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公開日:2024年10月18日  
更新日:2024年10月17日

学校でできるユニバーサルデザイン徹底解説!~導入のポイントから、環境づくり・授業アイデアまで~

近年、教育現場でも注目を集めているユニバーサルデザイン。すべての児童生徒が平等に学べる環境を整えることは、多様性を尊重する現代社会において重要な課題です。

本記事では学校でのユニバーサルデザイン導入について、その基本概念から具体的な実践方法までわかりやすく解説します。

そもそもユニバーサルデザインとは?

ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、障害の有無に関係なく、誰もが使いやすいデザインを目指す考え方です。1985年にノースカロライナ州立大学のロナルド・メイス氏によって提唱されました。

ユニバーサルデザインには、以下の7つの原則があります。

  1. 公平性:誰もが公平に使用できること
  2. 柔軟性:多様な使用方法に対応できること
  3. 単純性:直感的で使いやすいこと
  4. わかりやすさ:必要な情報がすぐに理解できること
  5. 安全性:危険につながらないこと
  6. 省力性:少ない労力で効率的に使用できること
  7. スペースの確保:適切な大きさと空間があること

これらの原則は建築や製品設計だけでなく、教育現場にも適用できます。学校でユニバーサルデザインを取り入れることで、すべての児童生徒が等しく学習機会を得られる環境を作り出せるのです。

ユニバーサルデザインって、特別な人のためだけのものではないのです。みんなにとって使いやすい環境を作ることなんですよ。

ユニバーサルデザインを取り入れた教室環境づくり

では、具体的にはどのように学校現場にユニバーサルデザインを取り入れればよいのでしょうか。ユニバーサルデザインの考え方を学校に導入する際、まず取り組むべきは教室環境の整備です。すべての児童生徒が快適に過ごせる空間づくりは、学習効果を高める上で重要です。

ここでは、ユニバーサルデザインを取り入れた教室環境づくりのポイントについて見ていきましょう。

座席の配置

座席の配置は、児童生徒の学習に大きな影響を与えます。ユニバーサルデザインの観点から考えると、全員が移動しやすい間隔を確保することが重要です。たとえば、車椅子を使用する児童生徒がいる場合は通路幅を広めに取り、自由に移動できるようにします。また視覚や聴覚に困難がある児童生徒のために、黒板やスクリーンが見やすい位置、教員の声が聞き取りやすい位置に座席を配置することも大切です。

照明

教室内の照明は、黒板やスクリーンを見やすい明るさに設定してください。必要に応じてカーテンやブラインドで光量を調整できるようにしましょう。また、視覚に困難がある児童生徒のためにスポットライトなどの補助照明を用意することも一つの方法です。

音響

教室の音響環境は、とくに聴覚過敏の児童生徒に配慮する必要があります。反響を抑える工夫としては、カーペットや吸音パネルの設置が効果的です。また、窓や廊下からの外部騒音を軽減するために防音対策を行うことも検討しましょう。必要に応じて、個別の児童生徒にヘッドホンやイヤーマフを提供することも有効な対策となります。

視覚的なサポート

視覚的な情報は、多くの児童生徒のサポートに役立ちます。時間割や学習内容を示す掲示物、スケジュールボードの活用が効果的です。児童生徒にとって、見通しを立てる助けとなるでしょう。

掲示物は、文字の大きさや色使い、フォントに配慮し、誰もが読みやすいデザインを心がけてください。ピクトグラムなどの視覚シンボルを活用することで、言語理解に困難がある児童生徒も含めた情報共有ができます。

児童生徒の目線になって自分の教室を見渡して、“もっと過ごしやすくするには?”と考えてみてください!

ユニバーサルデザインを取り入れた授業づくり

授業自体にもユニバーサルデザインの考え方を取り入れることで、より多くの児童生徒が学びやすい環境を作れます。ここでは、ユニバーサルデザインを取り入れた授業づくりのポイントについて詳しく解説します。

感覚を活用した指導

児童生徒の学習スタイルは多様です。視覚、聴覚、触覚など複数の感覚を使う教材を活用することで、より多くの児童生徒の理解を促せます。たとえば歴史の授業で年表を使用する際、重要な出来事の解説に動画を使用したり、立体的な模型を用意したりすることでさまざまなスタイルに対応できます。

また、体験型の学習活動を取り入れることも効果的です。たとえば理科の授業で植物の成長過程を学ぶ際、実際に植物を育てる活動を通じて観察や記録のスキルを養えます。

ICTの活用

タブレット端末やデジタル教材を活用することで、学習支援の個別対応を効率的に行えます。たとえば読み書きに困難がある児童生徒に対して、音声読み上げ機能や音声入力機能を活用し学習へのハードルをなくすことができます。

またデジタル教材を使用することで、児童生徒の理解度に合わせて学習内容や進度を調整できるのも魅力の1つです。各教科の問題演習アプリを使用すれば、児童生徒の解答に応じて難易度を自動調整しつつ学習を進められるでしょう。

授業で使用する学習材への工夫

授業で使用するスライドは、すべての児童生徒が理解しやすいような工夫が必要です。文字の大きさや書体、色使いに配慮し、読みやすさを重視しましょう。たとえば、ディスレクシア(読み書き障害)の児童生徒にも読みやすいとされるUD(ユニバーサルデザイン)フォントを使用するのも効果的です。

また、音声読み上げ機能の活用も検討しましょう。QRコードを活用して音声ガイドを提供したりデジタル教材と併用したりすることで、視覚情報の処理に困難がある児童生徒も内容を理解しやすくなります。

多様な評価方法

児童生徒の理解度や習熟度を評価する際も、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れることが重要です。筆記テストだけでなく、口頭発表やプロジェクト型学習など多様な評価方法を活用しましょう。

たとえば、歴史の学習評価で「歴史上の人物になりきってのロールプレイ」「重要な出来事についてのプレゼンテーション」といった、児童生徒それぞれの強みを生かせる評価方法を取り入れるのもその一つかもしれません。筆記試験が苦手な児童生徒が、自分の理解度を示すチャンスになるでしょう。

大切なのは、「どうすればこの子の力を引き出せるか」と考えることです。

障害のある児童生徒との交流のポイント

ユニバーサルデザインを学校に導入する上では、障害のある児童生徒との交流について検討しておく必要があります。ここでは障害の有無にとらわれず、互いを理解し尊重し合う関係性を築くためのポイントについて解説します。

相互理解を深める

障害についての理解を深めるためには、実際の体験が効果的です。障害の疑似体験や共同作業を通じて交流する場を設けることで、児童生徒たちは障害のある人々が日常生活で直面する課題を実感し共感する力を養えます。

(例)

  • アイマスクを着用して校内を歩く体験を通じて、視覚障害者の困難を知る
  • 車椅子を使用して学校内を移動し、バリアフリー環境の重要性を知る
  • 手話や点字を学ぶワークショップを開催し、実際に体験してみる

コミュニケーションツールを活用する

障害のある児童生徒とのコミュニケーションを円滑にするために、コミュニケーションツールの導入を検討しましょう。たとえば、絵カードや筆談ツールなどは、会話によるコミュニケーションが困難な場合に有効な時があります。

(例)聴覚障害のある児童生徒とのコミュニケーション

  • 音声認識アプリを使用して会話を文字化する
  • 手話通訳アプリを活用する

インクルーシブな学校行事を目指す

学校行事を、すべての児童生徒が参加し楽しめるよう企画します。さまざまな表現方法を取り入れた企画を実施することが、お互いの個性や能力を尊重し合うチャンスとなります。

(例)運動会

  • 車椅子を使用する児童生徒も参加できる競技を取り入れる
  • 視覚障害のある児童生徒のためにサポートランナーを設ける

(例)文化祭

  • 手話コーラスや点字を用いた作品展示

大切なのは、「違い」を「個性」として尊重すること。そんな姿勢で接すれば、障害の有無にかかわらず互いに学び合える関係が自然と生まれるはずです。

教育におけるユニバーサルデザイン導入のメリットと課題

ユニバーサルデザインを教育現場に導入することには多くのメリットがある一方で、課題も存在します。ここでは、その両面について見ていきましょう。

ユニバーサルデザイン導入のメリット

学習成果がアップする

個々のニーズに応じた支援を行うことで、全体的な学力向上が期待できるでしょう。たとえば視覚的な情報提示や音声ガイドの活用は、すべての児童生徒にとっての「わかりやすい」学習につながります。結果として、クラス全体の学力向上にもつながる可能性があります。

自己肯定感が伸ばせる

ユニバーサルデザインを取り入れた環境では、より多くの児童生徒が学習活動に参加し、成功体験を得られる可能性があります。「できる」経験の積み重ねによって自己肯定感が高まり、学習意欲の向上にもつながるでしょう。

ユニバーサルデザイン導入の課題

保護者や地域との連携

学校の取り組みを共有し、保護者や地域の理解を得ることが大切です。ユニバーサルデザインの導入は、学校内だけでなく、社会全体での意識向上につながる可能性もあります。学校便りやウェブサイト、保護者会や地域の集会などで、積極的に取り組みを発信していくことが求められるでしょう。

設備面での予算確保、教職員の負担増加

ユニバーサルデザインの導入には、設備の改修や新たな教材の購入など一定の予算が必要となる点も課題の一つです。また研修や個別対応の増加により、教職員の負担が増える可能性もあります。優先度の高いものから少しずつ導入したり、ICTツールを活用して業務の効率化を図ったりすることで負担を軽減しつつ効果的に導入を進められるでしょう。

すぐには大きな変化は見えないかもしれません。でも、5年後、10年後を見据えて粘り強く取り組めば、きっと素晴らしい教育環境が作れるはずです。

ユニバーサルデザインを取り入れた学校づくりに向けて

ユニバーサルデザインを取り入れた学校づくりは、すべての児童生徒が等しく学び成長できる環境実現のための取り組みです。小さな一歩から始めて、継続的に取り組んでいくことですべての児童生徒が生き生きと学べる環境を作り出せます。一人ひとりの可能性を最大限に引き出す教育環境の実現に向けて、学校全体で取り組んでいきましょう!

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