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意見文、小論文には、こう書くべきと決まっている段落構成があります。意見文、小論文指導の際、その段落構成を基本的な知識として児童・生徒に教えておくことで、論理的な文章を書く力を効率的に高めることができます。今回は、実例をもとに構成の指導法と導入例を解説します。意見文、小論文指導のヒントとしてご活用ください。
構成を覚えることの重要性
前回の記事で解説した通り、意見文と小論文には共通の特徴が多くあります。その一つが、必ず「問い」があることです。与えられたテーマについて自分で問いを設定する場合もありますが、「問い」と「それに対する答え」で構成されていることに変わりはありません。そして、「問い」に対する「答え」を論理的に伝えるために適した段落構成は決まっています。それを文章指導の初めに教えることで、その後の文章力が格段に向上します。
意見文、小論文の構成
意見文と小論文の構成はよく似ています。意見文と小論文では求められるレベルも文字数も異なるため、小論文のほうが複雑になりますが、基本の構成は同じ。小論文指導を目的とする場合でも、基本の構成を身につけるために、まずは意見文で練習することをお勧めします。そこで、今回は意見文を中心として、基本の構成について解説していきます。
意見文の構成の合言葉は「サンドイッチ型」
意見文の段落構成は「双括型」です。児童・生徒にイメージをつかんでもらうために「サンドイッチ型」と教えるとよいでしょう。結論で本論をはさむため、「サンドイッチ」です。しかも、結論はなるべく短く端的にまとめることが求められるため、パンは薄く、具はぎっしりの食べ応えのあるサンドイッチを作ることをイメージさせてください。結論とは「問いに対する答え」。本論ではその答えに至った理由を、体験などをもとに説明します。
SDS法・PREP法との共通点
サンドイッチ型は、ビジネスの場ではSDS法やPREP法としてよく使われます。これらは論理的に話を展開するための手法であり、名称を見ても、SまたはP(いずれも要点を指す)でサンドイッチする、双括型となっていることがわかります。
SDS法
S=Summary(要点)
D=Details(詳細)
S=Summary(要点)
PREP法
P=Point(要点)
R=Reason(理由)
E=Example(例)
P=Point(要点)
意見文では自分の意見を読み手に納得させるために理由を書くことが必須となります。その意味では、意見文の構成はPREP法に近いと言えます。
小論文では、構成はどうなる?
小論文の構成は、初めと終わりに結論を示すという点では意見文と同じです。異なる点は、意見文が結論・本論・結論の双括型であるのに対し、小論文は序論・本論・結論の三段構成であることです。結論が主張のみで構成されるのに対し、序論は導入と主張で構成されます。
導入とはテーマについて問題点を提示する部分で、テーマへの理解を深めて問題提起をしたうえで、主張につなげることでスムーズな流れとなります。導入と主張からなる序論が全体の10%程度の分量になるよう、なるべく端的にまとめます。
意見文を書くための準備・3ステップ
意見文の構成について理解を深めたら、早速テーマを設定して書く練習に移りましょう。清書の段階になるまで、原稿用紙に書かせるべきではありません。原稿用紙に書き始める前の準備を、3つのステップで進めます。このステップは、小論文にも共通します。ここでは、意見文の実際の課題をもとに解説していきます。
課題例「都会と地方、どちらに住みたい?」
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとして、テレワークを採用する企業が増えました。テレワークとは、自宅などオフィス以外の場所で仕事をすることですが、それにともない、地方へ移住する人が増えてきています。中には会社の機能を地方へ移転し、社員の多くが地方へ移住する企業も出てきました。
将来あなたは、都会と地方ではどちらに住みたいですか。どちらか一方を選び、その理由とそこでどのような生活をしたいのかを具体的に紹介してください。
(NPO現代用語検定協会主催/2021年第1回作文検定(意見文分野)より)
ステップ1・問いを理解する
まず、課題文で聞かれている「問い」は何かを理解します。課題文をよく読み、具体的な条件がある場合は必ず確認します。上記の課題例では、次のポイントを確認しましょう。
・将来、都会と地方のどちらに住みたいか(どちらか一方を選ぶことに注意)
・その理由
・そこでどのような生活をしたいのか
ありがちな間違いは、「問い」に直接関係のない文章に引きずられてしまうことです。たとえば、上記の課題例では、初めの文章に引きずられて「テレワークについて問われている」と勘違いしてしまう児童・生徒が少なからずいます。課題文は落ち着いて最後まで読むことが大切です。
ステップ2・考えを整理し、自分なりの「答え」を決める
何について問われているのか理解したら、次はそれに対する自分の考えを整理します。自分なりの「答え」を決めるためには、そのテーマを自分のこととして考えることが大切です。自分の現在の生活について思い起こし、一つ一つの具体的なできごと(体験)のなかから「答え」につながりそうなものを選び取ります。たとえば、上記の課題例では次のような視点で自分の生活を振り返ってみます。
・現在、自分が住んでいるのは都会と地方のどちら?
・現在の生活の好きなところ、好きではないところは?
・自分が知っている都会と地方はどんなところ?
・自分がしたい生活とは?
この時点では、構成は気にせず頭にうかんだ言葉を羅列していくだけで構いません。テーマについて、さまざまな視点で考えを巡らすうちに、自分なりの「答え」が定まっていきます。
ステップ3・構成を意識してメモを作る
「問い」に対する「答え」が定まったら、先ほど解説した意見文の構成を意識しながらメモを作ります。メモには、意見文に取り入れたい内容を箇条書きにしていきます。ここでは、まだ文章にする必要はありません。一通り書き出したら、文字数を考慮し、実際に意見文として書きたいものを選び出します。丸で囲むなどして目立たせるとよいでしょう。ここでは、300字以内を想定し、理由を2つ選びました。200文字の場合は、理由は1つにするとよいでしょう。
メモの一例
「意見文/構成シート」のフォーマットはご自由にご活用ください。
意見文の仕上げの作業
3ステップで準備ができたら、メモを見ながらいよいよ文章にまとめていきましょう。決まった構成に当てはめていく、単純な作業です。
構成を意識して書かれた意見文の実例
「意見文/構成シート」の枠組み通りに書けば、構成を意識した意見文を書くことができます。★(問いに対する答え)と★で理由の説明をサンドイッチします。また、理由の説明は、理由ごとに①→②→③の順序でまとめると、わかりやすい文章になります。抽象的な内容から、より具体的な内容に進む順序です。(★、①、②、③の記号は、「意見文/構成シート」内の記号と照らし合わせてご確認ください。)
意見文の実例に関する注意点
上記の実例は、構成の導入として仕組みを意識させるための例です。そのため、「サンドイッチ型」をより明快に伝えるために、初めと終わりの段落の表現を同一にしています。構成に慣れてきたら、以下の例のように重複しないような表現の工夫を最終段落でするとよいでしょう。
例:このように、私は自然に囲まれ健康的に地方で心豊かに暮らしたいです。
※だたし、表現が重複しないことを気にするあまり初めの段落と異なる内容にならないよう、注意が必要です。
共通する表現を覚えておくと便利
この段階で初めて、接続語などを用いて文と文をつないでいく作業となります。意見文としての構成が決まっていることから、用いる接続語や、文の始まりの表現、締めくくりの表現など、どの意見文にもほぼ共通する流れで書くことができます(上図のアミかけ部分)。これらの表現も含めて構成を教えておくと、メモに書き出した自分の考えや理由、具体例を当てはめていくだけで簡単に意見文を仕上げることができます。
意見文の実例に関する注意点
抽象的な理由の説明から具体例への流れを明快に伝えるために、「たとえば」という接続語を使用していますが、すべての意見文に必須というわけではありません。しかし、「たとえば」と書くことで具体例を用いるきっかけとなるため、導入段階では役に立ちます。
構成を覚えたら、さまざまなテーマで練習しよう
この作業がスムーズにできるようになるには、さまざまなテーマで練習を積み重ねることが必要です。次の例を参考にして、さまざまなテーマに取り組ませてみてください。
意見文のテーマ例
・夏と冬、どちらが好き?
・運動会、春と秋のどちらに行うべき?
・小学生に宿題は必要?
・過去と未来、どちらに行きたい?
まとめ
ここまで、意見文を中心に、小論文にも共通する構成について紹介してきました。正しい構成を知ることにより、自分の考えを枠に当てはめるだけでよいため、論理的な文章が効率的に書けるようになります。意見文、小論文指導に取り入れてみてはいかがでしょうか。
執筆:NPO現代用語検定協会
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