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近年、独自のコースや特色あるカリキュラムの設置など、高校も多様化しており、「自分に合った高校を選ぶ」ことが、これまで以上に重視されるようになりました。高校を選ぶときは、偏差値や進学実績といった数値だけでなく、校風や学習環境、部活動など、複数の視点から考えることが大切です。
また、中学1〜2年生のうちから興味を持って情報に触れておくことで、高校生活への期待が高まり、学習へのモチベーション向上につながる可能性もあります。
生徒の高校選びを成功させるには、先生が多角的な視点から、生徒や保護者が納得して進路を決められるようにサポートしていくことが欠かせません。
この記事では、生徒一人ひとりに合った高校を見つけるための「高校の選び方」のポイントと、進路面談を進めるうえで意識したい「先生の関わり方」を整理します。学力だけでなく、校風や部活動、通学のしやすさなど、生徒の生活全体を考慮しながら支援し、生徒が前向きに受験に取り組めるようにしていきましょう。
「高校選び」は、生徒の可能性を伸ばす第一歩
受験する高校を選ぶことは、単に「合格できる学校」を選ぶことではありません。生徒が高校でどんな3年間を過ごし、どのような進路を目指していくかを考える重要なステップです。自分に合った志望校を選べると、目標が定まることで中学校生活がより充実し、日々の学習に取り組む意欲を持続しやすくなります。
一方で、「学力に合った高校を、どう選べばよいのか」「公立と私立の違いは、どう考えればよいのか」など、迷う家庭は少なくありません。保護者と生徒の意見が一致しなかったり、情報が多すぎて判断が難しくなったりするケースも見られます。
そのため、先生は生徒や保護者の話に丁寧に耳を傾けながら、「どのような環境なら、生徒が力を発揮しやすいだろうか」という視点で整理していくことが大切です。生徒の状況や希望をふまえ、多面的に考えるサポートが、高校選びの第一歩になります。
保護者の意向が強い場合でも、先生は事実に基づいた「第三者の視点」で関わることが大切です。生徒自身に合った進路を実現していくために、的確な判断に必要な情報を整理・提示していきましょう。
高校選びを成功させるための5つのチェックポイント
生徒に合う高校を一緒に考えていくためには、先生自身がどのような視点で学校を見るべきか、そのポイントを整理しておくことが欠かせません。
ここでは、進路面談の前に先生が確認しておきたい「高校選びのチェックポイント」を、5つにまとめました。これらを事前に押さえておくことで、生徒の考えや希望を引き出しやすくなり、納得感のある志望校選びを支援しやすくなります。
①偏差値と学びのスタイル
志望校を決める際に、まず偏差値を参考にする、という先生も多いでしょう。もちろん偏差値は重要な指標ですが、あわせて「入学後に、その生徒に合った学習の進め方ができるかどうか」を見ることも重要です。
たとえば、授業の進度が速い学校では、自分で計画を立てて効率よく学習をコントロールする力が求められます。少人数制での指導やフォロー体制が整っている学校であれば、先生との距離が近く、親身な指導でじっくりと理解を深めたい生徒に向いています。
また、「英語教育に力を入れている」「理数に特化し、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)などの認定を受けている」といった、学校ごとの強い分野やカリキュラムの特色も、事前に確認しておきたいポイントです。
偏差値だけで合う学校を判断するのではなく、授業の内容・雰囲気や学習スタイルが生徒に合うかをリサーチしておくことが、入学後のギャップを防ぐことにつながります。
②学校の雰囲気
毎日通う学校だからこそ、校風、つまり学校全体の雰囲気や通う生徒たちの雰囲気が合うかどうかは、学校選びの重要なポイントです。明るく活発で一体感のある雰囲気の学校もあれば、生徒個人の自主性を重んじる自由な気風の学校など、特色はさまざまです。
パンフレットの情報だけでなく、実際の在校生や卒業生の声、学校行事の様子など、日常の雰囲気がわかる情報も押さえておくと、生徒にアドバイスしやすくなります。
また、生徒自身が学校見学やオープンスクールで感じた印象は、進路を考えるうえで大切な判断材料になります。面談で話題にできるよう、気になる学校には積極的に足を運ぶことを、生徒に促していきましょう。
③勉強と部活動のバランス
高校生活では、部活動を重視する生徒も多くいますが、どの程度力を入れたいかは、生徒によって異なります。部活動を通して人間関係を広げたい交流重視の生徒もいれば、大会での実績にこだわる生徒もいます。また、部活動よりも、勉強や個人の趣味を中心にしたい生徒もいます。
そのため、部活動の種類や実績だけでなく、その高校における部活動の位置づけや、活動時間・大会スケジュールなど、生徒の日々の生活にどのような影響があるかを確認しておきたいところです。
生徒が無理なく続けられるか、という視点を持ち、進学後の勉強とのバランスを一緒に考えられるようにすると、生徒の高校選びに大いに役立ちます。
④進路実績とサポート体制
高校選びでは、卒業後の進路をどのように支えているかという視点で、学校の進路指導やサポート体制も確認しておきたいポイントです。大学進学率や指定校推薦の数といった数値的な実績だけでなく、受験を意識したカリキュラムやコース分け、具体的なサポート体制の内容まで調べておくことで、生徒に合う学校を判断しやすくなります。
たとえば、進学重視で進学説明会や入試問題対策・小論文指導などの補習、個別面談などが充実している学校もあれば、卒業後の進路に役立つ資格取得のサポートや、就職指導に力を入れている学校もあります。
生徒が将来どのような方向を目指しているのかに応じて、必要な支援体制が整っている学校かどうかを事前にリサーチしておくと、進路相談の際に具体的な提案がしやすくなります。
⑤通いやすい環境かどうか
高校生活を無理なく続けていくためには、通いやすい環境であることも重要なポイントです。通学時間が長いと、朝が早くなったり帰宅が遅くなったりして、体力面で負担を感じる場合があります。
交通機関の混雑や乗り換え、天候の影響など、毎日の通学には想像以上にエネルギーが必要です。志望校を決める前に、通学時間や移動手段、交通費、乗り換えのしやすさなどを具体的に確認しておきましょう。
なお、家から近い高校を選んだ場合でも、部活動や補習によって帰宅時間が遅くなることがあります。夜の生活リズムや睡眠時間の確保も含めて、その高校に通った場合の一日の流れをイメージしながら、生徒や保護者と一緒に、無理のない通学環境かどうかを検討していきましょう。
5つのチェックポイントは、生徒や保護者と共有しておくと、志望校を考えるときの共通の視点になります。事前に認識をそろえておくことで、面談での話し合いがより具体的に進めやすくなるでしょう。
進路面談で生徒と一緒に志望校を絞る3ステップ
進路面談では、生徒や保護者の思いを丁寧に聞き取りながら、学力・校風・高校卒業後の進路希望などの条件をもとに、志望校を整理していきます。
ここでは、生徒が納得して志望校を決めるために、先生に出来る効果的なサポートの3つのステップを紹介していきます。面談で使える質問例もありますので、生徒が「この高校で、こんなふうに過ごしたい」と具体的にイメージできるよう意識しながら、親身にサポートしていきましょう。
ステップ① 生徒の「理想の高校生活」に合う高校をピックアップする
面談の最初は、いきなり志望校名を聞くのではなく、生徒に理想の高校生活をイメージしてもらうところから始めましょう。
「高校でどんなことに取り組みたいか」「どんな雰囲気の学校が自分に合いそうか」など、生徒の考えている姿や希望を自由に話せるように促すことで、勉強、部活動、人間関係など、生徒が重視しているポイントが自然と見えてきます。
そのうえで、「このタイプの学校が合いそうだね」など、希望に沿ったいくつかの候補を示すと、生徒自身も考えを整理しやすくなります。
この時点では、学力レベルよりも「どんな高校生活を送りたいか」といった方向性を重視し、生徒が希望を実現しやすい学校をピックアップしていくイメージです。
【ポイント】
- 志望校名を聞く前に「理想の高校生活」を引き出す
- 生徒の価値観(高校で力を入れたいこと、重視する条件など)を言語化してもらう
- 生徒の具体的な希望をもとに、合いそうなタイプの学校をいくつか示す
【質問例】
- 「高校では、どんなことにチャレンジしたい?」
- 「部活動は続けたい? それとも勉強を中心にしたい?」
- 「どんな雰囲気の学校が自分に合うと思う?」
- 「今、気になっている学校はある?」
ステップ② 学力や希望条件を踏まえて志望校を整理する
生徒の希望する方向性が見えてきたら、次は実際の学力や条件を踏まえて志望校を整理する段階に移ります。ステップ①で挙げた学校を、学力・内申・通学条件などと照らし合わせながら、
- 挑戦校(現状の学力より少し上で、努力すれば十分に合格を狙えるレベル)
- 実力相応校(現在の学力・内申で合格可能性が高く、無理なく目指せるレベル)
- 安全校(安定して合格圏に入っており、安心して受験できるレベル)
の3段階に整理しておくと、この後の比較がしやすくなります。
この段階で大切なのは、生徒の現状ではレベル的に「難しい」学校でも、そのように伝えるのではなく、どうすれば可能性が高まるかというポジティブな視点で一緒に考える姿勢です。「あと偏差値がこのくらい上がれば届きそう」「この教科を重点的に取り組むと、合格に近づけるね」というように、目標への道筋を具体的に示すことで、生徒自身も見通しを持ちやすくなります。
一方で、安全圏の学校も、安心して選べる選択肢として確保しておきたいところです。
【ポイント】
- 現状と志望校とのギャップを具体的に把握し、生徒と共有する
- 「どうすれば希望の高校に届くか」を一緒に考える姿勢を示す
- 挑戦校・実力相応校・安全校の3段階に分けて候補を整理する
【質問例】
- 「今の成績と照らし合わせて、確実に届きそうな学校はどこだろうね?」
- 「少し背伸びしたい学校と、ここなら安心と思える学校を分けて考えたら、どこになるかな?」
- 「通学時間や部活動などの希望条件も合わせて見ると、無理なく通える範囲はどの辺だろう?」
ステップ③ 志望校を比較して、生徒と最適な選択肢を見つける
ステップ②で「挑戦校」「実力相応校」「安全校」の候補が整理できたら、次はそれぞれの学校を比較し、生徒に合う選択肢を見つけていく段階に移ります。
先生は生徒の代わりに決めるのではなく、生徒自身や保護者が納得して「この高校に通いたい・通わせたい」と思える学校を選べるように、支援する立場で関わります。
リストアップした高校を比較するときは、学力面だけでなく、
- 授業の方針・雰囲気やカリキュラム、学習の進め方
- 部活動や学校行事の特色
- 通学時間や入学後の生活リズム
など、生徒が高校生活を無理なく続けられそうか、という視点も大切です。
また、学校見学やオープンスクールでの印象、先生や先輩から聞いた話をもとに思うことなど、生徒や保護者がその学校に対して感じたことを再確認することも、納得のいく選択につながります。
【ポイント】
- 挑戦校・実力相応校・安全校の3層に整理した候補を比較して整理する
- 「どの学校なら自分らしく過ごせそうか」を軸に話す
- 生徒が自分の言葉で「志望理由」を説明できる高校を選べるよう支援する
【質問例】
- 「見学してみて、印象がよかった学校はどこ?」
- 「A校とB校では、どちらの校風が自分に合いそう?」
- 「もしここに挙げた学校全部に合格したら、一番どの学校に行きたいと思う?」
- 「ここなら3年間楽しく通えそう、と感じる学校はどこ?」
具体的な志望校選びのサポートだけでなく、日頃の進路相談でどのようにサポートを進めていくかも確認したい場合は、こちらの記事も参考にしてください。
▶️中学生との進路相談のコツは?効果的な指導のヒケツを徹底解説
https://manabitips.kyo-kai.co.jp/article/interact/post-2942
志望校を決めるまでの年間スケジュールと、先生の支援ポイント
高校受験に向けた進路選択は、段階的に進んでいきます。特に中学3年生になると、春から冬にかけて、生徒の意識や行動が大きく変わっていきます。
生徒が焦らずに志望校を整理・決定できるよう、先生が各時期の動きを見通し、最適なタイミングで必要な情報を提供したり、適切な声かけをしたりすることが大切です。
ここでは、中1・中2のうちにしておきたい準備と、中3での年間の流れを時期ごとに整理し、それぞれの場面で意識したい支援のポイントを紹介します。
中1・中2のうちにしておきたいこと
本格的に高校受験を意識し始めるのは中学3年生というケースも多いですが、中1・中2の段階でもできる準備があります。この時期は、将来の進路を具体的に決めるというよりも、高校に関する情報に触れ、興味の幅を広げる時期と位置づけるとよいでしょう。
この段階で先生に出来る支援としては、次のようなものがあります。
- 学校案内パンフレットや公式サイトなどを通して、各高校の特色に触れさせる
- 部活動・学校行事・校風など、生徒が関心を持ちやすい情報を先生が紹介する
- オープンスクールや説明会の開催時期を把握し、生徒が参加しやすい機会を確認しておく(※中3限定の場合もあるため事前確認が必要)
【先生の支援ポイント】
- 生徒が高校選びを考え始めるきっかけになるよう、基本情報を共有する
- 生徒の興味や得意分野を知り、どのような高校が合いそうか大まかな方向性をつかむ
- 保護者に高校選びにつながる情報を伝え、家庭での話題づくりにつなげる
中1・中2のうちから高校の情報や雰囲気に触れておくことで、中3で志望校を決める際の基盤となり、進路面談もスムーズに進めやすくなります。
春〜夏(中3)|高校の情報収集とオープンスクール参加
中3の春〜夏は、各高校の基本情報を整理し、秋以降の説明会に向けて本格的に準備を進める時期です。パンフレットや公式サイトを確認し、学校の特色・募集概要・学科構成など、基礎的な情報に触れておくことで、後の比較がしやすくなります。
また、オープンスクールは夏に実施される学校もありますが、開催時期は学校によって異なります。生徒が希望する高校の実施日に確実に参加できるよう、対象学年や日程、申込方法などを事前に確認し、生徒が参加しやすい機会を把握しておくことが、先生に求められる支援といえます。
【先生の支援ポイント】
- 学校ごとの説明会・オープンスクールなどの最新情報を整理し、生徒と共有する
- 生徒の「どんな高校生活を送りたいか」という方向性を再確認し、情報収集の方針を明確にする
- 保護者と受験関連情報を共有し、親子での積極的な参加への後押しができるよう促す
春〜夏の段階で基本情報を押さえておくことで、秋以降の説明会参加や志望校の絞り込みがスムーズに進みます。
秋(中3)|志望校の絞り込みと出願準備
秋は、多くの高校で学校説明会が実施される時期です。入試制度や出願条件、教育方針などの詳細が示されるため、志望校を絞り込むうえで重要な情報が得られます。
この時点での成績や内申、通学条件などをふまえて「挑戦校・実力相応校・安全校」の位置づけを明確にし、推薦入試・一般入試といった受験方法の検討も最終段階に入ります。また、志望理由書の作成や面接準備を早めに始める学校もあるため、各校のスケジュールをもらさず把握しておくことが重要です。
【先生の支援ポイント】
- 学校説明会で確認したい内容や、比較するときの視点を事前に生徒・保護者と共有する
- 前述の3ステップの②で整理した志望校群をもとに、生徒の方向性を明確にする
- 保護者との三者面談を通して、保護者の意向と生徒の希望を整理・調整する
この時期の情報収集が充実していると、志望校の決定や出願準備がスムーズに進みます。
冬〜受験直前(中3)|出願・面接練習・本番に向けた準備
冬から受験直前にかけては、出願手続きや面接練習、試験本番に向けた準備が中心になります。過去問演習や模試を通して生徒を実戦形式に慣れさせ、各校の出願書類を整えるなど、本番を見据えた行動が先生の重要な支援となります。
【先生の支援ポイント】
- 面接練習や志望理由書の確認など、生徒が安心して受験本番に臨めるよう準備をサポートする
- これまでの取り組みを振り返り、生徒の努力を言葉で認めて励ます
- 保護者に向けて、生徒の体調管理や当日の流れなど、実務的なポイントを共有する
受験シーズンが本格的に始まる前の段階で、必要な準備を整理しておくことで、生徒が落ち着いて試験本番に向かえるようになります。
高校ごとに説明会や出願の時期は異なるため、先生の情報収集力は受験成功のための命綱とも言えます。最新の募集要項や公式サイトで日程を確認し、いつでも生徒や保護者に正確な情報を伝えられるようにしておきましょう。
生徒が納得して決められる、後悔しない「高校選び」を支援しよう
高校選びは、生徒がこの先の3年間をどのように過ごし、どのような将来像を目指していくかにつながる大切な選択です。
偏差値や進学実績だけでなく、「生徒が、どのような高校生活を送りたいのか」「どんな環境なら、生徒が力を発揮しやすいか」といった視点を持ち、生徒の希望に寄り添いながら、一緒に方向性を固めていくことが重要です。
先生が生徒の考えや不安を丁寧に聞き取り、必要な情報を客観的に示すことで、生徒は見通しを持って自分自身で選択しやすくなります。進路指導は、先生が答えを与えることではなく、生徒が自ら納得して進路を決定できるように支えるプロセスでもあります。
生徒が納得して志望校を決め、前向きに受験に臨めるよう、寄り添いながら支援していきましょう。
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