目次
「授業参観で、保護者はなにを見ているの?」
「授業参観のときの注意点は、なに?」
「授業参観で保護者の信頼を得るためには、どうしたらいい?」
このように、授業参観でどんな授業をすればいいのか悩んでいる先生は多いでしょう。
授業参観は、保護者や地域の方に学校の様子を知ってもらうために行うものです。授業参観を通して、参加者は学校での日頃の子どもの様子を知るだけでなく、先生の人柄や指導方針、ひいては学校の教育方針を知り、理解を深める機会にもなるでしょう。
この記事では、授業参観で保護者が見たいことや、授業参観を実施する際のポイントとNG行動について詳しく解説します。ポイントを押さえて、保護者の関心に応えるような授業にしていきましょう!
授業参観の意味と目的は?
授業参観は、保護者や地域の方にとって、学校での子どもたちの様子を知ることのできる貴重な機会です。保護者にとっては、自分の子どもの学校での様子だけでなく、学校生活を共にしている周りの子どもたちの様子も知れる機会になります。開催の具体的な意味と目的について、順番に見ていきましょう。
授業参観とは
授業参観とは、保護者や地域の方々に、学校での授業を実際に見学してもらう機会のことです。運動会や文化祭のような行事とは異なり、より日常的な学習や生活の様子が見られます。また、学校の教育方針を知り、学校教育への理解を深める機会にもなるでしょう。
授業参観の後には保護者会が行われるケースも多いため、先生やほかの保護者との貴重な交流の場でもあります。
学校、先生、保護者、それぞれにとっての意味
授業参観は、学校、先生、保護者、それぞれにとって大きな意味があります。
▼学校
保護者や地域の方に教育の現場を見てもらうことで、教育活動の透明性を高められます。保護者や地域と教育方針を共有し、連携を深める機会にもなるでしょう。
▼先生
授業を観覧した保護者たちの反応や意見によって、自身の指導法を客観的に見直し、改善する機会が得られます。
▼保護者
子どもの学校での様子、学習態度を直接見ることができ、学習への意欲や、普段は目にすることのできない「自分の子どもが学校でどのように過ごしているのか」を見ることができます。また、担任の先生の人柄や、指導のしかたを知る機会にもなります。授業における先生の指導方針から、学校全体の教育方針なども見えてくるでしょう。
このように、授業参観の開催には三者三様の大きな意味があり、保護者が学校や先生方の教育方針を知り、相互理解を深めていくために必要な学校行事だといえるでしょう。
授業参観は、保護者と先生、学校の相互理解や連携のための大切な機会です。
保護者が授業参観で見たいこととは?
保護者が授業参観に参加するのは、言うまでもなく、学校での自分の子どもの様子を知りたいからです。
保護者は「自分の子どもはどのような授業を受けているのだろう」「きちんと先生の言うことを聞いて、まじめに学習に取り組んでいるかな」「友達と仲良くやれているか」など、学校生活に対して少なからず不安や心配な気持ちをもっています。このような不安や心配を解消するために、実際に自分で見て確認しておきたいと考えているのです。
では、保護者は具体的に、どんなところを見たいと考えているのでしょうか。ここでは、授業参観で保護者が見たいポイントを解説します。
子どもの学習態度と成長
保護者は、自分の子どもが授業にどのように参加しているのかを知りたがっています。そのため、授業にまじめに取り組んでいるか、積極的に発言や発表をしているかを特に見ています。
また、授業の内容をどのくらい理解しているのかも、気になるポイントです。子どもが授業についていけずに困っていないか、気がかりな保護者も少なくないはずです。授業参観では、楽しんで授業を受けている様子や、発言や発表をしっかりできている姿が見られると、子どもの成長を感じて安心するでしょう。
先生の指導法と学級運営
先生がどのように授業を進めているのかも、保護者としては特に知りたいポイントです。わかりやすい授業をしているか、全員が取り残されることなく授業に参加できているかなど、先生の指導法が適切であるかどうかを見ています。
また、先生がクラスをどのようにまとめているかも、保護者はよく見ています。普段から子どもたちの言葉に耳を傾けたり、よいところは積極的にほめたりするなど、クラスが明るい雰囲気になるように心がけてみてください。
保護者は、子どもたちへの適切な言葉かけや、雰囲気作りに配慮しながら指導している姿を見て、「信頼できる先生だ」と感じるでしょう。
子ども同士の関係性
自分の子どもの様子だけでなく、子ども同士の関係性も見ておきたいと考える保護者は多いでしょう。授業参観は、子どもたちがどのような関係を結んでいるのかを見せられる、よい機会です。
授業では、グループ学習などを取り入れて互いに協力して学ぶ場面を設定し、子ども同士のコミュニケーションの様子を見てもらうのもよいでしょう。子ども同士で活発に意見を出し合い、協力して課題を解決しようとする姿が見られると、保護者は子どもたちの成長を感じられるでしょう。
学習環境
教室の雰囲気や設備の管理状況など、子どもたちの学習環境が快適かどうかも、保護者は見ています。掲示物がはがれていたり、ロッカーの中がぐちゃぐちゃになっていたりするなど、教室が乱れていると不安に感じてしまいます。普段から各自のロッカーや持ち物を整頓するよう指導し、備品や掲示スペースをきれいに整えておくのはもちろんですが、授業参観前には細かいところまで整備しておくことが大切です。
掲示物は、全員分の作品や発表内容があるか、児童・生徒の名前の間違いや誤字脱字がないかなども、あらかじめチェックしておきましょう。子どもたちと一緒に清掃したり点検して回るなど、教室をきれいな状態にして保護者を迎えましょう。
保護者は学校での子どもの様子だけでなく、日々過ごしている周辺環境もしっかり見ています
授業参観の5つのポイント
保護者は誰しも、自分の子どもが学校で楽しくいきいきと過ごしていることを願っています。ですから、授業参観で目にした子どもの様子に成長が感じられたり、先生がきちんと子どもに向き合ってくれている姿が見られたりすると、保護者は安心して学校を信頼してくれるようになります。保護者に信頼してもらえる授業ができたら、「授業参観は成功した」といえるでしょう。
授業参観で保護者に信頼してもらえるような授業をするためには、以下に挙げる5つのポイントを意識して行うとよいでしょう。
1. いつもの授業どおりの自然な雰囲気作り
授業参観だからといって、気合いを入れて特別な授業をする必要はありません。いつもと違う雰囲気にしてしまうと、子どもたちが戸惑ったり、緊張したりしてしまいます。先生自身も、「せっかくだから、特別な授業をしよう!」と力が入りすぎることで、逆に緊張から普段のよさを発揮できない可能性があります。いつもどおりの指導ができなくなってしまっては、元も子もありません。
保護者が知りたいのは、いつもどおりの学校生活や、普段の子どもの様子です。気負わずに、いつもどおりの授業を行い、日常の学習風景を見てもらえば大丈夫です。
2. 子どもたち全員が参加できるような工夫を
子どもたち全員が活発に参加できるような授業展開を考えることも、大切なポイントです。授業参観に来る保護者は、自分の子どもが活躍する場面を見たいと思っています。すべての子どもに発言や発表などの機会が与えられていないと、保護者はがっかりしてしまうでしょう。
ですから、なるべく子どもたち全員が、発言や発表をできるようにしておきましょう。たとえば、座席の並びや出席番号の順に指名していくと、平等に発言する機会が生まれます。みんなの前で発表することが苦手な子どもがいる場合には、グループ学習で順番に意見を言い合えるようにするなどの工夫で、必ず発言できる場面を作るのもおすすめです。
3. それぞれの子どもたちの良さを発揮できる場面設定
授業参観では、それぞれの子どもたちが長所や得意分野を発揮できるような場面を、意識的に作ってあげるとよいでしょう。保護者にとって、才能や得意分野を生かして活躍するわが子の姿は誇らしく、嬉しく感じられるものです。また、帰宅後に授業参観での活躍を保護者からほめてもらうことで、子どもたちに自己肯定感が生まれます。
そのためにも、日頃から子どもたちの授業内外での様子を観察し、どんな長所や才能、得意分野があるのかを知っておくとよいでしょう。
4. 適切な声かけと指導
授業参観にかぎらず、子どもたちにとってわかりやすい授業を行うことは、学校教育においてとても大切です。そのためには、日頃から、なにをどのように行うのか、明確でわかりやすい説明・指示をするように心がけましょう。言葉による説明だけでなく、お手本を見せたり、写真や映像、実物を見せたりするなど、子どもたちの理解しやすい指導法を工夫することも有効です。
それでも、中には授業の内容がわからないなど、つまずいてしまう児童・生徒も出てくる可能性があります。そのときは、いつもどおりに励ましの言葉をかけたり、あとで個別にフォローを行うことを伝えるなど、子どもたちと保護者双方の心情に寄り添った指導を心がけましょう。
5. 授業の目的と流れの明示
授業の冒頭で、当日の授業の目的(学ぶこと)や流れを明確に示すと、子どもたちも授業の流れや自分たちがやるべきことを把握でき、見通しをもって安心して授業に取り組めます。また、なにを学ぶことが目的なのかを明示することで、授業の終わりに目的と照らし合わせて学習内容を振り返ることもできます。保護者にとっても、授業の目的や流れがわかると心の準備ができ、授業の展開を追いやすくなります。
先生にとっても、なにを学んでもらうためにこの授業を行うのか、どんな授業展開にしていくのかを冒頭で示すことで、時間内での進み具合を都度、確認しながら指導することができます。
このように、それぞれが見通しをもって、安心して授業参観に臨めるようになるでしょう。
限られた時間ですが、日頃の子どもたちの頑張りが自然に保護者に伝わるような工夫をしましょう!
授業参観時の注意点とNG行動
保護者は、限られた機会であるだけに、授業参観時の子どもたちや先生の様子をよく見ています。先生が独りよがりな授業をしていたり、児童・生徒にまんべんなく目を向けていなかったりする様子が見られると、保護者は不安を強めて学校を信頼してくれなくなってしまいます。授業参観で不安を与えてしまうと、その後の保護者との関係も悪くなってしまいかねません。
ここでは、授業参観で保護者に不安を与えてしまいがちなNG行動や、注意点をお伝えします。
せっかく学校まで足を運んでいただくのですから、授業参観を行うときには以下のような点に気をつけて、保護者の信頼を損なわないようにしましょう。
過度に演出された授業にしない
授業参観だからといって、過度に演出する必要はありません。特別な演出を行う必要はなく、普段どおりの授業で問題ありません。むしろ、いつもと違う雰囲気で授業を行うと、前述のように子どもたちは動揺したり違和感を抱いたりして、普段どおりの力が発揮できなくなってしまう可能性もあります。
いつもどおりに、わかりやすい授業をするよう心がけましょう。授業についていけない子が出ないよう、目を配ることのほうが大切です。授業参観は日頃の様子を見てもらう場ととらえ、普段どおりの授業を心がけましょう。
特定の子どもだけに注目しすぎない
どんな理由であれ、先生が特定の児童・生徒だけに注目してしまうのもよくありません。つい目立つ生徒にばかり目が行ってしまうのは、意識しなくても起こりうることかもしれません。しかし、先生が特定の児童・生徒にばかり注意を向けてしまうと、保護者はそれを敏感に感じ取り、先生に対して不信感をもってしまいます。また、子どもたちにとっても不公平感が生まれ、いじめを引き起こす原因になる可能性もあります。
言うまでもなく、授業参観のときだけでなく日頃から、すべての児童・生徒にまんべんなく目を配り、耳を傾け、平等に接するように心がけましょう。
保護者の前で子どもを叱りすぎない
たとえ授業参観時でも、子どもが悪いことをしてしまったときには、先生が毅然とした態度で注意し、必要な指導をすることは大切です。
しかし、過度に叱りつける行為は避けましょう。保護者の前での過度な叱責は、叱られた子の自尊心を傷つけてしまいます。それだけでなく、高圧的な態度は保護者の不安や反感、不信感を招く可能性もあります。その場での指導が必要な悪いことをしてしまった場合でも、子どもの気持ちに寄り添い、なにがよくなかったのかを冷静に伝えましょう。𠮟りつけるのではなく、本人の気持ちを受けとめつつ、諭すように教えるとよいでしょう。
先生のNG行動は、授業参観時だけに限らないもの。日頃から気をつけるといいですね!
授業参観を通じて保護者と連携しよう
このように、授業参観は、保護者や地域の方に学校での子どもたちの学習状況や生活の様子を直接見て知ってもらうだけでなく、先生や学校の教育姿勢を知って理解をいただくための貴重な機会でもあります。
授業参観では、子どもたちの様子だけでなく、先生の指導のしかたや児童・生徒への接し方も見られています。先生が工夫してわかりやすい授業をしていたり、子どもたちに真摯に向き合っている姿が伝わってきたりすると、保護者は安心し、先生を信頼してくれます。
しかし、先生が子どもをきちんと見ていなかったり、独りよがりな授業をしていたりすると、保護者の信頼は得られず、保護者と学校が連携することは難しくなってしまいます。
子どもたちの健やかな成長には、学校と保護者の連携は欠かせません。授業参観を通じて保護者の信頼を得て、教育方針の共有によって連携を深められるような授業への取り組みを、日頃から心がけていきましょう。
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