」があります。
分散学習が「間隔をあけて繰り返す」学習方法であるのに対し、集中学習は「短期間に一気に取り組む」学習方法です。
集中学習は、理解を深めたいときや、短期間で成果を出したい場面で力を発揮します。学習内容をまとめて覚えることで全体像をつかみやすく、情報同士のつながりも理解しやすくなります。
一方で、時間がたつと記憶が薄れやすく、長期的な知識定着にはつながりにくいという課題もあります。そこで、集中学習で理解した内容を、分散学習で繰り返し思い出すように設計することで、学習効果を大きく高めることができます。
分散学習と集中学習は、どちらも生徒の学力アップに欠かせない学習方法です。この2つをうまく組み合わせることで、生徒の「わかった!」を増やしていきましょう。
分散学習のやり方と効果を高めるポイント
分散学習を効果的に取り入れるには、実施のタイミングと内容の工夫が欠かせません。
せっかく授業で理解した内容も、復習のタイミングや学習内容が適切でないと、長期記憶として定着しにくくなってしまいます。
ここでは、「分散学習の効果を最大化するための時間の使い方」と、「分散学習に適した学習内容」について紹介します。
効果を最大化する学習時間とタイミング
分散学習で効果を上げるために最も大切なのは、「いつ復習するか」というタイミングです。
最初の学習直後に復習するだけでなく、少し時間をあけて再度、忘れかけた頃に復習して思い出すことで、記憶がより定着しやすいとされています。
前述の忘却曲線の研究では、学習後の時間経過にともない、一度学んだ内容を再び覚え直すのにかかる時間が増えていくことが示されています。たとえば、学習から20分後には、再学習に必要な時間が当初覚えるのにかかった時間の約42%となり、1時間後には約56%、1日後には約66%にまで増加すると報告されています。(限定的な条件下での研究ではありますが、学習設計の参考として広く活用されています。)
そのため、
- 翌日に軽く復習する
- 3日後に再確認する
- 1週間後にもう一度チェックする
というように、復習の間隔をゆるやかに広げていく方法が、記憶の維持に効果的だとされています。
また、前述のとおり脳は「何度も繰り返しインプットされる情報」を重要だと判断しやすいとされており、学習においても、繰り返し思い出す機会をつくることが長期記憶の形成につながりやすいと考えられています。
復習の際には、1回の学習時間は長くなくて構いません。大切なのは、一度に詰め込もうとせず、短い時間でも思い出す機会を何度もつくることです。学習範囲をこまめに区切りながら学習を進めることで、効率的に要点をインプットでき、分散学習の効果も高まるでしょう。
さらに、生徒が自分で復習のタイミングを管理できるような仕組みづくりも効果的です。
- 「いつ・どの単元を復習するか」を示したおおまかなスケジュール
- 定着確認のための小テストやチェックリスト
などを作成するのもおすすめです。最適なタイミングでの復習を促す先生の声かけや仕組みづくりによって、生徒が「復習するタイミング」をつかみやすくなります。
復習の効果的な進め方については、こちらの記事も参考にしてください。
▶️復習は方法がカギ!最適なタイミングや学習効率UPの秘訣も伝授
分散学習の効果が表れやすい学習内容
分散学習は、特に、暗記や基本技能の定着が大切な学習との相性が良い、と言われています。
たとえば、
- 英単語・熟語
- 漢字
- 計算
- 理科・社会の基本用語
など、習得に繰り返しの確認が必要な内容では、分散学習の効果が期待できます。
ここまでお伝えしてきたように、記憶の定着には「思い出す」という行為が必要です。そのため、ただノートを見返すだけでなく、一度覚えた情報を自分の力で能動的に取り出す練習を、取り入れることが大切です。
短時間で取り組める小テストや確認プリント、口頭でのチェックなどは、分散学習との相性がよい代表的な方法です。
また最近では、ICT教材による、
- 復習が必要なタイミングを自動で提案してくれる
- 苦手な問題を重点的に出題してくれる
といった個別対応が可能な仕組みを活用することもできます。
ICT教材には、生徒一人ひとりの学習履歴や習熟度に基づいた個別最適化で、分散学習の効果を高めてくれるものもあります。うまく活用しながら、生徒の主体的な学習管理をサポートしていきましょう。
塾へのICT教材の導入については、こちらの記事を参考にしてください。
▶️塾でデジタル教材を導入するメリットとは? 注意点と効果的な活用法も紹介
分散学習を行う際の注意点と継続のコツ
分散学習は、正しく取り入れれば大きな学習効果を期待できる方法です。しかし、復習の間隔が適正でなかったり、そのための課題量が多すぎたりすると、生徒にとって負担が大きくなり、続けにくくなることもあります。
ここでは、生徒に無理のない計画づくりのポイントと、習慣化のための仕組みづくりを紹介します。
生徒にとって無理のない計画で進める
分散学習の基本は「少しずつ・繰り返す」ことですが、復習の間隔を詰めすぎたり、課題量が多すぎたりすると、生徒にとって負担が大きくなり、継続が難しくなってしまいます。
おすすめは、前述のとおり、翌日→3日後→1週間後
というように、復習の間隔を少しずつ広げていく方法です。「忘れかけた頃」を目安に具体的な日数に落とし込むことで、生徒も取り組みやすくなります。
授業に取り入れる場合は、授業の冒頭に同じ内容を含む小テストを、間隔をあけて複数回実施する方法が考えられます。授業で扱った重要語句や問題を、習った翌週、さらにその翌週にも重ねて出題することで、自然に分散学習のサイクルをつくることができます。
【例】英単語や文法を覚えるための小テスト
授業の冒頭5分間で実施:習った翌日→3日後→1週間後の3回
家庭学習で取り入れる場合は、生徒の生活リズムを踏まえ、無理なく続けられる量と間隔を設定しましょう。
【例】1つの学習範囲を1週間で分散して復習する流れ
1日目:授業で習った範囲の基本問題を解く
3日目:迷った問題やミスした部分を中心に復習する
5日目:もう一度解き直し、理解が不十分な部分を確認する
7日目:確認プリントやまとめテストで仕上げる
学習計画を立てる際は、先生が一方的に復習の量や間隔を決めるのではなく、生徒と相談しながら分散の仕方を調整することが大切です。「自分で設定した計画だから続けられる」という感覚が生まれることで、無理なく取り組みやすくなり、結果として学習内容の定着にもつながります。
生徒のスケジュール管理をサポートする
分散学習を続けるためには、生徒が自然と復習に取り組めるような仕組みづくりが大切です。やる気や集中力に頼るのではなく、復習のタイミングを生活の中にうまく組み込むことで、習慣化しやすくなります。
たとえば、復習した日をカレンダーに記録したり、学習計画表にチェックを入れたりして、取り組みを見える化する方法があります。「できている」「続けられている」という小さな手応えが積み重なることで、生徒の前向きな気持ちにつながりやすくなります。
また、ICT教材を活用し、生徒に復習のタイミングが自動的に提示される仕組みを取り入れるのも一つの方法です。
こうしたサポートを通して、生徒が「自分でも継続できる」と感じられる環境を整えていくことが、分散学習を根付かせるポイントになります。
Myeトレは、生徒一人ひとりの理解度に応じて学習計画を提案したり、必要な課題を出したりできるICT教材です。無理なく復習を習慣化でき、分散学習の効果的な実施に役立ちます。
▶️「できた!」の先のワクワクが届くICT教材:Myeトレ
分散学習を効果的に取り入れて、確かな学力定着をサポートしよう
分散学習は、同じ内容を忘れてしまう前に繰り返し確認することで、記憶を維持・定着しやすくする学習法です。授業や宿題の中に、学んだ知識を「思い出すタイミング」を組み込むことで、長期記憶として定着しやすくなる効果が期待できます。
また、学習計画を立てる際には、生徒のペースや生活リズムに合わせることが大切です。無理のない頻度で続けられるように仕組み化し、分散による小さな達成感を積み重ねていくことで、生徒にとって勉強が「やらされるもの」から「自分で進められるもの」へと変わっていきます。
分散学習は、特別な学習法ではなく、日々の授業や宿題に少し工夫を加えるだけで取り入れられます。ICT教材なども活用しながら、生徒一人ひとりの「できた!」が増える環境づくりを目指していきましょう。
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