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この記事では、「特定外来生物が及ぼす影響」の時事解説を小学校高学年~中学生にわかりやすく説明します。授業の合間に話すネタ、関連事項を解説する際の資料などとしてご活用ください。
特定外来生物への指定は20年で約4倍以上に!
強い毒性を持つ「ヒアリ」や各地で大量に繁殖している「ナガエツルノゲイトウ」など、外国から入ってきた外来種による問題を近年、よくニュースで見かけるのではないでしょうか。そのような被害をもたらす外来種は「特定外来生物」として外来生物法で規制されています。特定外来生物にはどのような外来種が指定され、私たちにどのような影響が及ぼされているのでしょうか。私たちが注意したい点もあわせて調べていきましょう。
特定外来生物って何?
外国から入ってきた外来種は、それ自体を輸入したり、輸入されたものと一緒に入り込んできたりしたことで、国内に生息するようになりました。日本の野外に生息する外国から入ってきた外来種は2000種を超えるとされています。
このような外来種の中には家畜やペット、農作物として人間の生活に役立っているものも存在します。一方で、自然環境などに悪い影響を与える種も多くあり、これらは「侵略的外来種」と呼ばれています。環境省と農林水産省は「生態系被害防止外来種リスト」を作成して、幅広く生態系などに被害を及ぼすおそれのある外来種429種(外国から入ってきた外来種と国内の外来種<特定の地域に生息していた生物がそれまでいなかった他の地域に定着したもの>を合わせた数:2026年1月時点)について規制や防除などに取り組んでいます。
このリストに掲載されている中でも、特に生態系に大きな被害を及ぼすとして「外来生物法」で指定されている外国から入ってきた外来種を「特定外来生物」といいます。
特定外来生物に指定されると、飼育・栽培、保管、運搬(生きたまま移動させること)、輸入、販売・譲渡、野外に放すことや植えたり種をまいたりすることが、許可を受けているなど特別な場合を除いて禁止されます。生息が確認された場合には防除が行われます。また、特定外来生物に指定されていないものの被害を及ぼす疑いがある外来生物は「未判定外来生物」として、判定が終わるまで輸入が制限されています。
外来生物法は2005年6月に施行され、施行と同時にアライグマやカミツキガメ、オオクチバスなど37種が特定外来生物に指定されました。その後、指定される対象は年々増えて、2026年1月時点で当初の4倍以上の162種が指定されています。
🟠主な特定外来生物
| ほ乳類 | 25種 | フクロギツネ、ハリネズミ属、アカゲザル、アライグマ、フイリマングース、キョン など |
| 鳥類 | 7種 | ガビチョウ、ソウシチョウ など |
| は虫類 | 22種 | カミツキガメ、スウィンホーキノボリトカゲ、マングローブヘビ、タイワンハブ など |
| 両生類 | 18種 | オオヒキガエル、ウシガエル、シロアゴガエル など |
| 魚類 | 26種 | オオタナゴ、ブルーギル、コクチバス、オオクチバス(ブラックバス) など |
| 昆虫類 | 27種 | クビアカツヤカミキリ、セイヨウオオマルハナバチ、ソレノプスィス・ゲミナタ種群(アカカミアリなど)、ソレノプスィス・サエヴィスィマ種群(ヒアリなど)、ツマアカスズメバチ など |
| 甲殻類 | 6種 | ザリガニ科全種、アメリカザリガニ科全種(アメリカザリガニを除く) など |
| クモ・サソリ類 | 7種 | キョクトウサソリ科全種、ゴケグモ属の全種(アカオビゴケグモを除く) など |
| 軟体動物等 | 5種 | カワヒバリガイ属、ヤマヒタチオビ(オカヒタチオビ) など |
| 植物 | 19種 | ナガエツルノゲイトウ、ブラジルチドメグサ、ボタンウキクサ(ウォーターレタス)、オオキンケイギク、オオハンゴンソウ、ナルトサワギク、アレチウリ など |
(2026年1月時点、環境省「特定外来生物等一覧」をもとに作成)
特定外来生物はどのようにして増えたの?
特定外来生物の中にはペットや食用、観賞用、研究用など、人々の生活に役立てることを目的に外国から日本に入ってきた外来種も少なくありません。
アライグマやカミツキガメは、もともとはペットの目的で日本に輸入されました。しかし、飼いきれなくなって野外に捨てられたものが定着したことで、問題を引き起こすようになりました。大正時代に持ち込まれたオオクチバス(ブラックバス)も、釣りブームにより各地で放流され、1970年代以降に急激に分布が拡大したとみられています。
一方、望まないのに入ってきてしまう特定外来生物もいます。2017年に初めて国内で確認されたヒアリは、もともとは南米中部に生息するアリです。しかし、コンテナや貨物にまぎれ込んで遠く離れた日本まで運ばれてきました。同じように侵入が確認されて、駆除できずに定着してしまった国もあります。
なお、特定外来生物の中でも、ヒアリのようなまん延した場合に著しく重大な被害をもたらすと考えられるものは、発見した場合に拡散を防止するための措置を緊急に行う「要緊急対処特定外来生物」に定められています。
野外に出たとしても生存し続けられない外来種ももちろんいます。しかし、天敵がいなかったり繁殖力や適応力が高かったりしたことでその場所に定着し、生息域を拡大していった外来種が特定外来生物となっています。特定外来生物が一度定着すると、それを根絶するためには多大な労力や費用が必要になります。
特定外来生物によって起こる問題と対策
特定外来生物に代表される侵略的外来種が増えることで起こる問題としては、大きく分けて生態系への影響、農林水産業への影響、私たちの生命や身体への影響の3つがあります。それらを防ぐためには、私たち一人ひとりが意識して行動していかなければなりません。
どのような問題が起きているの?
まず1つ目の生態系への影響については、もともとそこで生活していた在来種(その土地の独自の種)が追いやられて自然界のバランスが崩れてしまうことがあります。たとえば、沖縄や奄美地方に定着したマングースがアマミノクロウサギなどの絶滅のおそれのある種を食べてしまう捕食の問題や、繁殖力の高いボタンウキクサによって他の水中で生活する生物が生存できなくなってしまう競合の問題が起きています。また、在来種と外来種による交雑も見られており、これが進むと在来種の減少や絶滅のおそれも出てきます。

2つ目の農林水産業への影響については、特定外来生物が農林水産物を食べたり、農地や漁場などを荒らしたりといった被害が出ています。2024年度の野生鳥獣による農作物の被害金額は188億円となっています。被害はシカとイノシシによるものが圧倒的に多いものの、アライグマによる被害もサルに次ぐ約7億円に上っているなど、外来種による被害も年々増加しています。
また、ナガエツルノゲイトウのように水路や河川、水田などで大群生となる植物によって、用水路がつまったり船の航行や稲の収穫のさまたげになったりするなどの問題も深刻です。
3つ目の私たちの生命や身体への影響については、特定外来生物の中には強い毒性を持つ生物が多くいます。たとえば、ヒアリには毒針があり、刺されると強い痛みを生じるだけでなく、体質によってはアナフィラキシーショック(強いアレルギー反応)を起こすおそれがあります。西日本を中心に確認されているセアカゴケグモは、海外では重症化している例もあります。
どのような対策が行われている?
2025年に策定された「外来種被害防止行動計画 第2版」では、2030年までに外来種による負の影響を軽減し、ネイチャーポジティブ(自然を回復軌道に乗せるため、生物多様性の損失を止め、反転させること)の実現に貢献することを目指す姿としています。同計画では未定着の種を予防し、定着した種を拡大させない、定着初期の種を根絶することを全体目標として、外来種への対策に関する役割と具体的な行動について設定しています。
国には国内未定着の侵略的外来種への水際対策、地方自治体には地域における計画的な外来種防除の実施などが行動として求められており、国民にも当事者として意識を持つことと外来種の問題に関わる可能性があることを理解して実際に行動することが求められています。具体的には、飼育・栽培している外来種の管理を徹底することも国民に求められる行動です。
また、国は外来種被害予防三原則として、①外来生物をむやみに「いれない」、②飼っている外来生物を野外に「すてない」、③野外にすでにいる外来生物は他の地域に「ひろげない」――を掲げています。この原則を私たち一人ひとりが意識していくことが大切です。
ポイントを確認しよう
図鑑などに出てくるめずらしい動物を飼ってみたい、植物を育ててみたい、そうした気持ちになることがあるかもしれません。しかし、新たな外来種が持ち込まれた場合、それがまわりにどのような影響を及ぼすのか考えてみましょう。同時に、飼育しきれるのかどうか、まずはその特徴をよく調べてみましょう。また、あなたが身近な場所で見かける植物や動物が実は外来種だという場合もあります。日本に昔から存在している種なのか、まわりにどんな外来種が存在しているのか、関心を払う機会にしてみてはいかがでしょうか。
※執筆:NPO現代用語検定協会
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