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公開日:2024年04月12日  
更新日:2024年04月09日

学習効率を上げる アウトプット勉強法の重要性

20歳で起業し、学習塾を創業以来、これまで4000人以上の子どもたちに直接指導を行ってきた、一般社団法人 教育デザインラボ代表理事であり教育評論家としても活躍中の石田勝紀氏に、自身の指導方針、学習におけるアウトプット・表現の重要性についてお話を伺いました。

20歳で学習塾を起業 3つの柱を指導方針として掲げる

高校生の頃はプライドが高くて「東大に行くんだ」と周囲に言っていたのですが、受験に失敗して浪人生活を送ることになってしまったんです。いわゆる今のニートですね。考える力がない、読解力のなさが受験失敗の原因だと気付き、浪人中にその力を身に付けることはできたのですが、大学へ行く意味が見出せなくなってしまったのです。そんな時に父親がビルを建てることになり「塾でもやってみたらどうだ?」と言われたことが学習塾を始めるきっかけでした。

正直、当時の私には「子どもたちのために」なんて想いは微塵もありませんでした。ただ、塾を経営して子どもたちの指導をするにあたって高卒のキャリアではまずいだろうと思い、大学に進学し、同時に塾をスタートさせました。そこから私の教育が始まったのです。以来、さまざまな生徒たちと出会ってきましたが、特に勉強が嫌いな子に対するアプローチに力を入れてきました。通知表がオール2の子がオール5になったらすごいじゃないですか。ドラマチックですし、やりがいもある。一生懸命通って来る子どもたちの姿を見るにつれ、私自身に教育への意欲が湧いてきました。そこで、子どもたちの成績を上げるために、いろいろな教え方に取り組むようになったのです。

その中で、詰め込み型の勉強ではなく、「心を高める」「生活習慣を整える」「考えさせる」の3つを柱に指導を行うようになったところ、子どもたちの学力が上がってくることが分かったのです。

まず最初に気付いたのは生活習慣に関してでした。塾に関係することでは、「あいさつ・時間を守る・整理整頓」の3つが重要になります。このうち2つ以上が継続的にできない子は100%成績が上がってはいかない。なぜなら、あいさつは前向きさや主体性に関わるからです。次に時間を守るということに関してですが、2~3分の遅刻を繰り返すのが良くない。一事が万事になってしまうんですね。そういうタイプの子は、何時から何時までは何をやって、という時間のメリハリをつけられないんです。そして3つ目の整理整頓ですが、例えばカバンの中や身の回りを整えられるようになると勉強の情報整理もできるようになる。勉強にも応用が利くんです。なので、塾に来るたびに身の回りのことから整理の方法を教えています。実は、生活習慣と学習の関係については文科省もデータとして公表しているのです。

次に分かったのは「考えさせる」ということ。これは、勉強のやり方や覚え方に関係します。よく学校の先生が「来週テストを行うから覚えて来るように」と言いますが、覚え方や勉強のやり方を教えないですよね。やる気がないから勉強しないというケースもありますが、やり方を知らないからやる気が出ないケースもあるわけです。そういうタイプの子に、私が考えた勉強の「やり方」を指導すると成績が上がっていくようになったのです。

そして最後に分かったのが「心を高める」ということでした。私は子どもたちの自己肯定感を高めるために勇気づける言葉ばかりを喋っているんですよ。「失敗はした方がいいよね。間違った方が勉強になるから、こっちの方が良くない?」とか。子どもたちの気持ちが前向きになっていない、やる気が起きていなければ勉強を教えても吸収しない。心の状態って目には見えないので軽視されてしまいがちですが、子どもたちの心の状態が上向きなのか、下向きなのかを見ることが大切です。もし下向きの状態ならば、上向きになるよう言葉をかけ続ける。そうしなければ嫌いな食べ物を無理やり口に詰め込んでいるようなものだと思うんですよ。

子どもたちの心の状態が上向きか下向きかを知ることが大事

「WHY?」の質問を繰り返すことが子どものアウトプット力を高める

アウトプットには授業内と授業外の2種類があります。授業内では子どもたちにどのようにアウトプットさせるか、問題意識を高めるかを考えます。例えば、私の国語の授業はすこし独特なんですが、子どもたちの語彙力を高めるために読み聞かせを行っているんです。子どもたちに読ませるのではなく、私が読み聞かせる。そうすることで聞く耳が発達する。活字は頭に入らないけれど聞けば分かる状態になるんです。ここで先に読解力を高め、興味を引き出してから子どもたちに読ませるようにしています。そのうえで問題をクイズ形式にするなどの工夫をして、子どもたちの気持ちを引きつけるのです。

しかし、実は授業内よりも、休み時間などでのインフォーマルな会話の方が重要なんですよ。そこで子どもたちの心をガシッとつかむ。インフォーマルな場では、子どもの語彙力を高めるためにあえて難しい言葉を使って喋る。逆に授業内では難しいことを教えているのだから、分かりやすい言葉で教える。ただ、どちらのアウトプットにも共通しているのが、問いかけです。問いかけなければ子どもは喋らないし、アウトプットしません。例えば、「なんで、そう思ったの?」「そういう時、どうする?」とか、基本的には「WHY?」の質問を繰り返し深掘りしていく。そうすることで子どもが自分で考え、つたないながらも言葉を返してくるようになる。大切なのは、子どもの内面を言語化させることなのです。

勉強嫌いな子どもがいなくなる 世の中の実現を目指して、ノウハウのすべてを公開

コロナ禍によって塾でもオンライン授業が一般化していますが、私の耳に届くのは、「オンライン授業ではうまくいかない」という声です。なぜうまくいかないのか。その原因は、これまでオフラインでやっていた授業をそのままオンラインで再現しようとするからだと思うんです。オンライン授業は別物と考えてゼロベースで組み立てていけばオンラインで足りない部分を、どう補うかを考えますよね。そうすると新しいイノベーションが起こる。このようにして生まれた有効なノウハウは、できるだけ早く教育現場全体に広がっていくとよいと考えています。

なお、私も自分が培ったノウハウを隠そうとは全く考えていないです。綺麗事に聞こえてしまうかもしれませんが、私のノウハウは生徒から教えてもらったようなものなんです。それを隠すのはおかしいのではないか、社会還元しなければダメだと思って、6年ぐらい前からすべてのノウハウをオープンにしているんですよ。そうしなければ世の中が良くならないと思うんです。と言いますのも、私が目指しているのは勉強嫌いな子どもが一人もいなくなる世の中を実現することなんです。われわれもそうでしたが、小1から高3まで12年間ぐらい勉強しなければいけないのに、やりたくないことを12年間も続けるのは辛すぎますよね。本来、学校教育はよくできているんですよ。伝え方、やり方さえ間違わなければ子どもたちは勉強を面白いと感じて好きになるはずなんです。そのためには先生が変わらなければいけない。そうすれば子どもも変わる。そんな世の中を実現するために、出し惜しみせずノウハウのすべてをオープンにしているんです。

私のノウハウは生徒から教えてもらったようなものなので、すべて還元したいと思っています

PROFILE | いしだ・かつのり

教育者、作家、講演家、教育評論家、一般社団法人 教育デザインラボ 代表理事。1989年、学習塾を創業。2003年、東京の中高一貫私立学校の常務理事に就任し、大規模な経営改革を実行するとともに教師への指導を実施。そのほか、横浜市教育委員会高校改革委員、文部科学省高校生留学支援金制度の座長を務め、生徒、保護者、教員を対象とした講演会、企業での研修会を年間200回以上行っている。2015年から東洋経済オンラインで「ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?」を隔週で連載。2016年からは全国のママさんを対象に「カフェスタイル勉強会~Mama Cafe」を主宰するなど精力的に活動中。

文・小林保(都恋堂) 撮影・田中秀典
※この記事は2021年12月に掲載されたものを転載しています

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