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熱意を持って指導しているのに、生徒が塾を辞めてしまうのは辛いですよね。しかし退塾という事実から目をそらさず、改善し続ける姿勢が塾の発展には不可欠です。
この記事は「生徒や保護者が、塾を辞めようと思う理由が知りたい」「退塾を防ぐために、なにができるのか知りたい」という方にぴったりな内容となっています。よくある退塾理由と、その予防策や対処法を紹介しますので、最後まで読んでぜひ参考にしてください。
生徒が塾を辞める理由とその予防策・対処法
まずは、よくある退塾理由をチェックし、各ケースへの予防策をお伝えしていきます。また退塾の申し出・相談があった際の対処法も併せてお伝えしますので、退塾防止のヒントにしていただけると幸いです。
成果が出ない
どれだけ慣れ親しんだ生徒でも成果が出なければ、退塾してしまう可能性があります。ほぼすべての生徒や保護者にとって、成績アップこそが通塾する一番の理由だからです。以下のような生徒がいるケースには、常に注意しましょう。
- 成績が下がり続けている生徒
- 偏差値が2〜3ヶ月ほど停滞している生徒
- 特定教科(科目)の成績が極端に悪い生徒
- 1年以上在籍して入塾前と成績が変わらない生徒
予防策
成績が原因で退塾になる生徒を見つけるために、定期的に成績を振り返る機会を設けましょう。定期テストや模試の前後のタイミングで、講師間で情報共有を行い、いち早く気になる生徒に対してアクションを起こすことが重要です。
生徒が受験する全テスト(学校の定期テスト・実力テスト・外部模試など)の結果は、確実に回収し記録しておきましょう。その際テストの得点だけでなく、平均点や順位・偏差値まで正確に把握することが大事です。
成果に関する退塾は、成績のよくない生徒に目がいきがちですが、成績上位層の生徒にも注意が必要です。高いレベルであっても、停滞は不満の種となる可能性がありますよ!
対処法
成果に対する不満から「退塾の意思」を伝えられるケースは、退塾を食い止めるのが非常に厳しい事案です。しかし次の場合には、通塾を継続してもらえる可能性もあります。
- 必要な学習が足りていない
- 授業コースや教材に改善の余地がある
- 成績状況が正しく伝わっていない
入塾からの期間が短い(半年以内)ときは、まだ必要な学習が不足していたり最適な指導が定まる前だったりするので、目にみえる成果を感じにくい場合もあります。しかし、なかには短期間で結果が出ないことに不安を抱く生徒や保護者もいるので、時間が必要なことを丁寧に説明して理解を得ましょう。
また、成績状況を正しく伝えるだけで退塾が止まることもあります。偏差値が上がっているのに得点で成果を判断してしまっていたり、入塾前より成績が上がっているのに直近の成果だけで判断してしまっていたりする場合は、客観的な数字を見せながら説得することが有効です。
授業が合わない
サービスの根幹である授業の進め方や内容が合わないと感じることも、生徒が辞める大きな一因です。塾として授業の質には、常にこだわる必要があります。
予防策
授業に対する不満から退塾を生まないために、その満足度をチェックしましょう。生徒たちに対して以下のようなアンケートをとり、結果を分析することを推奨します。
アンケート項目 | 結果からわかること |
---|---|
授業がわかりやすいか | 講師の説明がわかりやすいか |
授業が面白いか | 知的好奇心を引き出せているか |
集中できるか | 望ましい授業の環境か |
学習に役立っているか | 成績の向上を実感しているか |
続けて授業を受けたいか | 授業・講師が生徒に合っているか |
上記の項目を5段階で評価してもらえば、生徒がその授業をどう感じているのかをクラスごとに集計・分析できます。見えてきた課題を克服できるように指導内容や環境を改善すれば、より満足度の高い授業が提供できるはずです。
アンケートの際は、生徒が正直に記入できる工夫をしましょう。無記名のアンケートにしたり、記入・回収の指示を普段は指導しない講師に任せたりするのも1つの手段です。またアンケートが担当講師のレベルアップに役立ち、ひいては生徒の学習の充実につながるメリットも伝えてください。
集団授業で生徒から高い満足度を得るために、指導のレベルは「クラス平均よりも少し上」に設定しましょう。成績上位層が退屈しないテンポや内容の授業を組み立て、成績下位から中位層に対するケアは、授業以外の時間も使って行いましょう。
対処法
「授業が合わない」という不満から退塾を考える生徒や保護者には、次のように対処できます。
- 授業のクラス(コース)を変える
- 教材のレベルを変える
- 授業の担当講師を変える
まずは生徒や保護者と話をして、ニーズを再確認しましょう。授業のクラス(コース)を変えたり教材を変えたりすることで、不満を解消できるかもしれません。
万が一、授業が「わからない・面白くない・集中できない」という不満が退塾の検討材料になっているなら、非常によくない状況です。他の生徒の退塾も危ぶまれるだけでなく、生徒の募集にも悪影響が出てくるかもしれません。講師の研修や変更を早急に行いましょう。
講師が合わない
「講師が合わない」という理由で、生徒が塾を辞めることもあります。教え方や進路指導に不満があれば、塾に通うモチベーションが下がるのも当然です。また性格や価値観など、講師との人間的な相性が悪いことから不満を募らせるケースもあります。
予防策
「講師の指導が合わない」という不満から退塾を出さないためには、問題を早く見つけて解消することが大事です。問題の早期発見のためには、以下のアクションをとりましょう。
- 担当講師以外が生徒と話して状況をうかがう
- 担当講師以外が保護者に連絡して状況をうかがう
- 定期的にアンケートを実施して分析する
あえて担当講師以外が生徒や保護者に意見を聞くことで、不満の早期発見につながります。しかしそのような機会を多く作ることが難しい場合もあるでしょう。また生徒や保護者が、率直に意見しにくい状況もあるかもしれません。そのため授業が合わないケースで述べた定期的な「アンケート」で不満をあぶり出すことも有効な方法のひとつです。
とはいえ「人間的に合わない」という理由の退塾は予防が難しいので、まずは指導に対するニーズを満たすことに集中しましょう。たとえ性格などの相性が合わなくても成果が出ていれば、退塾には繋がりにくくなります。
「人間的に合わない」と感じさせないためには、不快な印象を与えるリスクは極力減らしましょう。授業外の言動や身だしなみの清潔感なども大切です!塾講師の服装については、別記事の「女性の塾講師はどんな服装がおすすめ?髪型・ネイル・香水などの許容範囲も解説します」で解説しています。気になる方は、ぜひチェックしてください。テーマは女性向けですが、男性講師も参考になるはずですよ!
対処法
退塾前の「講師が合わない」という相談に対する最も有効な対処法は、担当講師の変更です。また集団指導なら、生徒が所属するクラス(コース)を変えることで不満の解消になることもあるでしょう。
もし上記の対応ができない場合は、生徒や保護者を説得するしかありません。担当講師への指導・研修を行い、すぐに改善に踏み出すことを約束して、説得を試みてください。
宿題が多すぎる
宿題を課している塾では、その量の多さが退塾の原因にもなります。宿題には学習内容を定着させたり学習量を確保させたりするメリットもありますが、次のようなデメリットもあるからです。
- 塾での授業外の勉強時間が必要である
- 提出できないことが心理的な負担になる
- 生徒の主体性を抑えつける場合もある
学校と塾の宿題を合わせると量がかなり多くなることもあり、生徒によってはキャパシティを超えてしまう状況もあります。「宿題が終わらず寝られない…」「提出できないから塾を休みたい…」という状況になれば、通塾のモチベーションは下がってしまうでしょう。
また成績上位層の生徒は、主体的に学習できる傾向が強く、宿題よりも自分で考えたメニューを優先したいと考えている可能性もあります。宿題をこなすことに時間を取られる状況は、強いストレスを与えてしまうため注意が必要です。
予防策
宿題の量を不満の原因にしないためには、まず他科目や学校も含めた宿題の総量を把握しなくてはなりません。
そのために、まず生徒や他の講師とコミュニケーションをとって確認をしましょう。また学校行事なども把握し、時期によって量を調整すると生徒の負担を事前に軽減できます。
対処法
宿題が多いことで退塾を考えているケースに遭遇したら、次のように対処しましょう。状況によっては、退塾を止められる可能性があります。
- 宿題の量を調整する
- 宿題の出し方を変える
大半の生徒が宿題をこなせていない場合は、量が多すぎる可能性があります。適切な量の宿題なのか、塾側が見直しましょう。一方で多くの生徒が取り組めている中で、多いと感じている生徒がいれば、時間の使い方や取り組み方を一緒に見直してあげましょう。
家庭学習に取り組む時間帯を決めたり効率のよい学習方法を伝えたりすることで、状況が変わることもあります。また目前の学習に対して「逃げ」の姿勢が見えるなら、指導してあげるのも生徒のためです。「甘え」を指摘し、励ましつつ生徒に努力を促しましょう。
また昨今は生徒の主体性が重視されるため、宿題のポイントを絞り「自由に学べる余白」を残すのもおすすめです。解くべき問題やページなどの最低限度を示し、あとは生徒に選択させる指導をしてみてはいかがでしょうか。
塾の環境がよくない
塾の環境に関することを理由として、退塾を申し出るケースもあります。たとえば以下のような不満を持っている場合は、退塾につながってしまう恐れがあります。
- 周囲の生徒や担当講師のせいで授業に集中できない
- 以前と比べて指導が手薄になった
- 自習しにくい・できない
- 送迎しにくい
- 設備が古い
特に「授業の環境の悪さ」が口コミで広がれば、塾としては痛手ですよね。よって以下では「周囲の生徒や担当講師のせいで授業に集中できない」「以前と比べて指導が手薄になった」という点をメインに、その予防策と対処法を解説します。
予防策
普段から塾長(教室長)や授業を管理する講師が中心となり、全講師の授業状況をケアしましょう。授業は塾にとって最も大事なサービスですので、常に最善の環境を保つ必要があります。
特に生徒が「周囲の生徒や担当講師のせいで授業に集中できない」状況は、即改善が必要です。意欲的に取り組みたい成績上位層の生徒ほど、よい学習環境を求めています。私語をする生徒がいたり雑談の多い講師がいたりすると、通塾に価値を見いだせなくなるでしょう。具体的な予防策は、以下の2つです。
- 塾長や授業を管理する講師が、授業をチェックする
- 塾内のルールを遵守する
学校に校則があるように塾のルールを事前に生徒に伝えることで、正しい過ごし方を示すのも予防策の1つです。塾生が増えるタイミングで、ルールを繰り返し生徒に伝えましょう。
さらに生徒数が増えることで、一人ひとりに目が行き届かない状況を防ぐことも重要です。集団授業の場合は、クラス(コース)に定員を設けましょう。また生徒が増えて「指導が手薄になった」と感じさせないように、以前から通う生徒とは意識的に接点を作ってください。
自習室を開放している場合は、放置しないよう注意しましょう。集中できない状況になっていると、生徒が不満を抱く原因になります!
対処法
退塾前に「授業に集中できない」という相談があった場合は、生徒や保護者に対して即改善することを約束して、通塾の継続を検討してもらいましょう。スピーディーに対処するために、生徒や保護者に以下のことを確認してください。
- どの授業で集中できないのか
- なにが原因で集中できないのか
特定の授業だけ集中できない場合は、授業運営にも問題があります。よって担当講師の指導・研修を約束しましょう。身勝手な行動が見られる他の生徒が原因なら、該当の生徒や保護者にルールを伝えて改善を図ります。そのうえで改善の姿勢が見られない場合は、真面目に取り組んでいる生徒を守るために退塾処分とする判断もやむを得ません。
また以前と比べて「指導が手薄になった」ことを指摘された場合、そのような不安を感じさせてしまったことを謝罪しつつ、不満を解消するために可能なことを提案して退塾の阻止を試みましょう。
塾内の人間関係が変わった
生徒どうしや生徒と塾講師など、塾内の人間関係の変化も塾を辞める動機になることがあります。たとえば、次のような生徒がいるケースは要注意です。
- 仲のよい友人が塾を辞め孤立した生徒
- 生徒どうしで交友関係のトラブルがあった
- 授業担当の講師変更があったクラス・生徒
- 信頼する講師が異動でいなくなったクラス
仲のよい友人や尊敬できる講師がいることが、通塾する際の心の支えになっている場合もあります。新学期など、環境が変わりやすい時期は特に注意が必要です。
予防策
生徒の交友関係などは急に変わることもあり、予防が難しい事案です。よって塾側で対策できることは、それ以外の事前に決まっている変化の影響を最小限に抑えることです。
たとえば講師の異動や変更は、タイミングを考えながら事前に伝えられます。関係する生徒やクラスに通達した際に影響の大きそうな生徒がいれば、できるだけ早くケアしてください。また生徒には、後任の講師に対して期待感を持たせる話をしましょう。異動・変更前の講師や塾長(教室長)だけでなく、他のさまざまな講師からも話してもらうのがベストです。
対処法
人間関係の変化が原因で「退塾を検討している」と、生徒や保護者からの相談があった場合、次のように対処しましょう。ここでは、よくある3つのケースについて説明します。
よくあるケース | 対処法 |
---|---|
仲のよい友人の退塾 | ・気になる生徒と話をして、まずは本音を聞く ・塾を「勉強する場所」と割り切るよう伝える ・孤立しそうな場面で講師が積極的に話しかける |
交友関係のトラブル | ・対象となる生徒どうしを別のクラス(コース)にする ・対象となる生徒どうしの席を離す |
講師の変更・異動 | ・直後は生徒の反応をうかがう ・変更後・異動後の講師を、他の講師たちが褒める ・状況が悪くなれば講師を変える |
友人の退塾や交友関係のトラブルは、適切に対処することで乗り越えやすくなります。時間が問題を解決してくれる可能性もありますが、放置せずに問題が発覚したときの初動を大切にしましょう。
やる気がなくなった
生徒のやる気の低下が、塾を辞める原因になることもあります。万が一、以下のようなケースに当てはまる生徒がいれば、注意が必要です。
- 塾をサボる
- 遅刻・欠席が多い
- 宿題をよく忘れる
- 宿題の取り組み方が悪い
- 授業中にウトウトしている
- テスト前なのに勉強しない
予防策
やる気の変化に関しては、生徒本人からではなく、それを察知した保護者が主導となって退塾を申し出るケースがほとんどです。保護者よりも先にモチベーションの変化に気が付き、生徒対応を行うことが予防になります。普段から講師ができることは、以下の2点です。
- 生徒の変化を察知する
- やる気の維持・向上に貢献する
やる気の低下を見抜くためには、小さな変化に気が付くことが大切です。遅刻・欠席の状況や宿題や授業への取り組み方などを見て違和感を感じたら、すぐにその生徒とコミュニケーションをとり、結果を他の講師とも共有しましょう。
生徒のやる気を維持するためには、小さなことを積み重ねることが大切です。授業や普段のやりとりで、生徒を褒めたり励ましたりして前向きに取り組んでもらう努力をしてください。
授業や面談などで生徒に対して「やる気を高める話」をすることも、塾講師としての大事なスキルです。将来の話をしたり先輩の事例を話したりして、生徒の気持ちを奮起させましょう。
対処法
「やる気の低下」は退塾につながりやすい理由なので、保護者から「ウチの子、どうも勉強に対するやる気が感じられなくて…」と指摘を受けたときは早急に対処方法を考えましょう。ただし事前に相談があるケースも多いため、うまく対処すれば退塾に至らない可能性も十分にあります。
やる気が出ない理由は生徒によって異なるので、話を聞いて原因を特定するしかありません。「どうすれば、やる気が出るのか」を考えるために面談の機会を設け、生徒と一緒に考えるのがよいでしょう。今後の方針を決めたら、保護者にも必ず内容を共有してください。
面談後に経過を伝えることで、保護者はとても安心してくれます。手厚さを演出することも、退塾を食い止めるコツの1つですよ!
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部活や習い事との両立が難しい
部活の拘束時間が長かったり、通塾日が他の習い事と重なっていたりすることで、塾との両立に苦しむ生徒もいます。通塾が体力的・精神的に厳しいと感じれば、塾を辞めるという判断になりかねません。
予防策
部活や習い事との両立の難しさを退塾理由にしないために、あらかじめ補習や振替授業などのサービス体制を提示しましょう。なにかに記載していても、直接伝えないと利用しない生徒や保護者もいます。
また通塾との両立が気になっている保護者からは、入塾を検討する際にも相談があると思います。その際には、確実に対応できる範囲を伝えておきましょう。安請け合いをすると、後でトラブルになることもあるので、できないことを事前に伝えることも重要です。
過去に同じような状況で通塾していた生徒がいれば、事例として伝えることも有効!大変な時期など「踏ん張りどころ」を伝えられれば、安易な退塾を防げますよ。
対処法
「部活や習い事との両立が難しい」という理由で退塾の申し出があったら、次の方法で問題を解決できないか、提案してみてください。
- 授業の曜日・時間帯を変更する
- クラス(コース)の変更を提案する
- 成績状況によっては塾を優先してもらう
保護者と相談のうえ、まずは生徒が通塾しやすくなるように時間やクラスの調整を塾内で検討してみてください。それでも状況の改善が見込めない場合は、生徒や保護者側での調整も提案してみましょう。成績状況によっては通塾の必要性を真剣にアピールし、塾を優先することを打診するのもアリです。習い事の曜日・時間帯の変更、部活動の欠席・早退などに応じてもらえる場合もあります。
また入塾してまだ数ヶ月の時期や新学期などは、生徒が生活リズムに慣れることで問題が解決することもあります。時間が問題を解決しそうなら、生徒や保護者を励ましつつ、辛抱してもらうことも大事です。
推薦入試で内定をもらった
推薦入試を受験し内定をもらった生徒は、塾を辞める可能性が高くなります。目標を達成したことでモチベーションを失い、受験勉強から早く解放されたい気持ちが強くなるからです。
予防策
このケースでの退塾は、生徒や保護者への早くからの指導・アナウンスで防げる可能性を高められます。推薦入試を受験する前までに、以下のようなアクションをとりましょう。
- 学び続ける重要性を伝える
- 受験よりも先の話をする
ポイントは、生徒や保護者の両者に対して「受験の先を見せる話」をすることです。推薦を考えるよりも前の時期から繰り返し話をすることで、その効果は高められます。
合格内定が決まる時期は受験生の追い込みの時期と重なるため、学習の手を緩めることは実力低下につながる大きなリスクとなります。特に大学受験を考える成績上位層の受験生には、そのリスクや学び続けることの大切さを語る必要があるでしょう。塾内に高校生が通える部門がある場合は、生徒募集の面でも大事な局面です。
対処法
十分な予防策をとっていても、内定による退塾の申し出があることは考えられます。申し出があった時点で退塾を食い止めるのは難しいのですが、最後の一手として「内定取消のリスク」に言及し、説得を試みるのもありでしょう。
運動部系の推薦枠で合格内定をもらった生徒なら、進学後の怪我のリスクなども伝えられるでしょう。生徒よりも人生経験が豊富な塾講師なら、あらゆる角度から学びを続ける理由を語れるはずです。
塾の費用が高い
塾の費用が高いという経済的な理由も、塾を辞める判断につながります。通塾には決して安くはない費用がかかるため、その費用に見合う成果が見込めなければ、シビアな判断を下すのも致し方ないでしょう。
予防策
必要な費用をわかりやすく伝え、事前に「見通し」を立ててもらうことが、最善の予防策になります。塾の費用を高いと感じるのは、主に「予期しにくい費用が多い」ことに起因するからです。
保護者は通塾にお金がかかることを理解していますが、細かく学費体系をチェックしているとは限りません。したがって、事前にできるだけ以下の3点が伝わりやすい「費用の一覧表」を配付しましょう。
記載すべきこと | 保護者のメリット |
---|---|
基本的な費用の総額 | 準備すべき最低限の費用がわかる |
オプションの費用 | 特別講座などにかかる追加費用がわかる |
他の学年・コースの費用 | 長期的にかかる費用がわかる |
定期的に競合の費用を把握して、価格を設定し直すことも大事です。指導時間やサービスに対して、妥当だと感じてもらえる価格に調整しましょう。
対処法
学費の高さを理由にした退塾は、家庭状況やその変化などセンシティブな背景にも配慮しながら、慎重に対応しましょう。
ただし、この理由は建前であるケースもあります。説得を試みる際には、他の理由がないか探りながら対処する必要があります。
保護者とオープンに話せる関係性なら、塾の費用が上がる時期の休塾を提案するのもありです。そうすることで、長期的には通塾を継続してもらえる場合もあります。
生徒が辞めない塾作りのポイント
ここでは、簡単に生徒が辞めない塾を作るポイントを紹介します。塾に対する満足度を高め、その評判を高めることに寄与する内容なので、ぜひチェックしてください。
入塾時に現状と努力の必要性を伝える
入塾の際には、できるだけ正確に現在の成績状況を把握して、これからの努力の必要性を生徒や保護者に伝えてください。その推奨理由は、以下の2つです。
- 指導に役立つ
- 入塾の成果を測る比較対象になる
あらかじめ生徒の現状を知ったほうが、適切な指導がしやすくなりますし、目標に到達するための指標を生徒や保護者と共有しやすくなるでしょう。また入塾時の成績は、万が一塾を辞める可能性があるときに、成果を客観的に比べる資料にもなります。
できるだけ実力テスト形式の入塾テストを実施し、学校や模試の成績も提出してもらいましょう。それらを準備しつつ、保護者も加えた三者面談で現状を共有し、入塾してもらうのがベストです。
生徒の様子によっては「塾に入るだけでは、成績が上がらないこと」も伝えましょう。入塾時に覚悟を決めてもらうことが、安易な退塾の防止につながります!
兆候を早く察知する
生徒や保護者が塾を辞める決断をするのは、塾に対して「なんらかの不満」を感じている、もしくは「塾の必要性」を感じなくなったからですよね。よって、それらを早く察知してスピーディに対応することが重要です。
退塾の兆候を敏感に察知する第一歩として、やはり生徒とのコミュニケーションは不可欠です。たとえば普段から生徒への挨拶を大切にしていれば、声がいつもより小さいことに気が付きます。そういった小さな違和感を見過ごさないことが、問題の早期発見につながります。
また退塾が出やすい時期を知れば、先回りして予防策が打てます。予防策の実施に向けて、ぜひ以下の表を参考にしてください。(中学生を対象とした例としています)
月 | 退塾理由 |
---|---|
4月 | 授業・講師が合わない/塾の環境に不満がある/人間関係の変化 |
5〜6月 | 部活や習い事との両立 |
7月 | 成果が出ない/塾の環境に不満がある/やる気がなくなった |
8月 | 宿題が多い/費用が高い |
9〜11月 | 部活や習い事との両立 |
12月 | 成果が出ない/塾の環境に不満がある/やる気がなくなった/宿題が多い/費用が高い |
1〜2月 | 部活や習い事との両立/(3年生)推薦入試での内定(私立合格も) |
3月 | 成果が出ない/授業・講師が合わない/塾の環境に不満がある/やる気がなくなった |
新学期や長期休暇の前後は、特に注意が必要です。成績状況や生徒を取り巻く環境の変化に敏感になりましょう。
情報を共有する
保護者と情報を共有する機会は、積極的に増やしましょう。うまく情報の伝達・共有ができていないと、不満を生んでしまう可能性があるからです。
たとえば夏休みは、通塾時間が変わることもありますよね。生徒が保護者に伝えれば問題ないのですが、全員がきちんと伝えられるとは限りません。もし変更が伝わっていなければ、生徒が授業の開始時間に遅刻したり迎えに来た保護者を長く待たせたりする可能性があり、運営に支障をきたすことも…。
大事な連絡は、メールやLINE・文書など、複数のツールを使って共有してください。事務的な連絡だけでなく生徒の塾内での頑張りや気になる様子も伝えられれば、保護者に安心感を与えたり問題を早期に見つけて解決できるメリットもあります。
同じ教室(校舎)で働く講師との情報共有も重要。生徒の成績状況はもちろん、塾内の様子など気になることがあれば、積極的に情報交換をしましょう。休み時間や業務終了前に時間を設けてルーティーン化すると、生徒のサポート体制を強化できますよ。
約束を守る
約束を破ろうと思って破る塾講師はいないはずですが、日々の忙しさのあまり、うっかり約束を忘れてしまうことはあり得ます。もし約束を破ってしまうことになれば、塾に対する不信感が生まれ、退塾の一因となる恐れも…。日々の運営のなかで次のようなことが起こっている場合は、不満を生むため要注意です。
- 生徒に宿題の提出を求めたのにチェックを忘れている
- 生徒と補習・振替授業の約束をしたのに実施できない
- 保護者と面談の約束をしたのに準備ができていない
- 普段より早く帰すべき生徒がいたのに授業を続けた
気を抜くと、どれも起こりがちですよね。特にイレギュラーな対応が必要なときに、約束を忘れるリスクが高まります。生徒や保護者と話したことは、必ずメモや記録をし、うまくリマインドできる工夫をしてください。自分以外の講師とも情報共有すれば、抜けや漏れが防ぎやすくなります。
「できない約束はしない」ことも、リスク回避のために大事なことです。ニーズに応えることは大事ですが、確実にできることなのかを考えて対応しましょう。
対策しても「塾を辞める」と言われてしまったら?
ここでは、塾講師が退塾に対応するために必要なことを解説します。退塾に向き合うことは、塾講師なら誰でもあることなので、ぜひ参考にしてください。
無理に引き止めない
塾を辞める生徒は、必要以上に引き止めないようにしましょう。辞める生徒や保護者の多くは、塾に対する一定の不満を抱えています。引き止めがしつこいとさらに悪い印象を与え、マイナスな評判を広める可能性を高めてしまうでしょう。
ただし以下のようなケースは、退塾を止めたほうがよいケースでもあります。
- 客観的に本人の努力不足が見られる
- 保護者と生徒本人の意思が異なる
- 次の塾や学習サービスが完全に未定
退塾が生徒や保護者にとってマイナスになるのが確実なら、継続を提案したほうが親切です。一度説得を試みたあと、退塾までの間に再び確認してみてください。
退塾までしっかり指導をする
退塾が決まっても、最後まで丁寧に指導を行ってください。もし指導の手を抜けば、それに気が付いた生徒や保護者が残念に思い、悪い評判を生むかもしれません。また指導の手を抜くことは、現在通っている生徒たちにもマイナスな印象を与えてしまうでしょう。
たとえ生徒が消化試合をこなすかのように授業に参加していても、講師は手を抜いてはなりません。生徒がそんな姿勢で学習に臨まないよう、退塾が決まった際にも「最後まで頑張ろう」などと声かけを続けることが重要です。
その退塾について振り返る
退塾が出たら、振り返る機会を設けましょう。生徒が塾を辞めたことを後悔するだけではなく、原因を深掘りして次の退塾を防ぐのが大事だからです。
退塾生についての情報は、以下のように記録しておきましょう。他の講師と共有しやすい形になっていれば、似たような状況の生徒を見つけて予防策を講じるのに役立ちますよ。
学年 | 中3 |
性別 | 女子 |
部活 | 吹奏楽 |
直近の成績 | 学年15位前後 偏差値55〜57 |
退塾月 | 8月 |
通塾期間 | 2年 |
理由 | 成績 宿題 両立 |
対応の反省点 | 夏のコンクールに向けて部活が本格化して学校と塾の宿題がこなせず、両立を困難に思わせた。また成績は悪くないが停滞気味で、環境の変化を考える要因となった。 |
できるだけ簡潔にまとめるのが、記録のポイントです。あまりに詳しく記入する必要があると、情報の確認に時間を取られて業務時間を圧迫し、作成自体が頓挫してしまう可能性があります。
振り返りは1人で行わず、退塾生と関わっていた講師と一緒に行ってください。分析後に、退塾の予備軍となる生徒がいないかをピックアップして共有する時間もとりましょう。その場で担当を決めて、すぐに対応に動くのが理想です!
「塾を辞める理由」を考えることは運営改善につながる!
この記事では、主に生徒が塾を辞める理由と、それに対する予防策や対処法を解説いたしました。1つでも多くの情報が、あなたの塾の退塾防止に貢献することを願っています。
退塾の反省をしたり予防策を考えることは、生徒や保護者の不満を解消して、満足度を高めるチャンスでもあります。運営のレベルアップのために、この機会にぜひ今一度「退塾防止」について考えてみてください。
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